[WD連載] エンゲージメントEC
ECの大きな特長の一つにユーザデータが取れるところがあります。後からでもデータを取り出して分析、解析、次の行動に対する仮説や計画を立て、実行しまたチェックが可能です。このデータには主な種類として、アクセス数、ページビュー数、離脱率、平均滞在時間、リファラーなどを見ることが出来ます。
しかしながら、顧客とのつながり(エンゲージメント)を確認するにはどうすればよいのでしょうか?いいね!の数ではないですよね?SNSでいいね!をいくら集めたところで売れるわけでは無いことは十分わかりました。では、いいね!でつながりがあると思って良いのでしょうか?例えば友人にお願いして集めたかもしれませんし、得意先からの要望で無理やりいいね!を押したかもしれません。いいね!の種類がわかるといいのですが、今の段階でもわかりません。簡単に言えば、エンゲージメントはユーザー同士で対話できているかだと思って良いです。
今回は、ECで必要なエンゲージメントについて考えてみましょう。
ECにおいてのステークホルダー(利害関係者)は、お客様、スタッフ、株主、仕入先、倉庫、物流、金融、地域社会、行政機関などに分かれます。これをお客様と内部スタッフと外部スタッフに分けてエンゲージメントを考えてみましょう。現在のECでは、1人ですべて出来るとは言えないです。必ずチームを作る必要があります。このため、内部スタッフと外部スタッフをチームとして考えておく必要があります。
では、まずお客様のつながりはどうやって見るのがいいでしょうか?
方法としては、NPS(ネットプロモータースコア、Net Promoter Score)やレビュー解析、メルマガやHPでのアンケートの3つが上げられます。
NPSは顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標のことで、「あなたは○○を友人にすすめたいと思いますか?」という質問に対して0〜10点で評価してもらいます。EC関係者でしたら、AdobeのPhotoshopやDreamweaverといったソフトの評価でよく見ると思います。ECでは2002年頃から神田昌典氏の「口コミ伝染病」の本に掲載された「私達の商品◯◯をぜひあなたの友人や知人、隣人に紹介してください。」というフレーズで口コミを進めていた時期もあります。これはこれで効果があったと思いますが、評価がしにくいのです。NPSの評価方法は今回の特集でも取り上げられていますのでぜひご参考にしてみてください。
ECではお客様のレビューがあります。お客様は購入したECサイトで直接ショップレビューや商品レビューで点数、評価を書き込むことが出来ます。これはエンゲージメントを評価するにピッタリの仕組みです。レビューの傾向としては、非常に良かった場合と悪かった場合に書き込むことが多くなります。例えば、商品がすごく良かった、スタッフの応対に感謝したいなどの場合です。こういう場合にはお客様がそのお店を推薦していることにもなります。
逆に、商品の誤配送やスタッフの応対が悪い場合には、悪い点数や評価が書き込まれます。楽天では星5点満点で星1つや2つが付くと電話でフォローする仕組みが有りますが、店舗に対して罰点が付いたり、検索やランキングに影響することも有ります。楽天の管理画面RMSのトップページには、レビューの状況が表示され、店舗チェックシートで見るとレビューに対しての評点が付いています。
商品レビュー件数のうち、星1または星2の割合の低さで評価されています。
10点: 0.0~2.0%
9点: 2.1~2.7%
8点: 2.8~3.6%
7点: 3.7~4.4%
6点: 4.5~5.3%
5点: 5.4~6.2%
4点: 6.3~7.0%
3点: 7.1~7.9%
2点: 8.0~8.7%
1点: 8.8%以上
例えば、全体で月100件のレビューがあって、星1か2が3回あると8点になってしまいます。楽天ではこの店舗チェックシートが検索やランキングに影響しないとコメントしていますが、将来的には罰金も含めて実施すると私は予想しています。
