SaaS型E-Commerceプラットフォーム[Shopifty]はなぜ世界で最も大きなECプラットフォームになれたのか?
毎度有り難うございます。フラクタ河野です。
前回は「自社ECへの集客と差別化」という題材でお話をさせていただきました。
その際に次回は「サイトオープン初期の集客」について書かせていただこうかな・・・と思っていたのですが、急遽いま日本で急成長中の「Shopify」について講演させていただく機会ができたので、こちらのコラムでも「Shopify」についてあらためて皆様にご紹介させていただければと思い、今回はそのお話をさせていただきます。
#「Shopify」とは
Shopifyはカナダのオタワを拠点としている企業で、高機能なネットショップが作成できるサービス「Shopify」を提供しています。名実ともに世界で最も大きなECプラットフォームとして世界175カ国、60万以上のネットショップでShopifyは活用されています。
「Shopify」はSaaS型E-Commerceプラットフォームと呼ばれるものに該当するので、オープンソースソフトウェアを自社運用する場合と違い、コスト、時間、複雑さを削減してオンラインストアを構築、管理、スケールすることが可能となるサービスです。日本であれば「MakeShop」さんや「カラーミーショップ」さんが展開されているASPサービスとイメージは近いものになります。
カナダで設立され、サービスがリリースされたのは2006年。その後10年かけて世界的なプラットフォームとして成長してきましたが、なぜ今まで日本では本格的に広まらなかったのでしょうか?
日本特有の商習慣
「Shopify」そのものは英語圏で開発されたものですので、英語圏で使う分にはなんら不都合はありません。むしろ、英語さえ使える国同士であれば、早い段階から越境ECを実現できていました(故に越境ECの代名詞的SaaSサービスとしても知られています。)。
しかし、アジア圏は商習慣が英語圏と違う部分が多く、特に日本は「代引き」などの決済方法や郵便番号DBなど、日本の商習慣を知り尽くしていない限り、お客様が気持ちよく使えるサービスを実現することは大変難しく、日本国内に既に多くの優れたEコマースプラットフォーム(ASP、パッケージ)が存在する状況で、他よりも優先順位をあげて対応していくという決断は難しかったのだろうと推察されます。
一方の日本国内では、モール依存からの脱却とオムニチャネルの実現、そして越境EC対応という観点から多くのEコマースプラットフォームが進化を求められており、ASPはより自由度の高さを求められ、パッケージは運用面の楽さと、クラウドを活用した柔軟なサーバースケール変更を求められ、双方の距離が近づいてきました。
日本で求められているEコマースプラットフォームの未来形と、Shopifyのビジョンが近づいてくる中で、昨年Shopifyは日本に本格的に進出する舵取りを行いました。
Shopifyが本格的に日本進出を進める中で、日本特有の商習慣に、順次しっかりと対応していく姿勢はマーチャント(店舗)側からの安心感を得られ、結果急激に実績が増えていきました。
ただ、一方でまだまだ完全に日本対応を果たしきっているかといえばそうではなく、Shopify本来の強みはまだまだこれからというところが正直なところです。
Shopifyはなぜ世界で最も大きなECプラットフォームになれたのか?
先ほどの項で、Shopifyは日本の「MakeShop」さんや「カラーミーショップ」さんが展開されているASPサービスとイメージは近いものになる、とご説明させていただきました。
ではShopifyはASPの未来形、ということだけが特徴なのでしょうか?
