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「外へ」か「一つ」か。越境ECも多様化のフェーズへ

通り一辺倒では済まされない
越境ECも多様化が進んでいて、店側も通り一辺倒でそれを理解してはいけないという実感を得ています。先日、僕はBEENOSの越境ECに関する倉庫を訪問して、雑然とした感じで驚きましたが、そこに彼らの本質を見ました。彼らは、Buyeeというサービスを展開していて、要は、ECサイトと海外の購入者の間に店を構えるわけです。この店が翻訳的な役目と決済に関する諸々を引き受けて、容易に海外の人が買えるような環境を作ります。

要するにこの仕組みは、海外の人がそれで購入手続きをすれば、BuyeeがそのECサイトに代理購入をするので、お店には、BEENOSが用意した倉庫に納品してもらうわけです。おかげで、売主は日本の買主の送り先に届ける感覚で、BEENOS倉庫に納品すればいいから、楽ですよね。

倉庫のおかげで国の境目は低く
さて、この倉庫なんですけど、語弊を恐れず言えば「雑然としている」。要するに、リユース関係の商品が多いのです。箱の大きさもまちまちで管理も大変。相手が素人だから、入念に検品を行い、そのまま使えるものは棚に、使えないものや他の商品と同梱が必要なものは取り出して、袋や箱に入れます。検品が済んだら、ゲートにそれらを通過させて、サイズを測ります。予め、送料などはBuyeeで把握しているから金額が割り出されて、海外郵便の出荷に備えて、イレギュラーなものを自動化しています。それでいて、精密な機械においては独自の梱包手段を用いて分けています。海外での配送が日本のように丁寧とは限らないからです。

つまり、BEENOSはスタートアップや中小企業、さらにはフリマなどでも、幅広く越境ECを取り組みやすい環境を作り出したわけです。大事なのは、言語も決済もありますが、それ以上にこの物流拠点。そこが差別化要因で一気に成長をしたというわけです。

出荷量の増加によって顕在化しやすい問題
一方で、僕はGlobal-eという会社は、同じく越境ECでありながら視点が違います。Global-eが注目したのは、その国の税金や関税にまつわる問題です。例えば、それぞれの国ごとに異なる納税の仕組みについて、売主の企業がどれだけ知っているでしょう。

アメリカなら「州ごとに」納税義務が発生します。それぞれの州で一定数、売上が立つと、州ごとで納税をしなければなりません。その売れる規模感がかなり大きくなれば、商品が何十州にまたがって売れることもあるでしょう。そうだとして、それを一社で把握し、それぞれわけて、納税するのは現実的ではありません。

また、取引量が増えて、納税の義務が発生した時には現地法人が必要です。海外にいくら可能性があると言っても、いちいち現地法人を作れるでしょうか。

200以上の関税などのデータを振り分け
「HARVEY NICHOLS(ハーヴェイニコルズ)」は、イギリスのロンドンを拠点とする百貨店ですが、国内から国内の販売は、ハーヴェイニコルズ自身が行います。しかし、他国ユーザーがこのECサイトで購入しようとすると、決済画面はGlobal-eに引き継がれ、仕様が切り替わります。 ここが彼らの特徴ですが、決済時に、関税、税金の前払い額が表示されます。

つまり、関税など国ごとのデータをGlobal-eで管理しているのです。それは「200以上の国と地域」ごとの商取引に必要なデータに及びます。この活用がデジタルの真骨頂で、それが自動化され、商品ごとに振り分けられるようにしているのです。

だから、彼らはShopifyなどと連携して、アプリでそれを提案します。そうすれば、自社ECでの商品登録とともに、それらの問題が解決されます。これで瞬時に、その時どの国からでも、アクセスした人が購入しようとする商品に相当する税額を表示できます。
Global-eに任せれば、決済で諸々の金額がわかっているということは、何よりお店は現地法人を持たずに、それら税に関する手数料も各国に対して肩代わりしてもらえます。

越境ECにより生産管理が変わっていく
すると、僕が思うに、そもそもの生産から物流に至る視点が違ってきます。例えば、shopDisney。カタログ自体は殆どの国で全て一緒(日本は違うらしい)。全て一箇所から世界中に配送しています。そういうことが可能になります。

つまり、販売者側が、生産拠点と物流環境さえ、自社で別にそれに相応しい形でカスタマイズしておけばいい。なぜなら、Global-eを加えることで、関税などの部分が整っているから、一斉に出荷できる体制がプラスに作用します。

こうやって、自らの物流や生産のリソースを組み足せば、Global-eの利点を活かし、数の理論で、ものづくり自体の生産性を高くできます。バラバラで作って送るよりも遥かに良い。要するに、越境ECの使い道が違うのだと気付かされます。

最初の話は、「自国にあるものを“ソト”に売る」。後者は「自国を含めて“セカイを一つ”に商売をしていく」。その違いです。同じ越境ECでもその規模感が変わってきている以上、その使い分けが大事なフェーズになってきており、これを理解した上で、事業の拡大に努めるのが吉ということになります。今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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