楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol㊾ 課題解決から夢の実現へ!
「課題解決」の意味とは?
「課題解決」という言葉を私たちは日常的に使っています。課題解決の意味とは、現在生じている(発生している)問題について、 問題が発生した要因や事象の分析、発生原因を洗い出して整理し、その後に対応可能な解決案を立案することと整理出来ます。
この課題解決という言葉ですが、振り返るとバブル経済が崩壊した1990年代から盛んに使われるようになった気がします。バブル崩壊の反省からビジネスを成功する確率を1%でも高めるため、マーケティング・マネジメントが本格的に普及し、その起点が「課題解決」と言われるようになりました。
課題抽出時に使うフレームワーク「3C分析」
マーケティング・マネジメントは「環境分析」⇒「基本戦略(STP=コンセプト)」⇒「施策(マーケティングミックス=4P)」と3つの領域から整理されますが、課題とは最初の「環境分析」の中で、自社が狙う顧客(標的)を探し、その機会(チャンス)を生かすため、何が課題なのかを特定します。その際に良く使うフレームワークが「3C分析」です。3Cとは「Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)」を指しますが、実際の現場では「自社の業界」を整理しているケースが多く見られます。自社の業界とは例えば健康食品の事業会社であれば、同じ健康食品の競合企業との比較で、健康食品市場での勝ち負けを考える訳です。この方法自体は間違いではないのですが、2つの問題点があります。
3C分析の落とし穴とは?
まず一つ目は、同一業界の市場と競合だけを見ていると、思わぬ代替品に持っていかれる脅威を見つけられないことです。先の健康食品であれば、例えば「夏までに痩せたい」というニーズを持つ顧客が選択するモノやサービスは、必ずしもサプリメントだけとは限らず、日々の食事と運動、あるいはスポーツクラブに通うなど、様々な代替案があります。つまり顧客視点で考えられない訳です。そしてもう一つは、顕在市場しか見えないことです。ニーズは「不の字探し」と言われ、「不便・不満・不安・・等々」、顧客の抱える不の字を探すことです。最近では「ペインポイント(顧客の痛点、顧客の悩み)」とも言われています。しかし顧客が明らかに名言出来る不の字は既に顕在化されたニーズであり市場です。これも健康食品に当てはめると顧客の悩みを解決するコンセプトとなるため、こうした視点で製品開発からコミュニケーション施策を行う事となり、いわゆる「レッドオーシャン=競争の激しい市場」に参入することとなります。
ブルーオーシャン=競争のない世界を創造するために!
環境分析ではマクロ的なフレームワークに「PEST分析」があります。PEST分析は、政治的要因(Politics)、経済的要因(Economy)、社会的要因(Society)、技術的要因(Technology)の4つの要因から、自社を取り巻く外部環境を分析するフレームワークですが、この中で「社会的要因・技術的要因」の2つは、これから特に重要な要素です。一昨年新型コロナウイルスがまん延し、今でも私たちの日常は様々な制限がありますが、今回のコロナ禍で社会の動向は大きく変化しました。そしてテレワークやEコマースに代表されるように、テクノロジーの恩恵で私たちの日常は仕事や買い物が出来る環境にあります。つまり「社会のうねりや技術革新」は、大きく世の中を変え、人間の価値観や消費行動を変えるのです。
このような観点から、顕在化した市場の「不の字解決」をする一方で、従来になかった新たな価値を提案し、顧客は気が付いていない「ワクワクするコト」を創造して、潜在市場を掘り起こすことは、ブルーオーシャンを開拓することになります。
どうすれば顧客が「笑顔」になるのか?
今後ビジネスパーソンに大切なことは、世の中のうねりを「自分自身の体験から洞察して考え、仮説を持つこと」であり、こうしたうねり、つまり変化の中で「どうすれば顧客を笑顔に出来るか?」という極めてシンプルな思考をすることです。そして右脳を生かすことで様々なアイデアが沸き、そのアイデアは従来不可能だったコトが、テクノロジーの進化で可能になる今の時代です。
マーケティングでは「戦略・戦術」という戦争用語を用いますが、この戦う相手は「競合」であり、もちろん競合との差別化は大切ですが、あまりにそこだけを見ていると「顧客不在」のマーケティングになりかねません。「顧客を笑顔にする」ことを基本に考えれば、独自性のあるモノやサービスの開発に繋がり、それが結果的に差別化に繋がります。
これからの社会は、「絶対に変わらない人間の本質」を大切にしながら、テクノロジーで「もっと人を笑顔にする」世の中を、人間が考えて創造する時代と感じています。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント