ネットショップにおける事業計画の必要性〈3〉
JECCICA客員講師 渡辺 太志
事業としてのネットショップの確立
以前から私は、「ネットショップには事業計画が必要不可欠」と、申し上げております。
「事業計画書」は、一般の会社経営者様は、金融機関の融資を受ける際に書いた経験があるかと思います。
創業時には勿論ですが、現在進行形の事業に対しても、まずはどうあるべきかを一生懸命考える必要があるのです。
現実にはネットショップを創業される方は、今までこのような計画書を書いた経験がない方が殆どだと思います。
しかし、これが無いと義業の方向性が定まりません。
明確かつ簡潔な「事業計画書」を作成することは、ネットショップという事業を成功に導くためには必要不可欠なのです。
健全な経営体質を作るには?
当たり前ですが、ネットショップ運営は会社経営と同一です。
同時に、自社の経営分析を的確に行い、最終的に事業の資金計画を立案する必要があります。
しかし、いきなり資金計画の立案は不可能なのです。
資金調達計画の前に検討すべきことは、予想される売上より、支出される変動費と固定費を実務に限りなく近い形で、算出を行うことなのです。
特に創業、新規にネットショップを立ち上げる方は、この部分をいわゆる「どんぶり勘定」で実行してしまうケースが後をたちません。
脱サラで個人事業主として、ネットショップを立ち上げ、しばらく運営するのですが資金が底を尽きてしまい、廃業となるケースです。
非常に悲しい話です。
そうならないためにも、まずは健全な経営体質を作るために、経営計画が重要になるのです。
経営計画は、たとえ創業であっても「積み上げた」数値で考える
では、まず具体的にどうするかを説明します。
まずは、大まかでいいので、今後3年間の「事業スケジュール」を作成して下さい。
1年目、2年目、3年目と、まずは箇条書きでも結構です。
ただし、計画の年度末には必ず、ある程度の事業規模(売上・固定費・変動費)を 予測して下さい。
次に、事業スケジュールから、1年目の年度末の数字を作成します。
既存のネットショップを運営している方は、前年度の事業実績からある程度予測ができます。
しかし、新規創業でネットショップを立ち上げる方は、ここで「はて?」と手が止まります。
実際に運営したことのないネットショップが、どういう推移で展開するのかが、また費用がどれくらい必要なのか全く予想できないからです。
当たり前の話です。 でも、いいのです。
まずは頭の中で考えられる「固定費」をできるだけ算出します。
固定費の中身は、主に人件費と経費です。 まずは書き出して、何にどれくらい費用が必要かを算出します。
次に「変動費」を算出して、必要な「売上」を検討します。
ネットショップの場合は、「変動費」は仕入金額だと思って頂いて結構です。
これらが、事業スケジュール1年目の規模にマッチするかを検討していただきたいのです。
そうすることによって、必要な費用や売上がだんだん明確になるのです。
経営計画に必要な 「ものさし」を作成する
こうして、売上や経費に関しての根拠を追求するのです。
ここで算出した数字は、単なる「希望値」ではなく、積み上げた予測値であることが必要です。
これを積算で数値化出来るかの能力が必要です。
ネットショップの場合は、同業他社の販売価格より検討する必要もあります。
ここで一番重要なのは、「ほぼ必達!」の数値を書くようにすることです。
特に、創業の方は「そんなのやってないのに無理!」と思うかもしれませんが、算出した数字の精度をどうこう言う前にまずは「基準線」が無いことには何も予測できません。
これらは「数字のものさし」を作成する作業なのです。
この「ものさし」をベースに、実際の経営の中での整合性をとるのです。
「ものさし」を作成する際に検討したことは、今後の運営に必ず生かされます。
同時に、これが事業として本当に成立するのかを、冷静に判断する必要があるのです。
「ものさし」からの数字に無理があれば、計画修正を行います。
こうやって何度か修正した計画書を作成しているうちに、ネットショップの事業スタイルがだんだん具体的に想像出来る様になるのです。
2年目、3年目の計画は、1年目の計画値より、より利益を確保するにはどのような企業成長をしなくていけないかを重点に置いて検討してみてください。
創業後の具体的な経営計画の策定や、既存のネットショップが安定した経営基盤を作成するためには、この「ものさし」は絶対必要なのです。
計画の数値ですが、収入は多め、支出は少なめに書く方が本当に多いのです。
甘い見通し計画より、実際に想定される数値を入れて検討してください。
無理な計画は「絵に描いたモチ」です。
確実にいけそうな数値で検討します。
こうして、安定したネットショップを運営するためには、どういう指標で運営を行うのか明確になるのです。
そして、この明確になった経営計画を実行するために、資金調達を行う必要があります。
これもちゃんと指標があるのです。
次回は「資金繰り」について述べさせて頂きます。
JECCICA客員講師 渡辺 太志
コンサルタントとして企業の経営戦略から組織開発までトータル支援が可能。SNSを活用した集客・販促により宣伝広告費の圧縮を行い、経営改善に繋げるシステム作りのコーディネートを得意とする。