ShopifyとTikTokの連携
Digital Commerce 360が6月に105の小売業者を対象として行った調査によりますと、小売業者の45パーセントがデジタルマーケティング予算全体の10パーセント以上をソーシャルメディア
に費やしています。全体の61パーセントがソーシャルメディアマーケティングは効果的であると回答しており、特に新規顧客の獲得、ブランドの認知度向上、売上向上の面で効果があると考えているようです。さらに、全体の60パーセントが来年はソーシャルメディアマーケティングの支出を増やすことを計画しているようです。このような背景において、ソーシャルメディアの利用率は、Facebookの82パーセントに対し、TikTokは5パーセントにとどまっており、現在アメリカだけでも1億以上の月間アクティブユーザーのいるTikTokの利用はまだまだ高くはありません。ちなみに、TikTokのレポートによりますと、2020年7月の世界における月間アクティブユーザー数は約6億9,000万人、アメリカでは日々利用のユーザーだけでも5,000万人を超えており、現在もっとも旬なソーシャルメディアといっても過言ではないでしょう。
一方、ソーシャルコマースの言葉が使われ始めてからすでに7~8年ほど経ちますが、企業は消費者の購入プロセスにおけるソーシャルメディアの潜在能力を徐々に理解し、ソーシャルコマースがEコマースの次のフロンティアであると認識し始めているようです。事実、クラウドベースのマルチチャネルコマースプラットフォームとして有名なShopifyは、Facebook、Instagram、Pinterest、YouTubeといったソーシャルプラットフォームとの連携を行い、マーチャントのオーディエンスリーチを大幅に拡大しています。例えば、今年の5月に発表されたShopifyとPinterestとの統合では、ShopifyのマーチャントがShopifyと統合されているPinterestアプリから商品カタログをアップロードし、在庫状況を更新し、またPinterestアカウントにタグの追加、Pinterestプロファイルにショップタブも表示できるようになっています。さらに、ShopifyダッシュボードからPinterestのリストを編集することも可能です。このShopifyが、最近TikTokとの連携発表を行い、Shopifyの175ヶ国、100万を超えるユーザーがグローバルで大人気となっているショートビデオのオーディエンスにリーチ可能となり、新しい顧客開拓が期待されています。
Shopifyは、開発者がShopifyと連携したアプリケーションを作成するためのAPIと、そのアプリケーションを販売するShopify App Storeも提供していますが、今回発表されたShopifyとTikTokとの連携では、このShopify App StoreにあるTikTokアプリをダウンロードし、TikTokを販売チャネルとして追加、TikTok For Businessアカウントの作成、接続により、Shopifyダッシュボードから直接TikTokマーケティングキャンペーンビデオの作成、実行、最適化ができるようになります。このキャンペーンビデオは、性別、年齢、ユーザーの行動、動画のカテゴリーなどでオーディエンスをターゲット化でき、ビデオから商品購入の際はShopifyストアに移動します。また、マーチャントがすでに手元にある画像や動画を使用できるように、事前に設計された広告用のテンプレートも提供されています。
さらにShopifyとTikTokは、TikTokユーザーがビデオやアカウントプロファイルを通じてShopifyのマーチャントやその商品を簡単に閲覧し、TikTokアプリから直接購入できるようにする新しいアプリ内機能の追加など、今後数ヶ月にわたり新しいコマース機能をテスト、提供するために協力していくとのことです。
TikTokチャネルは現在アメリカのみで利用可能ですが、来年初頭にはヨーロッパや東南アジアの一部でも利用可能になる予定とのことで、日本でのShopifyとTikTokの連携が待ち遠しいです。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。