楽しく誰にも分かるマーケティング：Vol㉕
「健康寿命を延ばす」インターネットのシニアコミュニティ

【新型コロナウイルスの影響で気づいたこと】
今年の２月頃から急速に社会に影響を及ぼしている「新型コロナウイルス」ですが、政府は全国に緊急事態宣言を発令し、テレワークや不要不急の外出自粛で私たちの日常生活に大きな影響が出ています。こうした今までに体験したことがない日常では、いろいろな気づきがあると思いますが、その中の一つに、家で過ごす時間が思った以上に「退屈」や「孤独」と感じる人は多いと思います。
ここで興味深い２つの数字を紹介します。先ずは「９０，０００時間」。これは大学を卒業して６２歳まで４０年間、平均１日１０時間働くとこの時間になります。もう一つは「１２５，０００時間」。これは６２歳で定年退職して現在の男性平均寿命に照らし合わせ、２０年間を睡眠７時間差し引いて算出した時間です。今後は働き方改革や長寿化で、更にこの数字が開きますが、これほどまでの時間をどう費やすかということは、人生の大きな課題ともいえます。

【高齢者の３大不安とは？】
ところで高齢者の３大不安をご存じですか？それは「健康、お金、孤独」です。健康とお金はおおよそ予測がつきますが、「孤独」は想像以上に悪影響が大きく、一日にタバコを１５本吸うのと同じと言われています。また一日中家に閉じこもり、誰とも話をしない日が続くことは、心の健康にも悪影響を及ぼし、心身に老化を進行させていきます。今はこうした単身世帯の高齢者が多いことが現実です。私の友人である沖原寧子さんは、こうした高齢者の「孤独不安」を解消するために、「おしゃべりクラブひまわり」を立ち上げ、「文通・交換日記・電話・テレビ電話」を通して、会話を楽しんでもらうビジネスを行っています。

【人は自分の話を聞いてもらいたい】
沖原さんは、「ひまわり」を立ち上げる以前は、オンラインでお酒を飲むクラブのママをされていました。主に仕事で疲れた男性を対象に、「俺の話を聞いて欲しい！」と、仕事の話から他愛もない話まで、何でも遠慮なく話せる場所をオンライン上で提供することにより、相手は何時でもどこからでもアクセスが可能です。従来お店に出向くことで満たしていた「話がしたい」というニーズは、オンラインでも満たされるようになったのです。対面の空間でなくとも、自宅にいながら人との繋がりを持ち、自分という人間の存在を確認することは、これからの時代は充分可能です。沖原さんはこうした経験から、「人が話をしたい！」というニーズ（欲求）は、とても高いと話しています。

【これからの高齢者はオンラインで繋がる】
沖原さんは「ひまわり」をスタートする際、現在はインターネットやスマートフォンの利用に抵抗がある高齢者も居るため、「テレビ電話・電話・文通・交換日記」と４種類のメニューを用意しました。アナログのコミュニケーションでも、ポストに手紙が届くワクワクや、電話がなるドキドキは、その時の興奮はもちろん、それを待つ時間さえもハッピーに導きます。一方でスマホを使うシニア層、特にシニア予備軍のＡＢＳ世代は、ミーティングアプリを使い、簡単に安価にコミュニケーションを図っています。コロナの影響で自粛が続き、「Zoom飲み」が流行しています。国内はもとより海外に住む友人ともスマホやタブレットで簡単に話が出来る、本当に便利な時代になったと思います。２０年後のシニアライフは、足が不自由になって家から出かけられなくなっても、インターネットの活用により、孤独を感じる人は今よりもはるかに少なくなっているでしょう。人間はやはり人と関わり、コミュニティに属したいという「帰属欲求」があり、そこで自分が必要とされたいという「承認欲求」があります。それらが満たされてはじめて、ドキドキ・ワクワクを楽しむことができるのです。

【ECを使い知恵で対価を得る時代が来る】
スマートフォンを使い、インターネットでコミュニケーションが出来るシニア層が今後増えるに従って、「孤独」という不安や不便は解消され、老化の進行を遅らせることが可能な時代になります。同時に、従来にはない様々なシニア向けビジネスがECを活用して考えられます。それは法人のみならず、個人が出来る時代とも言えます。おりしも副業解禁の企業が増えつつある今後は、その人のキャラクターや経験を活かして、「知恵で対価を得る時代」に確実に進化していると感じています。

■ＡＢＳ世代　昭和３０（１９５５）年から４３（６８）年生まれで現在５１歳から６５歳の、若者時代にバブルを謳歌した世代。