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どこの殻を破った?Newたまごっち

場所の概念を越えられないから商品完結型に
先日、僕は「たまごっち」の新商品披露パーティに呼ばれて、うかがいましたが、商品企画の変貌を感じとりました。そもそも「たまごっち」で特徴的なのはそれぞれ育て方によって、成長の仕方が異なっていること。思い通りにならないし、ペット並みにお世話が大変。手が離せず、手を抜けないから面白い。

1990年代後半に大ブレイクして、継続的に商品を出していましたが、それらは単品単品で勝負していました。それはそれで、その当時はそれが正しかったのかもしれません。

ただ、新商品「たまごっち ユニ」ではWi-Fiを通して、ネットに接続できるようにして「商品で完結しない」新しい価値を見出しました。Wi-Fiを通して、この「たまごっち」があれば、世界中の人とやりとりができるのです。

なんだそれだけか。そう思うけど、よく考えてみてください。

「たまごっち」は育成する事で楽しむ「おもちゃ」ですが、その成長した姿は育て方と関係しており、それをシェアすることで、人とのやりとりを楽しくします。しかし、それぞれの「たまごっち」は切り離された状態だったわけです。通信機能などは備わっていましたが原則、目の前にいる人だけで、場所という概念を越えられなかった。

Wi-Fiで繋がるその空間こそ価値
ところが、今回は大前提として「tamaverse」というメタバースの空間を介して世界中の人が作ったキャラとのコミュニケーションができるといいます。しかもクラウド環境の整備にAWSを用いてまで、投資を行なっています。

すると、人と人との交流があるから、一層、育成に励むという心理が生まれます。ここまでくると、彼らの商品のメインストリームは「たまごっち」という具体的な玩具ではなくなります。その先にあるメタバース空間のコミュニケーションの方になって「たまごっち」は商品単位にこだわることなく、そのメタバース空間へと導く入口に徹するわけです。

大袈裟に言えば、iPhoneと同じですよね。それが音楽を聴くとか、何か単一的な目的を果たすために存在するのではありません。あらゆるアプリの世界へと誘う入口となったことで、iPhoneというデバイスの固定客を作ったわけです。

商品は最初の接点を作るに過ぎない
たまごっち然り、デバイスを進化させることで、そもそもの価値観はずっと継続的に利用されることになります。そうすれば、これまで商品ごとに断絶されていたユーザーの価値観は引き継がれて、継続することになります。

以前、「アフターデジタル」という著書で、これからは「単一接点型」から「常時寄り添い型」になっていくという指摘が書いてありました。そこに通じる展開です。つまり「商品が出たその時点」だけで商品の価値を測るのではありません。

途中に体験を加味して繋がるところに付加価値が生まれます。「たまごっち」も彼らの原点である育成という価値観を最大化させるべく、デジタルを活用したわけです。世界中の仲間と育む環境を作れれば、その価値を土台に寄り添いつつ繋がっていけるからです。

従来の家具の売り方からの転身
寄り添うことで新しいマーケットを作り出したという意味では、家具を売る「ワアク」もそうです。同社の酒見社長とお会いして、それに近い考え方を家具で再現していました。家具というとそれまでは婚礼家具という文化がありました。

いい商品を作れば、売れていく時代でしたが、今はそれもなくなりつつあります。そこで彼は何をしたかというと「デスク」を販売しました。一部を共通化させて同じタイプの商品を作りつつも、カスタマイズするところで差別化を図ったのです。

大事なのは、敢えてコストのかかる部分を差別化要因にしたというところです。というのも「作りたいもの」を作っても、お客様は理解をしてくれない。一方で作り手もお客様を理解せず、商品を作っていた。だからそこから脱却して互いの理解を心掛けたと。

理解に寄与したのは「チャネルトーク」のチャット。より対話に近いコミュニケーションであったことから、ライトに会話が飛び交う。おかげでコストのかかる部分はちゃんとお客様に伝えられ、またお客様もそれに納得して支払ってくれる。

結果、競合他社の2倍近くの単価で売っていて、それは体験が加味された功績だと言います。

婚礼家具とは真逆の視点と新しいマーケット
そして、そこにとどまらないのが彼らしい。それこそ婚礼家具の時代では、いい商品をずっと使い続けるという事が正義でしたが、彼は別の定義を持ち出したのです。リセールバリューという形でお得に買い取る制度を取り入れました。

今や、場所を問わない働き方などによって、同じ場所に同じ家具を置き続けるとは限りません。それゆえの買い取り制度です。でも、商品を売り切って終わっていたらそれはなくて、お客様と寄り添うことで信頼関係ができているから可能となります。

商品を単品単品で完結させて売る時代は過去になりつつあります。デジタルの登場により、お客様と寄り添いやすくなったからです。商品を再定義して、寄り添うための関係づくりを意識した方がいいのではないかと思います。今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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