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Facebook Shopsから考えるソーシャルコマースとその先の未来

今回は身近な存在のあまり普段全体像を振り返ることが少ないサービス、ソーシャルメディアと、私たち消費者との関係性について考えてみたいと思います。きっかけはFacebookが2020年8月に有料オンラインイベント開催機能をローンチしたニュースを読んだことです(ちなみにローンチ時の対象国に日本は含まれていません)。Facebookといえば、簡単にECストアを開設できる「Facebook Shops」を6月に日本でリリースしたばかりですし、そういえば2019年に送金・決済サービス事業に参入した「Facebook Pay」の動きも気になります。「Facebookってソーシャルメディアと言うけれど、随分前からインフラになりつつあるな。そして最近はその勢いに拍車がかかっているな」と思ったからです。

 

ソーシャルメディアとは何か

本題に入る前に、自らとソーシャルメディアの関係性について考えてみたいと思います。いきなりですが、あなたにとってソーシャルメディアを利用する目的は何でしょうか。友人の動向を追うためでしょうか。それとも自身の現在の状況や考えを他人に共有するためでしょうか。面白い動画を見るため、可愛い子どもや子犬・子猫の写真や動画を見て、癒やされるためという人もいるかもしれません。では、視点を変えてみましょう。メーカーやブランドにとってソーシャルメディアとは何でしょうか。新商品の情報を掲載し、幅広い層に送信し、新規顧客を獲得するためでしょうか。それともに既存顧客に情報を届けるためでしょうか。顧客と双方向のコミュニケーションを取るためでしょうか。一つのサービスなのに、視点や立場を変えてみると、こんなにも見えてくるものが変わるものですね。実際には、これにソーシャルメディアを提供するプラットフォーム側の意図も加わるわけですから、事業者として活用する場合には戦略的に関わる必要がありそうです。

 

ソーシャルメディアの変遷

TwitterとFacebookが日本語版のユーザーインターフェースを提供しはじめたのが、2008年。それからおよそ12年の月日が経ちました。その間にソーシャルメディアの在り方は大きく変化し、私たちの生活に与える存在感は増す一方です。

 

TikTokが台頭し、動画は短尺、ノンバーバルに、検索からレコメンドに

例えば、メディア形式の変化。今まではスマートフォンの性能や通信環境が不十分ということもあり、テキストベースのコミュニケーションが主流でしたが、現在は画像や動画といった視覚的な情報発信が主流になりました。加えて、動画の尺の長さも変化しています。約10~20分の動画をYouTubeで腰を据えて見るという行動とは別に、移動中に、料理を待つ間に、といった「ながら見」に適した短尺動画が隆盛を迎えています。TikTokや、Instagramがそれに類する機能「リール」を提供したことでも記憶に新しいですね。短尺動画メディアが普及したことで、言語に頼らずに相手に伝わるノンバーバルコミュニケーションが重要視されるようになり、多くの国や地域のユーザーからの共感や閲覧数を獲得できるのも特徴です。本原稿を執筆しているのは2020年8月時点ですが、すでに2020年のヒット曲とも言える「香水」もTikTokから生まれたムーブメントです。昔流行った曲のリメイク作品や、マスでは無名のアーティスとの楽曲や振り付けなど、新しい流行が従前よりも狭い集団で局所的・短期的に発生しています。TikTokといえば、2020年7月末にトランプ大統領がアメリカ国内でのTikTokの利用を禁ずる考えを表明し、アメリカの大手IT企業との買収劇でニュースを賑わせています。アメリカがTikTokの利用を禁ずる理由は、TikTokに利用されている機械学習の技術の高さと、約8,500万人とも言われるアメリカ国民ユーザーの利用者情報が中国へと流出することを懸念しているからです。TikTokの機械学習の技術の高さは、ユーザーごとに独自のアルゴリズムで投稿をレコメンドし、ユーザーのフィードをパーソナライズし中毒性をもたせる点といえるでしょう。少しTikTokについての話が長くなってしまいましたが、このようにソーシャルメディアは私たちの生活に自然と侵食し、切っても切れない存在となっています。私も手持ち無沙汰になるとついついSNSのアプリを開いてしまいますし、SNSの恩恵を享受していることを感じているため、SNSがない生活は考えられません。

