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デジタルシフトで考えるべきは縦割りからの脱却だ

魅力的に映らない物流の理由
ネット通販に切ってもきれないのが物流だし、デジタルシフトの中で、物流をビジネスに取り入れて、飛躍する所も少なくないが、一方で、物流をコストセンター的な捉え方しかできずに窮地に追い込まれる企業も少なくない。
 
物流に詳しいリンクス代表取締役小橋重信さんは、「お店にしても企業にしても、説明をする中で、漠然とした課題感とコスト削減くらいしかない。物流に対して関心が薄い事をよく感じる」と話す。

彼は元々アパレル寄りの物流の現場に携わり、知見を生かして多くの企業の物流現場でコンサルタントを行う。ただ、その取引先では、物流といえば「ヤマト運輸でしょ?佐川急便でしょ?」程度の認識しかないと頭を悩ます。物流がビジネスにもたらす本質的な価値に言及されることがないと指摘しているのだ。

価値はいかにして生まれるのか
物流をビジネスに取り入れ、新たな可能性を模索する企業は、何が違うのか。例えば、最近、僕が注目した企業でいえば、ジェイフロンティアがある。この会社は9月1日から、薬剤師による電話での服薬指導後、最短30分で処方せん薬を届するデリバリーサービスを開始している。

代表取締役 中村篤弘さんの話によれば「今、オンライン診療が伸びつつある。今、こうした薬を必要とするのは、患者だけでなく介護が必要な家族を含めて考えれば、数多い。自らが病院に赴くことなく薬が受け取れることの価値は理解される」としている。

また、昨今、オンライン診療が浸透しそうに思われるが、ツールの提供はされていても、そこには病院側に導入費の支払いが必要だとし、クリニックのうち赤字を抱える所も少なくない中で、その違和感を感じているのだという。

中村さん達は入り口を広げて多くのクリニックが無償でデジタル移行できる環境を整え、市場拡大する中で、マネタイズを配送部分などで、取り返せば成立すると考える。つまり、これらとセットで物流を見ることで、物流の価値を見出している。

デジタルシフトに活きるネット通販の知見
かく言う、ジェイフロンティアは医療関係ではない。ECサイト、ネット通販の問屋、メーカーを起源にもつ。これらの発想は医療業界では生まれづらく、ネット通販の知見を生かしてこそ、机上の空論にならず、地に足がついた提案ができる。

他にも、レキピオという会社が欲しいものをアプリ一つで、30分以内に取り寄せるアプリ「 QuickGet (クイックゲット)」を9月16日、リリースした。完全にデリバリーを前提にしたビジネスだ。お店で買うというより、ものが直接送り届けられる感覚。彼らはそれをデジタルコンビニと表現する。

これも要は「物流」だが着眼点は外にある。ここは推測の域を脱しないが、過去で言うコンビニの売りを今に活かすもの。コンビニの売りである「POSシステム」は「何が」「いつ」「何個」売れたのかという購入データと店員の主観的判断による性別・年代などの属性データ。

対して「QuickGet」では「誰が」にあたる個人情報と購入データを紐づけられるので、詳細な顧客属性や購買サイクル等のデータに基づき、マーチャンダイジングが可能となる。メーカーなどが商品に関するデータでマネタイズする為に、物流を利用していると言って良いのではないか。

一度、分解して考え再構築して、価値が生まれる
「物流がビジネスにもたらす本質的な価値」というのは、僕はここではないかと思う。物流を何かとセットで考えることで、物流単体のコスト計算だけではない、新たな魅力を生む。

冒頭、触れた小橋さんが「物流がビジネスにもたらす本質的な価値」にこだわる思想の原点としてこんな話をする。物流会社に勤務する時代に提案を受けた「ZOZO USED」もとの「クラウンジュエル」での経験だ。

例えば、富裕層の人たちやファッション好きの人の家の中を見てみると、普段利用されていない、ブランド物などが数多く存在していて、多くがそのまま眠っている。だから、眠った宝を引き出し、表舞台でまた日の目を見させよう。そんなプレゼンシート一枚。

要は、それ専用のサイトを作り「CtoBtoCのビジネスモデル」を模索し、USEDだけに、物流での差別化も重要だとして、話を持ちかけられた。最初は片隅でやられていたその事業はみるみる成長したと振り返る。

だから、外に出て俯瞰的に見た中で、物流を眺めてみると、真に物流の価値を伝えられるのではないか、と考えるようになったと。

僕は、お店においても同じじゃないかと思う。単純に物流を「送料無料」のなかで、コストセンターと捉えているうちは、真に物流を利用しているとはいえない。

自分達の持つ個性や可能性を、どの物流会社と組んで、どう活かすかを倉庫まで訪問して、個別で考え、検討するところから、全てが始まるのではないかと思うのだ。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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