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アメリカのエンターテインメント業界のEC事情とマーケティング

私はエンターテック企業のplaygroundでプロダクトマネージャーをしている。エンターテックとはエンターテインメントとテクノロジーをかけ合わせた造語で、playgroundは日本を代表するエンターテック企業になるべく、日々マーケットとプロダクトに向き合っている。今日はエンターテインメント業界でも先進国であるアメリカのEC事情とマーケティングに焦点を当てようと思う。

ジャンルを超えて広がるアーティストのビジネス領域
最近のアメリカでは、歌手や役者、コメディアンといった幅広いジャンルで活躍しているセレブたちが、サイドビジネスを手がけていることが多い(セレブと安易に総称するのも失礼な気がするが今回は分かりやすいのでセレブと呼ばせていただきます)。商売がとても上手な印象だし、サイドビジネスをやること自体が定着しているようだ。

例えば、真っ先に思い浮かぶのは、お騒がせセレブ一家のカーダシアン/ジェンナー一家。この一家は、コスメブランドやファッションブランド、さらには、スマートフォンのゲームやストリーミング番組までもプロデュースしている。他にも、音楽界で最もリッチと言われる歌手のリアーナは、ビューティーブランドやファッションブランドを所有していたり、俳優のアシュトン・カッチャーはベンチャー投資で成功を収めている。

このような多種多様なアメリカのエンターテインメント業界のサイドビジネスには、これからの日本のエンターテインメント業界でも参考になることが多そうだ。その中でもやはり、セレブ自身が唯一無二の存在であり、それ自体がコンテンツのため、その名声や影響力をブランド力に変換しやすいアパレルやコスメなどの小売業が成功を収めやすいようだ。

ラッパー ドレイクとイベントプロモーター会社「Live Nation」がEC企業へ出資
最近私が気になったのは、ラップ界のスーパースター ドレイクとアメリカの大手イベントプロモーター会社であるLive NationがNTWRKに2回目の資金調達をリードしたニュースだ。NTWRKは、音楽やアートに興味関心のあるミレニアル世代やジェネレーションZ(Z世代)をターゲットにしたコンテンツプラットフォームであり、ECサイトである。

NTWRKのプラットフォームを利用して、アーティストの限定商品を制作したり、Live Nationとの提携によって、チケットとアーティストの商品をバンドル販売することもできるそうだ。NTWRKのサイトを覗くと錚々たるアーティストとのコラボ商品が並んでいる。

ミレニアル世代をターゲットにしているだけあって、スマートフォンに特化したUIと、背景で繰り返し流れる動画がとても印象的で、あえて敷居が高い雰囲気にしているように感じる。NTWRKの事例はコアファンを狙い、オリジナル性・希少性に特化したマーチャンダイジングだと言えるだろう。

テイラー・スウィフトのオリジナルブランドECサイト「TAYLOR SWIFT STORE」
もう一つ、アーティストが展開しているECサイトの事例で気になるものがある。それは、アメリカの音楽シーンで絶大なる人気を誇り、成功を収めているアーティスト、21世紀の歌姫 テイラー・スウィフトのECサイトである。

テイラー・スウィフトも最近、自身のECサイト「TAYLOR SWIFT STORE」を立ち上げている。テイラー・スウィフトといえば、昨今のアーティストのなかでもマーケティングに長けていることで有名である。テイラー自身がデジタルネイティブということもあり、カントリー歌手としてデビュー間もないころから公式のMyspace(音楽・エンターテインメントに特化したSNS)アカウントを立ち上げたり、最近ではInstagramでの新アルバムの歌詞を小出しにしていくプロモーションで世間の注目を集めたり、SNS運用や自身のブランディングの方法は、マーケティングに携わる者としては必見だ。

「TAYLOR SWIFT STORE」は今年の4月末にオープンしたようで、8月末に販売予定の新アルバム「Lover」に先駆けてオープンしたのではと言われている。現にECサイトのデザインも「Lover」の世界観を表現しているし、販売している商品も同様に「Lover」一色だ。

前述したNTWRKとは対照的で、商品の販売価格は標準的で、商品のバリエーションも豊富であることから、幅広い層のファンに購入してもらうことを想定しているのだろう。ライトファンも含めた幅広い客層を対象としたECサイトだ。このECサイトが立ち上がることは、SNSでも少し盛り上がったようなのだが、実際のECサイトを見ると至って普通だなと思った。アメリカだから、テイラー・スウィフトだから、マーケティングがうまいから、もっと想像が超えたサイトを期待してしまった。

このようなアーティストによる物販は、日本でもよく見られるが、一年中、定常的に商品が売れることは難しく、ライブツアーなどの前に売上が急上昇するらしい。しかし、ライブグッズに飽き始めているファンへのアプローチは今後厳しくなっていくだろう。

今回のコラムを執筆するにあたって、アメリカのライブの物販事情についても調べたが、日本と同様にライブ会場に併設されている店舗で購入することの方が多いらしい。事前購入・会場受け取りといったシステムは、顧客の利便性と人員削減といった運用面以外に、今後、売上予測・在庫管理の面でも重要になっていくのではと思う。

ライブ会場で使う無駄な時間・労力を削減し、本来のエンターテインメントに集中する時間を増やすことが、今後の興行主の重大なミッションになるのではないか。

muraishi

JECCICA客員講師 村石怜菜

株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。

日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。


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