レビューを一生懸命書いている人の中には、店舗の応援をしたい、レビューの点数をもっと上げたいという方もいらっしゃれば、アフィリエイターの方もいらっしゃいます。レビューを書いてそこから商品購入につながれば、アフィリエイトのポイントが貯まる仕組みです。この仕組みはアフィリエイターにとっても、店舗にとっても、お客様にとってもWin-Winになりやすい反面、ちょっと悪くてもアフィリエイトポイントが欲しいばかりに釣りの言葉を発したり、思いっきり良いことを書いてしまうことも出てきます。
レビューの中身を分析するために、モールの場合には自動的に収集してくれるソフトもありますし、本店サイトのASPでしたら評価をまとめてくれる機能もありますので、それらを使って評価することをお薦めします。ただ、このレビューは顧客満足度に近いため、今後他の方へ推薦してくれるか、リピートしてくれるかはよくわからないのがデメリットです。
しかしながら、レビューの点数は5点満点ですのでNPSのように1〜3点を付けた人を「批判者」、4点を付けた人を「中立者」、5点を付けた人を「推奨者」と分類して、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値を出すのも良いでしょう。
例えば、「推奨者」が45%「中立者」を40% 「批判者」を15%とすると、45%−15%で30点となります。評価方法はNPSに合わせるのが指標として合うのでお薦めしますが、ECショップのカテゴリや業種によって自社評価を変えてもかまわないと思います。一度決めたら、それで評価をすれば良いです。これはベンチマーク先にも言えるかと思います。レビューは公開されることが多いですから、自社とベンチマーク先との評価を行い、またレビュー内容を見て自社の改善につなげることも出来ます。
レビューの評価は、主に商品が良かったか悪かったか、配送が良かったか悪かったか、スタッフの応対が良かったか悪かったか、情報量があったか無かったか、品揃えはどうだったか、決済方法はどうだったか、梱包はどうだったかの6つの要点に集約されます。配送や決済に対して、店舗の評価やレビューがされるのは、困るという店長もいらっしゃいますが、モノが届くまでがECショップの責任として考えるべきです。
例えば、スタッフの応対が悪かった場合には、対応したスタッフの言い分をしっかり聞いて、その背景も確認し、改善すべきことは改善していけば良いことになります。改善する場合には双方の意見をしっかり聞くことが大事です。一方の意見だけを重視することは、間違った改善になってしまうことも有り、組織の壁が厚く高くなってしまうこともあります。仕事内容がブラックボックス化することもあり改善ではなく改悪になってしまいます。
また、ECではメルマガ内やサイト内でアンケートを実施することも多くあります。お客様に「どれくらい満足されていますか?」と点数と評価をお聞きすることで「顧客満足度」を計測しています。お客様は◯◯ですというフレーズの元、顧客満足度を高めようと日々サービスの改善や商品をよくしようと努めるのは、他の業界と同様ECでも行います。
何度もECショップに来て頂き、既存顧客のリピート率を向上させたい、口コミや紹介などを通じてブランドを広めてもらって、新規顧客獲得につなげたい目的で顧客満足度アンケートを使うことが多いです。リピート率が高まり、新規顧客獲得ができれば売上や利益が上がります。ECの場合には、リピート率がカテゴリや業種によって違いますが、毎月新規顧客獲得を目指さなければ、衰退してしまいます。例えば、リピート率50%の珈琲屋さんでしたら、毎月新規顧客獲得を50%以上なければ、翌月は売上が下がってしまうことになります。このため、新規顧客獲得をいかに行うか、リピート率をいかに上げるかはECにとってとても大事なことです。