 

SNSから直接購入できる「ソーシャルコマース」が加速

冒頭でも述べたように、FacebookやInstagramもTikTok同様にその動向は見逃せません。FacebookやInstagramのフィード上で商品を販売することができる(eコマースが可能)機能などを提供しはじめ、今まで以上にさらに消費者の生活・インフラの一部を担おうという意図を感じます。

 

Facebook・Instagramは中小規模の事業者のECストア開設を支援する「Facebook Shops」をリリース

2020年5月、Facebookは中小規模の事業者や小売店などがFacebookとInstagram上で簡単にECストアを開設できる無料のサービス「Facebook Shops」という機能を発表しました。そして、2020年6月16日に日本でも提供が開始されています。新型コロナウイルス感染症で窮地に陥っている中小規模の事業者や小売店を運営している人々を支援する目的で開発された機能だそうですが、時期が早まっただけでは、と勘繰ってしまいます。

(https://about.fb.com/ja/news/2020/06/introducing-facebook-shops/)

Facebookの発表によると、今後「Facebook Shops」には以下の機能の導入を予定しているそうで、その機能の充実ぶりには目を見張ります。

・各種メッセンジャー(WhatsApp、Messenger、Instagramダイレクト)を活用して顧客と直接メッセージのやりとり

・上記各種メッセンジャーのチャット内で商品を購入できる

・「ライブショッピング機能」でライブコマースが可能

大規模事業者のECストアだと、注文数が多く、きめ細やかなWeb接客が難しい場合も多いとは思いますが、中小規模の事業者であれば、よほどの注文が入らない限りはこのような機能を駆使して、きめ細やかな接客を実現できるのではないでしょうか。むしろ少しでも客単価や受注数を上げたい事業者が欲しい機能ではないでしょうか。また、Facebook  Shopsは外部のECサイトとも連携することが可能です。現在発表されている外部連携先は以下です。残念ながら日本の事業者は含まれていないのですが、Shopifyを採用していECストアを運営している企業は日本でも多いと思うので、ぜひ連携してみてはいかがでしょうか。

Facebook Shops外部連携

・Shopify(カナダ)

・BigCommerce(アメリカ)

・WooCommerce(ケープタウン)

・ChannelAdvisor(アメリカ)

・CedCommerce(インド)

・Cafe24(韓国)

・Tienda Nube(アルゼンチン)

・Feedonomics(アメリカ)

ちなみにTikTokでもソーシャルコマース機能は実装済みで、2018年の「独身の日」には約32億円の売上を叩き出したと言うから、そのスケールの大きさには驚きです。

 

Facebook Payは?Facebook経済圏はどうなる?

「Facebook Shops」とは別軸で気になるのが、決済機能です。「Facebook Pay」は今後どのように展開し、拡大していくのでしょうか。冒頭で触れた有料オンライン開催機能について言及しているブログでは「中小企業やクリエイターをサポートするために、Facebookは少なくとも来年一年は有料のオンラインイベントから料金を徴収しません。Facebook Payを展開している国で、Web上もしくはAndroid端末からの決済の場合、中小企業は有料のオンラインイベントから100%の収益を得られる」と記載がされており、アプリ内での自社決済手段「Facebook Pay」の促進を加速したいという意図が感じられます。

Facebookのブログ「Paid Online Events for Small Business Recovery」

https://about.fb.com/news/2020/08/paid-online-events/

Facebookは独自の仮想通貨「Libra」を開発していますし、今年の6月にはブラジルで「WhatsAppペイメント」の提供も開始しています。仮想通貨「Libra」と「Facebook Pay」は別物であると表明しているようですが、今回の「Facebook Shops」は、Facebookをスーパーアプリ化し、Facebook経済圏を構築するためのトランザクションを増やすための足がかりではないでしょうか。ソーシャルメディアが消費者の生活の一部となった今、このようなソーシャルメディアのサービス展開の動向はより見逃せないものとなってくるでしょう。

 

muraishi

JECCICA客員講師 村石怜菜

株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。

日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。


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