2020年 年頭所感 天井秀和
新年あけましておめでとうございます。
JECCICA理事の天井です。
旧年中は、JECCICAへの格別のお引き立てを賜わり誠に有難うございました。
皆様のご支援のもと、無事に新春を迎えることができ心から感謝申しあげます。
さて、あっという間に令和元年が終わってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
災害や消費増税など心配事が多かった昨年でしたが、社会の大きな変化を予感させるニュースも同じくらい多かったように思いますので、いくつかとりあげてみたいと思います。
災害対策とドローン活用
台風など災害被害の現況を伝える報道映像は、以前だとテレビ局の報道アナウンサーがヘリコプターに乗って中継するのが定番だったわけですが、最近はそれがめっきり減り、ドローン映像に地上でコメントを付け加える形にすっかり置き換わってしまったように思います。
原発事故や火山噴火など人が行かれない場所にもドローンなら行かれる、という活用状況から一歩広がって、報道撮影用ドローンの即応体制が整備されたということになりますね。
マスコミなども伝えている通り、ドローンは重要保安施設への侵入犯罪や航空交通の妨害、武器転用によるテロなどが想定されるため、民間の活用においてはとても慎重な規制の設計がなされていて、性善説に則った利便性の追求がなかなか進まないわけですが、災害対応という喜ばしくない局面とはいえ、ドローン活用のメリットが広がって社会に浸透するのは楽しみなことです。
アマゾンや楽天が宅配荷物の配達にドローンの利用を準備し始めてから数年が経ちましたが、技術的にもペイロードとオペレーティングレンジの大きなドローンが安定運用できるようになっていることから、規制緩和の追い風を受け、早く実現してほしいと願うところです。
加えて私には個人的にはもう一つ想いがありまして、それは固定翼ドローンの普及に関してです。
現在一般的によく見かける「ドローン」とは、民生用も産業用も含めて、機体の上部に回転翼を複数備えたマルチコプター様式のものですが、ドローンには本来もう一つの様式、すなわち固定翼ドローンがありまして、既に無人偵察機や農薬散布機などでも技術が確立されています。
一般的に重量のある荷物を離れた場所に移動しようとするとき、燃料消費効率の点で比較すると回転翼航空機より固定翼の方が効率が良く、みなさんが空の移動をするときに利用されるのがヘリコプターでなく固定翼旅客機なのもそのためです。
宅配ラストワンマイル問題の解決のためのマルチコプタードローンの活用に加えて、より広域の物流手段としての固定翼ドローンの発達も、ぜひ楽しみにしてみてください。
本格的な越境ECの幕開け
昨年のラグビーワールドカップでは、アジアに初めてやってきた欧米人が日本滞在中に感じた文化の違いに関する報道を目にしましたが、オリンピックが開催される今年は、昨年よりも文字通り桁違いの規模で、あらゆる国、地域から日本に人々が来訪します。
これまで日本で私たちが越境ECを論じるとき、必ず意識してきたのが中国や韓国などの近隣諸国の消費者でした。越境ECの取扱高の面では、送料の問題があるため、どうしても近い国々が優先されがちなのは当然です。
しかしながら、ラグビーワールドカップをきっかけに来日した欧州の方々が日本の商品に興味を持ち、それがインバウンドマーケティングの助けを借りて越境EC消費の一助となったことは間違いありません。
「日本中がショールームになる」オリンピックの開催を経て、これまで私たちが想定だにし得なかった国や地域の方々が、日本の商品に興味を持って越境ECでつながる流れには、大きな期待をしています。
さて、オリンピックブームの後には、どんな越境ECヒット商品が生まれるでしょうか。来年の今頃が楽しみです。
オムニチャネル消費の成熟と付加価値の創造
「オムニチャネル」というバズワードが巷に溢れて久しいですが、昨今のコンサル先では、オムニチャネルという言葉を使うことが心なしか、減ってきているように感じます。
それは、オムニチャネルの流行が去ったということではなく、個々の企業で実際の活用が進んだからです。
以前は「オムニチャネルとは何か」のような概念を論じることも多かったですが、最近はEC受注からの店舗受け取りや、店頭での商品決済後の自宅配送が普通に行われるようになり、小売企業の現場でも「オムニチャネル」という言葉を使うことなくチャネルをまたいだ利便性の提供が行われています。
オムニチャネルの日常への普及が進む一方で、これからはアメリカの百貨店の模倣でない、日本的なおもてなしの生きるオムニチャネル2.0(死語ですかね?笑)の創造を行っていきたいと考えています。
JECCICAは、このような変化の時代に皆で一緒になって考え、勝ち抜くための情報交流や人材交流を加速し、世の中を良くしていきたいと考えています。
最後に、皆様の一層のJECCICAへの御理解と御支援をお願い申し上げるとともに、本年が、皆様一人ひとりにとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。
理事 天井秀和
1973年 東京都生まれ。
大規模Eコマースサイトのマーケティング支援、システム構築を行うインフォマークス株式会社を2002年に設立し代表取締役に就任。
スタートアップから年商100億円を超えるメジャーサイトまで、数多くのネット通販ビジネスのの事業戦略コンサルティング、業務改善を実施。
海外各国の通販マーケットにも精通しており、特に北米、ASEAN地域に注目、事業進出を準備している。
自他ともに認める「通販マニア」である。