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安倍元首相の銃撃事件について

2022年7月8日、安倍元首相が参議院選挙の応援演説中に銃撃され死去するという悲惨な出来事が発生しました。

理由を問わずこのようなことは絶対にあってはなりません。日本中が激震に見舞われたこの事件について、連日マスコミが時間をかけて報道を繰り返しています。報道の中身を見ると、事件の背景にある宗教団体に関する内容、および当日の警備体制に関する内容に大別されます。特に前者については日々少しずつ明らかになる事実に基づき報道内容が変化してきており、銃撃事件そのものとの関係性が薄まった報道内容となっている気さえします。

見落とされ気味なのではと思うのですが、私はEC業界に身を置くものとして、犯人が銃を独自に製造するにあたりインターネットを利用した点をとても憂慮しています。

ここで言うインターネットの利用というのは、①銃の製造のための材料をインターネットで手に入れたこと、②銃の製造方法についてインターネット上の動画を参考にしたこと、であります。

特に①についてはまさにECの話です。「材料はインターネットで購入」との文章を目にするたびに、私は複雑な思いに駆られます。他方、銃の製造にインターネットやECが利用された点に大きくフォーカスがあたってしまうと、模倣犯を増長させてしまうリスクもあるでしょう。よっていたずらに事が大きくならないように気を付ける必要もありそうです。このあたりはジレンマを感じます。

ところでインターネットを活用した犯罪は様々です。例えばフィッシング対策協議会発表によれば、2021年の年間フィッシング報告件数は526,504件となっています。これは2020年の2倍以上と急拡大しています。またフィッシングが主因かとは思いますが、2021年の年間クレジットカード不正利用被害額は330.1億円であり、そのうち番号盗用被害額は94.4%に相当する311.7億円にも及んでいます。この数値も残念ながら年々上昇しています。

警察庁発表によると、2021年のランサムウエア被害の報告件数は146件となっており、そのうち警察として金銭の要求手口を確認できた被害は97件とのことです。件数はまだ多くないものの急拡大しているようです。関係者による努力は継続的に行われていると思いますが、今後さらに増加するかもしれません。

しかしながら、これらは経済的な打撃を被る犯罪です。安倍元総理の銃撃事件は生命にかかわる犯罪ですので、上述の経済的な打撃を被る犯罪とは全く質が異なります。

もちろん経済的な打撃が最終的に生命にかかわる事態に発展することも場合によってはあるかもしれません。ですがそれは間接的な話です。今回の事件は直接的に生命に危害を及ぼす犯罪であります。したがって、今回の事件についてインターネットを活用した犯罪という大きなくくりのなかで仮に取り扱われることがあるとしたら、それは少し違うのではないかと私は考えます。

規制に関する議論もあるかもしれません。しかし、銃の製造を本来的に目的としない材料を用いるとすれば、未然防止を目的とした規制は現実的に無理があります。また銃製造の動画についてですが、Googleは“銃器を販売すること、銃器、弾薬、特定の銃器のアクセサリの作り方を視聴者に説明すること、アクセサリの取り付け方を説明することを目的とするコンテンツは、YouTube で許可されていません。”(原文のまま)としています。

しかし即削除としても膨大な投稿から見つけるには時間もかかるでしょう。その間視聴者の目に触れてしまう時間があることは、100%の防止にはつながりません。結果的に規制によって防止することは困難なように思えます。

考えてみれば、思い出したかのようにフリマで○○○○が出品されているといったことが時折話題になります。今のところ、フリマによって生死に関わる大きな事件に発展したケースは思いつきません。ですが、ECもさることながら、フリマもそのような危険性をはらんでいる可能性があるのではと危惧します。ところが何等か出来事が発生しても、時が過ぎれば世間やメディアの関心は薄れます。

今回“犯人はECを通じて銃の材料を購入したらしいけど、まあそういう時代だよね。”と感じている人が実は多いのではないでしょうか。

このコラムで伝えたかったことは、銃の製造にインターネットやECが利用された点にメディアや世間の関心があまり向いていないこと、規制によって抑止することが容易ではなさそうなこと、フリマ含めEC市場が大きくなっており犯罪の可能性の拡大が危惧されること、といった点を通じ、インターネットやECが犯罪の温床となることを、打つ手なしとして社会が黙認してしまっている気がしてならないということです。無論、社会がこのようなことを許容しているわけではないと思います。インターネットやECによって実現できる利便性に対し犯罪によるマイナス面が小さいということでしょうか。

仮にそうだとすれば、今後再び取り返しのつかない事件が発生してしまうかもしれないことを、深く憂慮します。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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