チャットボット(人工無能)を作ってみよう!2
■チャットボットの「中身」を作ってみよう!
前回は、株式会社ConU が提供する hachidori https://hachidori.io/ を使って、
チャットボットの「外側」を作成しました。ただ、この段階では単なる「箱」が用意されただけなので
「中身」となるシナリオを用意する必要があります。
実はチャットボット作成の現場で、
この「シナリオづくり」は、もっとも時間がかかりまたボットの精度を決める作業となります。
今後、自然言語処理などのAI機能が発達してくれば、この作業を人間がやる必要はほぼなくなると思われますし、
現段階でもAIを売りにしているチャットボットもあります。
しかし実用面ではあと数年先の話しで2016年時点ではAIに任せっきりでは不十分、
というのが専門家も含めたおおむねの意見ではないでしょうか。
■過大期待は禁物、導入成果をまず割り切る。
一方で、人工知能やシンギュラリティという言葉がバズワードとなり、
メディアでは「チャットボットがパート○人分のコストを減少」
などといった記事タイトルを見かけます。しかしこうしたタイトルも
よく見ると数字のマジックで、100人体制のうちの5人分のコストカットなのか、
10人体制のうちの5人分のコストカットなのかでは、まったく貢献度が変わってきます。
むしろ、今回の記事の対象と想定している「中小規模のEC事業者」にとって期待できるのは、
今まで購入に至ってもらえなかったユーザからの新規問い合わせが増えたり、
効率的な問合せ回答に専念できることです。
この点は、まだ弊社でもデータが十分とは言えないのでもう少し場数を踏む必要があると
考えていますが、適切なシナリオ設置さえできていれば、有益な新規問合せ数は約2倍前後に増え、
シナリオ経由の売上は全体売上の25%前後を支える、というのが現段階での平均的な成功事例といえる状況です。
ただしこの平均値はまだ事例が少ないため、あくまでチャットボットを導入した場合の期待値の
参考として捉えていただければと思います。
いずれにせよ、中途半端なチャットボットからの回答が、
ファンをがっかりさせたり、ブランドを傷つけないためにも、導入の手間に対する覚悟と、
成果の割り切りが重要です。
■まずチャットボットの成功の流れをイメージする
一方で、失敗事例としてネット上や人工知能系の勉強会で耳にする話としては、チャットボット作成のシステムを
目の前にしてシナリオを作り始めたものの、パターン数が無限大に膨れ上がり、
なにから手を付ければよいのかわからなくなり、途中で頓挫してしまった、というケースです。
お話をお伺いしている限りでは、こうした失敗例の原因は、自動化させる範囲の
「割り切り」ができていない点にあります。自動化で「誘導したいゴール」を5〜10パターン程度に決めて、
それ以外のユーザは、手動でていねいに「問い合わせ対応」するしかない、と心づもりをしておくことが重要です。
そうした意味でも、数あるチャットボット作成ツールの中で「hachidori」は自らを「人工無能」と割り切るかわりに、
シナリオで対応できなかったユーザには、あとから個別にFacebookメッセージやLINEで人力対応する機能も設けられています。
このあたりはすでに海外で実績のあるAI+人力のECチャットボット「Operator」とコンセプトが近いかもしれません。
まずチャットボット導入の成功イメージを最初に持っていただくために、たとえば弊社では、
チャットボットにさせる仕事量を次のようなフローチャートで説明することがあります。つまり、
あるひとつの入り口から、Yes・Noの2択を5回ほど進めば「お店が誘導したいゴール」へとユーザにたどり着いてもらうとしたら、
どんな質問とゴールがあるだろうか、とシナリオを描いてもらいます。
フローチャート参考図(5秒でわかるあなたが買うべきiPad 2010年 ISSUN )
次に、フローチャートとチャットボットの違いは、Yes・Noの2択ではなく、
4択なども選べる、という点にあります。
4択からシナリオが始まる例(ファンタジスタゴール)
これなら、たどり着いて欲しいゴールも5~10程度必要になるでしょう。それでも答えに誘導できなかったユーザには、
チャットボット上では「後ほどスタッフがご回答いたします」などとしておき、チャットボット経由で手動でオペレータが個別で回答する、
という方法に制限してしまうのです。
■限定したゴールを決めて、シナリオを準備する。
それでは、まずチャットボットのゴールを決めてみましょう。
たとえばギフトサイトであれば、グローバルナビの「価格別」から「5000円台商品一覧」へ、
さらに5000円代のギフトおすすめピックアップのコンテンツへと誘導しているでしょう。こうしたコンテンツが、
お店がチャットボットで「誘導したいゴール」のひとつにあたりますので、少なくとも5〜10種類ほどピックアップしてみます。
もしご自身のサイトにこのような、「誘導したいゴール」のコンテンツをお持ちでなければ、チャットボット導入以前の問題で、
サイトの導線自体に問題がありますので先に作成しておくべきでしょう。
次に、過去の質問メールや電話対応の問答集を整理して、
その中から「数が多く」「優先度も高い」質問を絞り込みます。
そうして、先ほどの「誘導したいゴール」へと4択などのチャット形式で進んでもらうシナリオを用意します。
100%網羅しなくても大丈夫です。
その場合は、「後ほどスタッフがご回答いたします」作戦で、のちほど個別対応してゆけば良いのです。
まずはこのシナリオを準備してみてください。
株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博
プロフィール
1992年から営業畑のかたわら、
独学で顧客満足向上システムを開発し1997年に売却。
1998年に開発プロデュースしたモバイル端末向けアプリがヒット、1999年にアクセス解析ツールを開発し、2000年からEC数社を立ち上げ、
年商20億円などの急成長で、2006年に株式上場。同時に保有株を売却、渡米しシリコンバレーなど海外の次世代eコマースの運営現場を研究しながら、
スマホやソーシャルメディアによる新たなマーケティング手法を確立。
2011年にウェブ制作・マーケティング会社、ISSUNを設立。先細りしつつある従来のマーケティング手法を改善しながら
「心の通うオンラインマーケティング」で収益向上のコンサルティング事業を行っている。
JECCICA客員講師 宮松 利博
株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博 プロフィール 1992年から営業畑のかたわら、独学で顧客満足向上システムを開発し1997年に売却。1998年に開発プロデュースしたモバイル端末向けアプリがヒット、1999年にアクセス解析ツールを開発し、2000年からEC数社を立ち上げ、年商20億円などの急成長で、2006年に株式上場。同時に保有株を売却、渡米しシリコンバレーなど海外の次世代eコマースの運営現場を研究しながら、スマホやソーシャルメディアによる新たなマーケティング手法を確立。2011年にウェブ制作・マーケティング会社、ISSUNを設立。先細りしつつある従来のマーケティング手法を改善しながら「心の通うオンラインマーケティング」で収益向上のコンサルティング事業を行っている。