答えはNoです。
Shopifyが優れている点は他のECプラットフォームでは掲げていない特徴にヒントがあります。
1.シンプルで使いやすく簡単に拡張(サードパーティ製アプリマーケットプレイスも含む)でき、最新最高の機能を利用できること。
SaaS型Eコマースプラットフォームの弱点としてカスタマイズ性に欠ける点があります。しかしそれをアプリマーケットプレイスで補う他社とのエコシステム形成により、無限の拡張性を提言していることがShopifyの優れている点です。
機能をどんどん実装していくと、ECサイト管理者にとっても使いこなせないツールであふれゴチャゴチャしたUIになり、結果使いこなせない・・・という事象はよくある話だと思います。その点Shopifyは店舗ごとに使う機能(サードパーティ製アプリ)をオン、オフできるため、必要なものを必要なだけ、というSaaS本来のスタイルでの構築が可能であり、そのサードパーティ製アプリ自体も2000近くも揃っているため、ゼロからのカスタマイズに限界はあるものの、自分たちの望む機能を限りなく実現することが可能と言えます。
2.すべてを「買える場所」に変える
ShopifyはSNSなどとも連携したマルチチャネル販売が可能な統合的プラットフォームです。
Shopify外のブログ作成サービスやサイトで商品の購入ボタンを挿入する「Buy Button」や、SNSで直接そのまま画面購入できる連携機能も用意しています。
最近ではインスタグラムショッピング連携機能「Shop Now」にいち早く対応。Shopify内だけでほとんどの設定が完了してしまう簡単さも話題になりました。
また、実店舗向けPOSソリューションの統合のためにChip & Swipe Reader
も提供しており、Shopifyだけで真のオムニチャネルが実現できてしまうことが他ECプラットフォームと比べ優れている点と言えるでしょう。
3.Shopify Expertsの存在
Shopifyは「Shopify Partner」というパートナー制度の他に「Shopify
Experts」と呼ばれるスペシャリスト(デザイナー、開発者、店舗設計、マーケティング)を認定、紹介する仕組みを持っています。
https://experts.shopify.com/setup-experts/japan
この仕組みは、社内にECの専門家がいない、デザイナーがいないなどの場合においてとても力強い存在と言えます。
他ECプラットフォームでもパートナー制度は多く存在しますが、全世界的な認定スペシャリスト制度はShopifyならではと言えます。
この3つの要素がShopifyが全世界的にシェアを握ってこれた大きな理由であると私は考えています。
(もちろん越境ECに強いから、というのはありますがそれは他ECプラットフォームでもできることなので、ここでは省いています)
Shopifyの日本での「これから」
「日本特有の商習慣」の項で、「Shopify本来の強みはまだまだこれからというところが正直なところです。」と述べさせていただきましたが
これは前項であげた3つの特徴が日本国内の展開ではまだ十分には実現されていないと感じているからです。
本国ではサードパーティ製アプリは2000近く揃っていますが、そのうち日本語対応しているものは数えるほどしかなく、ShopifyのPOS対応もまだ完全には日本語対応されていません。また、「Shopify
Experts」も日本ではまだ4社しかありません。
しかしながら、私自身の考えとしては、2019年にかけてShopifyの日本国内におけるシェアは飛躍的に拡大すると思っています。
なぜなら、日本国内におけるECプラットフォームに求める要件が徐々に変わってきており、またそれを取り巻くビジネスも「エコシステム」を求めている
と感じられるからです。
そして、そのエコシステムを支えるコミュニティがゆっくりと、しかし確実に成長を続けています。
AWS(Amazon Web Service)がなぜあそこまで飛躍的にシェアを伸ばせたか。それはAWS自体のサービスの優秀さはもちろんですが、周辺領域を支えるサービスとそれを作り上げるパートナー、そして利用者までをも巻き込んだ「コミュニティ」の発展があってこそです。
日本発のECプラットフォームであるEC-CUBEも、まだ世の中でほとんど知名度がなかった頃、コミュニティの草の根活動、そしてその中でのエキスパートの誕生と彼らのコミットがプロダクトを大きく成長させ、ファンを増やし、結果日本を代表するオープンソースECプラットフォームに成長しました。
上記より、私個人としてはこれからもShopifyを応援し、注視していきたいと考えています。
引き続き動きがあれば、こちらのコラムで紹介させていただければと思います。
次回は「サイトオープン初期の集客」について書かせていただいたいと思いますので、みなさま乞うご期待。
JECCICA客員講師 河野 貴伸
株式会社フラクタ 代表取締役
EC-CUBEエバンジェリスト
Eコマースに関わる人材育成とブランディングに重点を置き、業界の発展とEC-CUBEの普及、デジタルイノベーションの推進支援をメインに全国でセミナー及び執筆活動中。