OMO実現に向けた「会員統合」実践例
中古ゴルフ用品販売・買取り企業であるG社のOMO案件に携わって早2年。「会員統合」と一言でいっても、その実現方法は様々である。今回のコラムでは、同社のOMO実現に向けた「会員統合」について書いてみる。下図は同社のOMO実現のためのシステム構成である。
同社事業の特徴である買取り業務に対応するため、POSシステム、及び、ECシステムは、独自開発しており、今後とも継続することになった。スマホアプリについても独自開発していたが、会員統合、及び、CRMが強みのB社のパッケージを採用し、必要に応じてカスタマイズすることになった。
なおここで上記に加え、とても重要な決断が行われた。POSシステムは、会員情報、及び、ポイント情報を保持せず、B社にて一元管理することになったのである。同社の会員種別は下記3種類に分類され、全会員を合計すると100万人程度になる。
①店頭にてポイントカードを利用するPOS会員
②スマホアプリを利用するアプリ会員
③ECサイトを利用するEC会員
最終的には全会員を統合することになるが、ECサイトはリニューアルが予定されていたため、第1フェーズとして①のPOS会員と②のアプリ会員を統合することとした。この内①について詳しく見てみる。
通常POS会員については、統合会員とは別に管理しておき、アプリ会員登録時に会員番号とPINコードを入力・認証して、統合会員として登録する。これであれば、100万人近くいる会員も、新たにアプリ登録を行う必要があるため、統合会員数は徐々に増えて行くことになる。
しかし本件は前述のとおり、POSシステムが会員情報、及び、ポイント情報を保持しないため、アプリ会員登録の有無に関わらず、全てのPOS会員を統合会員用のデータベース(以下「会員統合DB」)に予め登録しておく必要がある。また既存のPOS会員に加え、新たにアプリを利用しないPOS会員も増えて行く。
つまり統合会員DBには、POS会員とアプリ会員の双方が登録されて行くことになる。将来的には、アプリを利用しないEC会員も同様に会員統合DBに登録されることになる。まさに会員統合DBなのである。
B社が提供する会員統合DBは、管理項目を自由に設定出来るため、POS会員情報の全ての項目を格納することが可能となる。
しかし会員統合DBには、会員統合IDが必要となる。また、会員番号は店舗コード+管理コード+連番となっており、アプリ会員登録時に誤った会員番号を入力してしまう可能性があるため、認証用のPINコードも必要となる。そこでPOS会員情報をExcelに取り込み、ランダム発行した会員統合ID(仮)とPINコードを追加し、会員統合用のCSVデータを作成した。なお、今回改めて実感したことだが、100万件程度のデータ数であれば、それ程ストレスなくExcelにて編集・加工することが出来る。ご参考まで!
このCSVデータをB社の管理画面より数時間掛けて、会員統合DBにアップロード(プリセット)した。その時のデータ構造は、下記のとおりである。
(補足)現在発行済みの会員カードは、磁気カードのためバーコードとPINコードが印字されていないため、POSシステムを改修することで、該当会員のバーコードとPINコードをシール印刷し、カードに貼り付けるようにした。
では次に、アプリ登録を行なった際の会員統合の流れについて見てみよう。
POS会員がアプリ会員登録を行うと、会員統合DBにB社のシステムが自動発行した会員統合IDをもとに、新たなアプリ会員情報が生成される。この際にPOS会員番号とPINコードを入力・認証を行うことで、生成されたアプリ会員情報に加え、プリセットされていたPOS会員情報をコピーする。POS会員情報のコピーが完了すると、プリセットされていたPOS会員情報は不要となるため削除する。これによりPOS会員情報とアプリ会員情報とが統合される。
なお本案件はPOS会員情報だけでなく、過去5年分のPOSの購買情報も購買情報データベース(以下「購買情報DB」)に格納している。この購買情報には、プリセットされているPOS会員情報の会員統合ID(仮)が付与されている。これによりB社が開発した購買情報APIによって、POSシステムが、アプリ会員登録していないPOS会員の購買情報を、購買情報DBにて管理することが出来る。この購買情報の会員統合ID(仮)は、前述の会員統合を行うことで、新たに自動発行された会員統合IDによって、書き換えるようになっている。これによって、会員統合後も過去の購買情報の取得、及び、購買情報の登録が行える。
以上、会員統合仕様に加え、会員統合による購買情報の管理仕様について書いてみた。本コラムが、OMO実現に向けた「会員統合」の実践例として、何らかのヒントになれば幸いである。

松井 功
1986年 株式会社日本ビジネスコンサルタント(現:日立シ
ステムズ)入社
1997年 独立。Web&ECソリューション事業会社設立
2006年 ECフルフィルメントサービス提供開始
国民的女性アイドルグループをはじめ、50以上のファンクラブ向け
ショップサイトの構築・運用を手掛ける
2015年 ビートレンド株式会社入社。
EC事業者さま向けにコマースCRM(ショップアプリ)導入を推進
2020年 betrend OMOソリューションの提供を開始