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これからの店には「無駄」と「生産性」の共存が必要

一見すると相反する「無駄」と「生産性」
先日、「SOÉJU(ソージュ)」というお店が日本橋高島屋S.C.新館でポップアップショップをするというので、同店を運営するモデラートの代表取締役 市原明日香さんに話を聞いていた。その運営の内容を考えると未来のお店に必要なのは「無駄」と「生産性」のバランスなのかもしれないと思った。

「え?無駄と生産性は真逆の言葉じゃない?」そう思われる人もいるだろう。まずは「SOÉJU(ソージュ)」がどんなお店かを紹介しておこう。アパレルのネット通販を展開しており、自社で商品を作り自らそれを販売するD2Cのスタイルで、差別化要因になっているのはコーディネイトである。

女性の場合、30〜40代は人生の転換期を迎えることが多く、代表例が結婚、出産、管理職への就任といった具合で、環境の変化に伴い、服も変化させていかなければならない。このお店はそのタイミングに着目したのだ。

お客様をコーディネイトで満足させる
そういう女性をターゲットにウェブ上で仕掛けを行い、そのニーズに応えるべくブログなどを充実させて悩みを解決する一方で、最終的には通販サイトへと着地してもらう。

そして辿り着いたサイト上で質問をするのである。答えるうち、その人に相応しいコーディネイトを提案してくれて、勿論、専門のコーディネイターを用意しているから、お客様の満足度が高い。

しかも深掘りはできていて、代官山にリアルなサロンを用意して、そこで実際に直接、専門家にコーディネイトをしてもらうこともできるようになっている。その高揚感は目に浮かぶ。ポップアップショップはもう少し立ち寄りやすくした派生系である。

ただ、そうは言っても日本橋高島屋S.C.新館であり、勝手が違うはずなのだが、その商業施設の“常識”に少しもとらわれることなく、自分たちらしく「無駄」と「効率化」のバランスをとって「未来の小売」に相応しい展開をしてみせたのだ。

売る為ではなくコーディネイトの材料
確かにリアルの拠点だからレジこそここで通す。しかし、この場所では商品を持ち帰ることができない。なぜなら、ここに陳列されている商品は全て、店内でコーディネイトをする為に用意されたものだからだ。

ただし、陳列している商品を持ち帰るわけではない代わりに、同社の倉庫からすぐに配送されるようになっている。これも日頃、D2Cで直ぐに配送できる環境が整っているが故に、できることであり、直ぐに届けば、リアルと変わらずストレスに感じることなく、リアルの価値をフォローしていけると考えたのである。

これでスペースを思う存分、コーディネイトというこの店の付加価値に当てることができるわけで、些細な工夫でリアルの価値を最大化させていることは見逃せない。

それでいて、商品がなるべく集中するように、このイベント前からライブ配信などのお客様との接点で「3型のウールコート」が目に留まるよう工夫している。お客様の関心をそちらに仕向けることで、バックヤード側の倉庫にある商品もなるべくバラけないようにして、在庫リスクを軽減させているのであって、見事である。

商品を絞り込んでコーディネイトの質を充実させて、そのスペースをフルに使ってお客様の満足度向上に努めていく。コーディネイトゆえ、客単価も高い。ダメ押しでこのイベント限定で、4万円を超えたお客様に特典をつけることで、気を良くしたお客様は大抵、その金額になるように買っていくというわけである。

無駄と生産性が生んだお客様の感動
昨今、リアルとネットの融合が叫ばれる。ショップは自社ECで価値観を大事にすると共に、お客様とそれを通して心を通わせ、信頼度がリピートを生んで、成長へと導くわけであるが、その満足度を高める過程で、リアルで深掘りをするわけである。ここはリアルにおける人間味が大きくプラスに作用することは言うまでもない。

まずはネットで小さく始めて、その生産性の高さは維持しながら拡大していき「生産性」の高さが企業の成長に寄与する一方、そのお客様の満足度を更に高める上では、お客様との会話をなるべく長い時間、楽しんでもらうなど、一見すると売り上げに対して「無駄」な部分がプラスに働く。そういうわけで、ここまでの流れを見ると、このお店は上手にそのバランスを取り入れていると思うのである。

最後に、市原さんは「本当に感動した」と言って、とあるお客様のこんな話をしてくれた。代官山のサロンは完全予約制で、だからこそ躊躇していたお客様がいたのだという。

聞けばその躊躇する理由は「サイズに合うものがなかったら悲しい」という理由からで、ところが今回はポップアップショップなので他のお客様に紛れてコーディネイトを受けてみたのだという。するとスタッフの人がよくしてくれて、自分に合う服が見つかり人生で初めて洋服を着て涙したというのである。私も泣きましたと市原さん。

先ほど、書いた通りだけど、スペースを最大限に活かした功績だろう。やっぱりこれからのお店は「無駄」と「生産性」だ。一見すると真逆の言葉だけど、それがお客様への感動と信頼を生んで、そのお店を一歩、前進させてくれるものなのである。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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