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サプライズとロングテール〜売れない商品の効果と考察〜

JECCICA特別講師 笹本 克

笹本さん

「サプライズ」

9091569_l最近では記念日などの演出には欠かせない要素になっています。

全く予想や期待をしていなかったからこそ、その喜びも倍増というところでしょうか。

旅行の楽しさも同様かもしれません。多くの人が今まで体験したことがない景色や味覚を求めて=つまりサプライズの喜びを求めて、お金と時間を使っていると言えるのではないでしょうか。旅行中は小さなトラブルでさえサプライズ。「帰りの飛行機が欠航して大変だったのよ♪」と嬉しそうに話す人を見かけたことはありませんか。(笑)

 

そして旅には「お土産」がつきものですが、旅行先のコンビニで買った「売れ筋」のナショナルブランド商品をお土産にする人はいないと思います。ほとんどの人が、その土地に行かなければ買えない「死に筋商品」を選択しているのではないでしょうか。

極端な例で言えば、全く実用性のない記念品などの死に筋商品を選択する場合さえあるのです。これは日常の生活圏内ではまず行わない奇妙な購買行動です。

少し難しい表現になりますが、この購買行動の要素を分析してみると、一つは「(旅行)体験の具象化」そしてもう一つは=珍しさ=小さな発見=サプライズの「喜び」に起因する購買行動ということになるかと思います。

実は、死に筋商品とは「珍しいモノ」であり「小さな発見」であり、これを目にした時にある種の喜びを伴う重要なコンテンツなのです。誰でも知っている売れ筋商品を目にしてもサプライズの喜びは伴いません。いわゆるメガショップや各種専門店などでも、小さな発見=「サプライズの喜び」が起こるのは珍しいもの=「死に筋商品」です。さらに言えば死に筋商品はお店の“格”を訴求する強烈なコンテンツにもなります。たとえばサイズが32cmの女性用の靴を売っていることをお客様に伝えるだけで「へぇそんなサイズの靴があるんだ」というサプライズはもとより、「こんなレアなサイズまで揃えている」専門店という評価までを獲得できるのです。

 

大間のマグロを扱えるショップとそうでないショップ、結局は普通のマグロを買うにしても大間のマグロを売っている店の方が信頼できるような気がしませんか?いいモノを扱っている様な気がしませんか?一般的には普及品よりも売りづらい高額商品という「死に筋商品」が語る「ショップの格付」効果です。

数千万円の着物を売っているショップ、数億円の宝石を売っているショップ、同じモノを同じ価格で買うならこれらの「死に筋商品」を扱っているショップで買いたくなるのではないでしょうか。前述の靴の例も含め、ある意味でのブランディング効果も期待できるのが死に筋商品というコンテンツです。 死に筋商品というコンテンツにはもう一つの効果があります。

 

「モノを買う」という行動は、かなりハードルが高い「心理的な負荷」を伴います。簡単に言えば自分の選択=自分の判断が正しいかどうかを問われる行動だからです。「やっぱりあっちの方が良かったな」「あ、買うのを止めとけば良かった」のごとき後悔をする可能性を含む行動なので、少額の商品でも心理的な負荷を伴うのです。

自販機にお金を入れた後に何を買うか迷っている人を見たことはないでしょうか。 実は死に筋商品には、売れ筋商品を買おうとしているお客様に対して「アナタの商品選択は正しい!」と心理的な負荷を乗り越えて頂くための「後押し」をする効果があるのです。

 

コンビニのスーパーバイザーに聞いた実話ですが、POSのデータから見てもお菓子のポッキー類は売れる商品が決まっているのに「売れ筋」だけを陳列すると売れ行きは今一つ。売れ筋のそばに少しだけ「死に筋」を置くと一番良く売れるそうです。

私は「当て馬効果」とでも言っていますが、売れ筋商品=人気商品を買おうとするお客様に対して死に筋商品=不人気の商品というコンテンツが「アナタの商品選択は正しい!」と後押しした好例と言えるでしょう。

マリッジブルーの心理と同様で、さらにもっと良い選択があるのではないかと迷っている内は、最後の判断=決心=買うという行動をせずに多くの人が判断を「保留」します。この点は是非覚えておいて下さい。

当然ながらネットショップで商品を選択する際にも同様の「迷い」があるはずです。

ちなみに心理的なハードル=自分の選択がベストであるかどうか?に自信が持てなくて「ヤッパリ買うのや~めた」というのが、カゴ落ちの大きな理由の一つになっていると私は思っています。

 

「当て馬効果」は商品を選ぶ時だけでなく、検索エンジンから流入するお客様の購買率にも影響しています。お客様は商品を「選ぶ前」に、まず「どの店で探すか」を判断しています。一般的に言えば検索結果の上位数サイトを見て、これぞというサイトが見つからない場合にはキーワード広告のコピーを斜め読みしながら「ある程度」のあたりをつけてから広告をクリックしてみて、という順番で商品を探すショップを決めるのです。

ここで重要なのは、最初の段階で自分の判断基準以上のクオリティーを持つショップを見たとしても、すぐには「この店で商品を探す」という行動を起こさない可能性が高いということです。

検索結果にはたくさんのショップが表示されているわけですが、これは検索ユーザーに対して「他にも」いろいろショップがあるよ=もっといいショップが「あるかも知れない」という暗黙の訴求をしているのです。

お客様から見て、特別のロイヤリティーを持つショップがない場合には、 まずは、いくつかのショップを見て回って自分の判断基準以上の店を「候補」として選び、その後またいくつかのショプを見て回って、

その後に見たショプの全てが判断基準以下であった場合、

または最初に候補に選んだショップのモール店などが検索結果の下位やキーワード広告に「再度」出てきた場合、

 

ここで初めて「やっぱりワタシの判断は正しい!」と安心して、まずはこの店で商品を探してみるという行動を起こすのです。読者の皆さんもこの様なステップを踏んでショップや商品を選択していないでしょうか。

アクセスログなどでも同一ユーザーの複数回のセッションを数多く目にしますが、理由はこのあたりにあるかと思います。なお、このケースでは基準以下と判断された他店が「当て馬」になったわけですが、この当て馬効果の心理的側面を考察すればSEOで上位だからこそキーワード広告も出しておいて欲しいと思います。

候補のショップを「再度」目にした段階で「それ以上探すのを止める」という効果を持つとともに、ワタシの判断は正しいという「良い先入観」を持ってショップに訪れるお客様を獲得できるからです。「当て馬効果」が購買率に影響する理由をご理解いただけたでしょうか。ちなみに直帰率の高いショップは他店の当て馬として活躍していること間違いなし。さらなるショップのクオリティーの向上に心がけましょう。(笑)

 

死に筋商品というコンテンツの様々な効果を考えると商品一覧ページのレイアウトなども、いろいろと工夫の余地が出てきます。冒頭の話に戻りますが「サプライズ」を考慮すれば、商品があまりにも整然と並んでいるよりも商品の選びやすさを損なわない範囲で「珍しく」「話題性に富んだ」「死に筋商品」が目に留まる様なレイアウトを心がけて、お客様に「小さな発見」の「喜び」を伝えられる様なそんなショップにしたいですねっ。

ネットショッピング自体の魅力をロングテールと呼ぶよりも「死に筋商品の集大成」と呼ぶ方が、より実態に近いのではないでしょうか。

 

 

JECCICA特別講師 笹本 克

笹本さん

自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。

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