人が事業を作り、その事業が企業を形成する
少し前に「企業側からみる人の採用」について書かせていただいたコラムは、意外にも”なるほど”の声をいただいたので、今回はもう少し広げてみます。
採用に関わる「面接」についてです。
ECに特化した内容ではないですが、EC企業関係なく大切なことだと思うのでなんらかの参考になればと思っています。
私は”人が事業を作り、その事業が企業を形成する”と確信しています。人の集まりが組織、その組織が創り上げるものが事業で、事業の原動力が企業。その「人」を採用するきっかけが採用面接です。
近年は対面が減り、リモートが当たり前になりました。
①企業側が気にすることは、
リモート面接は対面と違ってメモを見ながら話ができたり、事前情報を身近に置けるので真意がはかりづらい。特に私が面接官をする場合、何を話しているかより問いに対する回答の反応性を見ることが多いので瞬間的な対応力が見えづらいと感じます。
②面接される側が気にすることは、
なかなか訪問できないので社風やオフィスのリアル状況がわからない。今までの対面だと、会社に訪問して会議室に通されて面談終わって出るまで、その会社におけるかなりの情報を得ることができます。どのように社員が働いているのかを垣間見れるので、それがないのは不安材料の一つです。
また、採用面接は、採用される側だけでなく、企業側も面接されています。
ここを理解していない人事担当者は結構います。面接する側の力量不足はあまり表に出ないものです。今の時代、採用する側が優位なわけでないです。優秀な人間は逆面接をしてきます。「なぜあの人は来てくれなかったんだろう・・」という話をよく聞きますが、企業側が不採用にする理由と同じです。魅力的に企業を伝えられなかったからです。
私はEC系スタートアップ・ベンチャー企業に勤めることがほとんどなので、その中でよく見かけるのが「じゃ、お前一次面接やっといて」です。これ、とても危険です。組織が整い、人事の体制がしっかりするまではボードメンバーがどんなに忙しくても一次から面接をするべきです。”人は人を判断することが苦手です”
経験と責任のみがそれを打破します。せっかくの縁と人財をなくす可能性が高いです。
とはいえ今年一番びっくりした事例は、
人材エージェントから聞いた、「採用される側のマインド」でした。
エージェントが提供する事前情報や企業HPすら見なくて、面接して初めてその会社のことを知る。世間で超優秀と言われる人でもコレが多いと聞いて、それは優秀なのか?と思ってしまいました。ただの”おごり”ではと。
企業側は事細かに説明しなくてはならなく、逆面接みたいな環境になることも多々。特にEC系のスタートアップ企業だと経験豊かな方にJoinしてもらいたいから一生懸命説明しますが、正直なんでだろ・・って思ってるそうです。
私もご紹介を受けて採用面接を受けさせていただくケースがあります。受けるからには失礼にならない程度には事前情報は頭に入れます。その過程で素敵な社風やビジネスモデルだなと理解が深まり、面接前にその企業が好きになったりもします。その程度でも準備をしていると、当日ビジネス談義に発展したり、逆にお悩み相談を受けたりするので、面接とは別の有意義な時間が生まれます。採用とは別の縁が生まれます。
◯雇った側は活躍できる環境を作ること
◯雇われた側はアンテナを合わせること
双方で協力しなければ絶対に採用効果は上がりません。ベンチャー企業でよくあるのが採用されたけどほっておかれる事。入社後の制度も整っていないからよくある事例です。これは機会損失以外の何者でもない。コミュニケーション強者なら解決できますがそうでない人も多い。忙しいし時間もないのはわかりますが、せっかく来てほしいと思って採用した人財。即日メンターを付けて早く会社に馴染ませるよう尽力することが本当に大切だと思います。
”人事はファン作り”
採用段階と退職段階は特にそれを意識した方がいいと思います。採用しなかった人も、退職してしまった人も一歩外に出れば伝達者です。あの会社は良かったなとなれば勝手に良い話が広がり、無償のPR活動になります。この効果は思っているよりも大きいです。
企業フェイズにもよりますが、特にスタートアップクラスだと人事を外部に任せるケースが多いですが、タイムロスが生まれやすく、情報伝達が異なった方向になる場合があります。人がいなくコストもかけられない環境は十分理解できますが、スタートアップ企業に勤めてきた私からすると、採用だけは社内で行った方が良き結果になると、私は思います。
JECCICA客員講師 恩蔵 優(おんぞう まさる)
得意分野 / 大中小規模コマース運営、事業創造、越境EC、グローバル物流、HRBP人事
1976年生まれ、日本大学法学部卒業。 起業やIPOを複数経験し、スタートアップから大企業まで第一線で戦い抜いてきながら小規模ながら個人投資家としての側面も持ち合わせる。
(株)ネットプライスをきっかけに2005年からEC界に入り、ITに物販の知識を組み込み、バイヤー及びマーチャンダイザーとして注目される。
その後広告代理店・アパレル・EC・グローバルSNS企業等のMGR・CxOを歴任。
オンライン・オフライン関わらず20年以上モノに関わり、国内仕入れから越境ECまで熟知するマルチプレイヤー。