下戸の時代がやってきた?ゲコノミクス GEKONOMICS
私はその風貌から「お酒強そう」とか「家でスコッチ飲んでそう」とか言われることが多いのですが、まぁ褒め言葉として捉えておきましょう。実はもともとお酒が強くない家系に生まれ、このコロナで宴席が激減したせいですっかりアルコールに弱くなってしまったのです。
W杯カタール大会が終わってサッカーロスしてますが、カタールという国は基本的に酒は禁止です。ある特派員の方がレポートしてましたが、お酒なしで1ヶ月滞在していると朝起きると実にすがすがしい気分の自分に気がついたそうです。それからは飲まない方が自分らしいと気がついた、とのことです。
とても残念に思うのは、日本の飲食業では未だにアルコール類販売で利益を出すビジネスモデルが幅をきかせているようです。ある有名寿司店主はテレビ番組で堂々と「お酒を飲んでくれないと儲からないんだよね」と発言しておりました。下戸に対する宣戦布告と捉えております(笑)
飲食業での下戸に対する扱いはひどいですね。ワインや日本酒のラインナップは競い合ってとても充実しているのに、「ノンアルコール」は乏しく、下戸はとても寂しくまた卑屈な思いをしております。
レストランで同行の者は楽しそうにワインリストを眺めてます。「今日のメインは肉だな。やっぱり赤だな。ふふん、ボルドーのこれがあるのか。でも甲州も良いよね」などとほざいている横で、私はソフトドリンクの項目を見つめて涙目になります。炭酸水、ジンジャエール、ウーロン茶、オレンジジュース・・・。料理に合うソフトドリンクが・・・無いのであります。
グローバルに見ると、宗教上の理由で飲めないイスラム教徒は19億人いるし、高齢化社会が進む中で健康上の理由で飲めない人も増えてくると思います。ワイン大国フランスでも若年層のワイン消費量が減少しているとのことです。
世界的に、スマートドリンキングとかソバーキュリアス(Sober Curious)とかが時代の流れになってきています。ソバーキュリアスとは、お酒が飲めないわけではないのにあえて飲まない人や、進んでローアルコールやノンアルコールを選ぶ人のことを意味します。このソバーキュリアスと呼ばれる人々や、近年の健康志向・セルフウェルネスを意識した消費トレンド、責任ある飲酒の考え方などにより、世界的にローアルコール、ノンアルコール商品の需要が高まっているのです。
商品においても某ビール会社はスマートドリンキング市場に低アルコールビールを販売しておりますし、ワインも本物のワインからアルコールを抜く技術も進化して相当おいしいノンアルコールワインが出てきています。
日本の飲食業にも多様性が求められていると思います。ポストコロナでインバウンドが増えて行く中、未だにアルコール販売で利益を出す事業モデルから脱却して欲しいですね。日本でもそろそろパラダイムシフトを起こす時期なのではないでしょうか。
下戸だってお金がない訳ではないのです。
ちゃんとそれに合ったドリンクを準備していただければお金は払います。ゲコノミクス市場はこれからどんどんと大きくなっていきます。
下戸にも愛の手を!料理に合うドリンクを!
JECCICA客員講師 斎藤 賢治
(株)クオカプランニング取締役会長
2001年お菓子パンの材料道具販売「cuoca」を立ち上げ、EC・リアル店舗・卸販売・レッスンスタジオとオムニチャネルを実践し最大32億円まで成長させる。食品の商品開発からプロモーションなどを得意とする。