このためにも、顧客満足度アンケートは定期的に行う必要がありますが、このアンケートは声の大きいお客様に左右されやすいというデメリットが有ります。とっても良い体験をした場合と非常に悪い体験をしたお客様は、先程のレビューと同様に強烈なアンケートを書いてきます。店長やスタッフは、この声の大きいお客様に精神的に左右されやすくなります。特に悪い体験をしたお客様は暴言を書くことも多々有り、書いてるうちにさらにボルテージが上がって、最初に書いていた文と最後の方では、まったく別人のような方もいらっしゃいます。慣れていないスタッフは、この文章に右往左往していまい、場合によっては仕事にかなり影響が出てしまいます。
また、購入回数はそこまで頻繁でなく、購入したけど、そこそこ満足したお客様はどちらかと言うと無口だけれども大多数いる可能性が高く、実はこの普通のお客様達を見失っている可能性が非常に高いです。こういうお客様とどうやって見つけるかがポイントです。そのために、単純な顧客満足度調査というよりも、遊びを兼ねたアンケートやクイズなどを行い、非常に良かった体験をしたお客様と悪い体験をしてしまったお客様以外の普通のお客様の回答を引き出すのが良いでしょう。
例えば、六本木のTOUCH(タッチ)では好きなタオルの感触を聞くアンケートを行ったり、楽天の澤井珈琲では、単純なクイズをメルマガ会員に向けて実施しています。
(楽天ではメルマガ会員=ほぼ顧客になっている)
このアンケートやクイズなどを行うことで、ふだん無口なお客様を引っ張り出すことが出来、その回答を見て社内での評価方法を決めていくのも良いでしょう。
ここまで、お客様とのつながりをどう見ていくかでしたが、もう一つの内部スタッフや外部スタッフというチームへのエンゲージメントをどう見ていくかも重要です。ECの場合、クレームのメールが熾烈になりやすいこともあり、レビューや評点が悪くなってしまうことでスタッフや外部スタッフのモチベーションが下がりがちです。
スタッフに対してアンケートやNPSを実施することも考えられますが、一番効果的で簡単なのは、良いレビューだけを回覧、閲覧するようにして、悪いレビューやクレームは事務的に処理することをお薦めします。朝礼や会議などで徹底的にクレーム根絶のために担当部署や担当者を責めることをするECショップは非常に多いのですが、モチベーションは下がるだけです。
6つの報酬で考えれば
1.お金
2.ポジション
3.やりがい
4.スキルアップ
5.仲間
6.人間性
です。
良いレビューを回覧することで、やりがいを強く感じ、仲間や人間性に対しても良い方向になることが多いのです。
ECにとって、内部スタッフと外部スタッフのチーム力の結束は、今後ますます重要になってきます。それはEC業界が成長していて、変化のスピードが速いからです。とても内部スタッフだけでは厳しくなるでしょう。
チーム力を高めるためには、やはりお互いを信用して仲間でやっているという意識が必要です。ECのチーム力が強いお店はお客様とのつながり(エンゲージメント)も非常に強くなります。
お客様のレビューが悪い、最近少ないといった場合には、いったんチーム内のエンゲージメントを確認するのも良いでしょう。普段から気にしているマネージャーや店長はこのあたり敏感ですが、自分だけ良ければと考えていると足元すくわれやすいと言えます。店長やマネージャークラスの方は6つの報酬を頭に入れて、チーム内のエンゲージメントを考えてみましょう。
代表理事 川連一豊
そろばん2級 書道6段 ヤマハデジタルプロコース卒業
浜松南高校普通課卒業 愛知大学法律経済学部卒業
学生時代より音楽活動を行う。1988年ヤマハ世界大会出場
ベストキーボードプレイヤー賞2年連続受賞などTVCM、TV番組、CGの制作に関わる。
インターネットでは楽天市場 2003年ジャンル賞受賞
楽天にて、モバイル講師 HTMLメルマガ講師
他ネットショップに関わる講師多数
2004年6月30日までソフトプレン株式会社営業課長
ネット店舗の店長兼任
2004年7月1日 独立
2004年8月11日 有限会社SAVAWAY設立
2009年9月ネットショップのおもてなしを出版
2012年システム流通総額1500億円を突破
取引数3500社以上のネットショップ、ネット通販企業
50名以上のECコンサルタントを輩出