楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.84 【日本は何故「閉塞感」が漂う国になったのか?①】
【先が不透明な私たち日本人の生活】
米国のトランプ大統領が政権を担うようになり、「関税」の問題で輸出企業が大きな痛手を被るとか、株価が乱高下するとか、政治と経済にいろいろな影響が出ています。
また物価高は収まりそうになく、日々の生活に大きな影響が出ていますし、更には未婚化と少子化で人口は減少し、超高齢化で寿命は延びても、先々の「お金や健康・孤立」が心配な人は、老若男女を問わず多数居ます。
今、私たちの生活はとにかく「不安」が大きく、日本社会全体に「閉塞感」があります。
今回からこのテーマを、「マーケティング」と「超高齢社会」と関連付けながら、考えてみたいと思います。
【今の日本に漂う閉塞感の主な要因とは?】
私の個人的な経験値や感覚から、やはり「バブル経済」が弾けて、その後長いトンネルから抜け出せていないという気がとてもしますが、あらゆる観点から検証してみましょう。
①バブル崩壊以降の経済成長停滞
■バブル崩壊(1991年)後、日本のGDP成長率はほぼ横ばい。
⇒1980年代:年平均成長率 約4%
⇒1990年代以降:年平均成長率 約1%弱
■国民所得も伸びていない。
⇒1995年の一人当たり名目GDPは、世界2位(アメリカに次ぐ)だったのに、2023年には世界27位に後退。(IMF統計)
②賃金が上がらない
■日本人の実質賃金はこの30年間ほぼ横ばい。
⇒1990年と比べ、2023年の日本の平均賃金はむしろ減少している。
⇒対して、アメリカは約1.8倍、ドイツは約1.5倍に増加。
③デフレと政府の政策ミス
■1990年代後半から本格的にデフレ(物価が下がる現象)に入り、企業も個人も「お金を使わない」マインドに。
■政府は財政赤字を恐れて緊縮財政を行ったため、さらに経済が冷え込んだ。
⇒結果、日本政府の負債(いわゆる国の借金)は増え続け、GDP比260%以上(2024年現在)と、世界最悪レベルに。
④国際競争力の低下
■1989年、世界時価総額ランキングトップ50社に日本企業が32社も入っていた。しかし、2023年にはトヨタ自動車1社のみ。
■技術力、教育力でも相対的に劣後し始めている。
⇒例えばPISA(国際学力調査)でも、かつての日本の「世界一の学力」は後退している。
⑤少子高齢化
■1990年:日本の人口は約1億2,300万人。
■2024年:1億2,400万人だが、既に人口減少フェーズに入り、労働力人口も急速に減少。
■2060年には総人口が8,600万人に減少すると予測されている(国立社会保障・人口問題研究所)。
⑥社会の閉鎖性・リスク回避志向
■バブル崩壊後、失敗を恐れる文化がより強くなり、チャレンジ精神が萎縮。
■ベンチャーや新規事業へのリスクマネーも少ない。
■こうした結果、イノベーションが生まれにくい空気に。
これらのマイナス要因が連鎖して、まさに「負のスパイラル」にはまってしまったのが、今の日本社会の現状だと感じています。
こうした時代に「マーケティング」は、ビジネスを成長させ、イノベーションを起こし、私たちの暮らしを豊かにする「ツール」として機能しないのでしょうか?
【私たちはマーケティングの使い方を間違えたのか?】
昔を知らない若い人たちは、親や上司から聞いた話、検索で調べた話で「ピンとこない」かもしれませんが、私の経験で言えば、1980年代は日本社会がとても元気だったと感じています。
私は1981年4月に広告代理店に就職しましたが、雑談のようなミーティングで自由に意見を出し合い、「世の中の気分を反映した面白い企画」を提案。すると、クライアント側もこうした面白さに共感して、特に「前例のないコト」にチャレンジを行う「空気感」があり、あらゆる「化学反応」がありました。
その後、1989年の金融政策転換(公定歩合の引き上げによる金融引き締め)と、1990年の総量規制(地価高騰を抑えるため銀行の不動産融資を制限)の実施が引き金となり、一気に株価と地価が大幅に暴落して、結果的には1991年2月にバブル経済は崩壊。
すると、その後は「ビジネスを慎重に行おう!」「売りに繋がる企画を行おう!」という方向性に変化。私も含めて多くの日本のビジネスパーソンは、本格的にマーケティングやロジカルシンキング(論理的思考)を学び、ビジネスに取り入れ、実行するようになったのです。
しかし「良かれと思って」行った、こうした一連の行動は、今の日本の経済や社会にプラスに作用したのか?とても疑問を感じる今日この頃です。
最初にお伝えしますが、決して私が「マーケティング」を批判している訳ではありません。それは「マーケティングコンサルタント・プランナー」の私の人生を批判することと同様です。
ただ、一つ言えることは「マーケティングの使い方を間違えたことで保守的になった」と、最近とても感じています。
次回は、「何故、使い方を間違えたのか?」をお伝えします。

JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント