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楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.81 【50歳以上過半数社会と「新たな大人市場」の到来④】

前回に引き続き、現在50代半ばから60代である、昭和30年から43年頃までに生まれた「ABS世代(アクティブ・バブル・シニア)」向けのビジネス、3つのポイントである「リアリティ」「コト体験=コミュニティとエンタメ」「デジタルとイノベーション」を踏まえた事例をご紹介します。

事例⑤ ラジオとライブイベント「民放ラジオ局」
私もそうでしたが、ABS世代が中学、高校生の頃は、多くの人がラジオを聴きながら机に向かって勉強をしていたと思います。ラジオはその後、クルマの中でFMラジオを聴いていましたが、最近はLINEミュージックで好きな楽曲を聴いています。そんな私は、2020年4月にコロナ禍になって家の中の時間が増えたため、スマートフォンアプリの「radiko(ラジコ)」をインストールしました。radikoプレミアム(有料版)は、全国の「NHKと民放ラジオ」を、過去1週間まで遡って聴けるアプリで、加入者数が急増しています。岐阜出身の私は、名古屋CBCラジオで今も活躍している「つボイノリオ」さんの番組を聴いて、懐かしさと今でも面白いトークに魅了され、それ以来ヘビーリスナーです。特にAM局は、若い頃に慣れ親しんだ人たちが今でも活躍し、新たな発見と元気が得られるようです。元々、ラジオは親近感あるパーソナルなメディアですが、今ではインターネットを介したお便りや、番組公式SNSでリスナーのコミュニティがあり、より「双方向メディア」になっています。また、元々イベントなどの催しと親和性があるため、ラジオを聴いていると、これまた若い頃に応援していたアーティストのライブ告知が多数放送されています。こうした流れも、SNSを介した「コミュニティ化」が可能なことで、「推し活」や「応援消費」が形成されています。

事例⑥ 雑誌とコミュニティ「ハルメク」
雑誌不況と言われて久しいですが、そんな中で50.60代向けの女性誌が健闘しています。元々ABS世代女性は、「JJ」「CanCam」など「赤文字系雑誌」と言われた、女子大生やOL向けファッション雑誌を読んだ世代で、こうしたライフスタイルのバイブルになる情報誌を支持する傾向にあります。そして、現在月刊誌の発行部数№1の「ハルメク」は、50代以上女性を主な読者として、大人女性の生き方や暮らし、ファッション、健康、レシピ、インタビューなどのライフスタイル情報を発信し、約50万部の発行部数を誇っています。ハルメクは「年間購読費」を支払って届けられる「直販雑誌」ですので、約50万人のリストを有しています。ハルメクがユニークな点は、このリストを活用して読者の中から「ハルトモ」という読者サークルを募っています。ハルトモは「アンケート、座談会、読者モニター、読者モデル、ライター」などのサポートに参加してもらっています。つまり、ハルメクは「限定性・参加性・貢献性」という価値を生かし、帰属欲求や承認欲求が強い女性を味方に付けて、一緒になって誌面を企画しています。これもまた「推し活」「応援消費」を生かしたビジネスを行っている好事例です。そして「出版事業」に加えて「通販事業・マーケティング事業」を行っているという点は、まさにダイレクトマーケティングのお手本となる展開を行っています。

事例⑦ JR東日本「大人の休日倶楽部」
JR東日本が提供する「大人の休日倶楽部」は、旅行情報や割引切符などの特典が受けられる、50歳以上の方を対象とした会員組織です。この事例のポイントは「ネーミング」を中心に、広告コミュニケーション展開の世界観(印象)が秀逸な点です。
シニアと言わずに、さり気に「大人」と表現している点。そしてメインのイメージキャラクターに「吉永小百合さん」を起用すると同時に、会報誌では「水谷豊さん、渡辺謙さん、佐藤浩市さん、羽田美智子さん」など、当事者世代に好感度が高い俳優さんやタレントさんを「さりげなく」起用している点です。
安易にネーミングに「シニア」という言葉を使うケースを多々見かけますが、プロダクトがいくら良くても「世界観」はとても大切。やはり見た目の印象を始めとして「五感」に届く印象がとても大切なんですね。

事例⑧ シニア婚活バスツアー・終活
未婚者及び離婚者が増えている影響から、現在「60歳の3人に1人は独身」の時代です。その影響をあって「パートナーを探すバスツアー」が人気で、コロナ前の3倍に伸びています。しかし、どうもネガに思うのは「シニア婚活バスツアー」と呼ばれている点です。男性は「結婚」を目的にしている人が比較的多数ですが、女性はあくまでも「パートナー探し」が目的の人が多く、彼女達からすると「婚活ではなく、恋活」なんですね。また「シニア」という言葉がネガワードですし、若い頃は「合コン」や「ねるとんパーティー」を体験した世代。であれば「大人の恋活ナイトクルージング」の方が、ニーズがありそうです。「終活」という言葉もすっかり浸透しました。終活とは、人生の終わりを見据えて行う活動や準備のことです。具体的には「遺産相続や財産整理、保険の見直し、サービス解約のIDやパスワード伝達、医療や介護の希望、葬儀やお墓に関する希望」など、家族や周囲の人に迷惑をかけないことと同時に、自分自身の人生を充実させる活動です。「終活」という言葉は、2009年頃から葬儀業界で提唱された言葉で、「エンディングを考えることを通して、これからの人生を生き生きとしたものにする」という意義のある活動内容ですが、終活を完了している人の割合は、2018年から2023年までの間に、6.7%から7.7%と若干増加ではあるものの、1割にも届いていません。やはり知られてはいるものの、普及しない大きな理由は「終活」とうネーミングがネガティブイメージで、積極的に行おうという気持ちにならないことが要因かと考えます。そういう観点では「老人ホーム」という名称も、昔から変わっておらず、様々なモノやサービスの名称が新しくリニューアルされるのに、どうもシニアマーケットに関しては、いまだにステレオタイプに捉えられている気がしてなりません。「終活」も「老人ホーム」も、積極的に行いたい、利用したいと思わせるような「世界観」を創れば、大きくマーケットやビジネスは変わるはずです。

私は今年65歳を迎えますが、自分自身が「欲しい・行きたい・体験したい」モノやサービスが少なく、シニアマーケティングは、コンセプトやクリエイティブ次第で大きく変わります。そして、ABS世代はスマホでECやSNSなど、デジタルを使う点は、従来のシニア世代と大きく異なりますから、ブルーオーシャンの「新たな大人市場」が存在していると確信しています。

JECCICA客員講師 鈴木 準

株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント


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