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Amazonのふるさと納税参入について思うこと

Amazonがふるさと納税に参入
Amazonがふるさと納税に参入するとの報道がありました。現在「楽天ふるさと納税」「ふるなび」「さとふる」などたくさんのふるさと納税サイトがあり、消費者には多くの選択肢があります。既に現時点で多くのプレーヤーが存在ますので、ECの巨人Amazonが新規参入することで、より競争が激化することが容易に想像できます。ライバルの楽天が参入していますので、Amazonの新規参入は自然な流れと言えるでしょう。もとより、慈善事業ではありませんのでAmazonとしてもこれは儲かるなというそろばんをはじいた上での新規参入ではないでしょうか。

納税受入額は1兆円を突破しそうな勢い
2022年度のふるさと納税受入額は9,654億円です。同金額は年々増え続けていますので、この勢いだと間違いなく2023年度は1兆円を突破するでしょう。

ですが私が着目したいのは返礼品の調達費用です。
2023年は2,687億円となっています。返礼品は寄付金額の3割以下と定められていますので、9,654億円に対して2,687億円というのは計算上妥当な数値です。とすれば、2023年に仮に納税受入額が1兆円を突破するとしたら返礼品の調達費用は3,000億円に達する可能性があります。3,000億円というとてつもない大きな金額が動いているということです。

ふるさと納税のメリットとは?
ふるさと納税に関しては、税流出の影響が大きい東京都は正式に制度見直しに関する見解を表明しています(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/furusato/index.html)。これは難しい問題ですので、このコラムで扱う題材としては適しません。そこで税金に関する議論は脇に置き、ふるさと納税のメリットを1点挙げるなら、地方の食材/食品関連の事業者にとっての売上獲得という点を挙げたいと思います。

地方創生は日本の国策です。返礼品の大半は食品であることは言うに及びません。3,000億円のうち、少なくとも2,500億円以上は食材/食品ではないでしょうか。これだけの多くの金額が国策を通じ地方の事業者に行きわたっているため、経済効果はとても大きいと思います。ある意味地方創生の成功例と捉える方もいるのではないでしょうか。

返礼品調達は意味的にはEC
返礼品の調達は、ほぼふるさと納税サイトで行われているものと推測します。とすれば、これはいわばECと言えないでしょうか。

つまり推定で2,500億円もの食材/食品がECによって購入されていると捉えることができます。経済産業省の電子商取引市場調査では、2022年の「食品、飲料、酒類」の市場規模は2.75兆円です。ふるさと納税による返礼品調達費用はこのなかに含まれていませんので、単純計算でEC市場規模のうち10分の1程度の規模に相当するということです。仮にこの金額をEC市場規模に含めるとすると、3兆円の大台に乗る計算になります。

ふるさと納税制度がなくなったら消費者は購入するか?
別の見方をしてみましょう。前述のようにふるさと納税によって地方の事業者が潤うのは良いことですが、それにより純粋なECの売上が影響を受けているという見方はできないでしょうか。消費者が返礼品を入手したいと考える動機は、ふるさと納税による減税分と返礼品の経済価値によるものです。すでにこの制度は定着化していますので、今さら廃止になることは想像できませんが、もしも仮にこの制度が来年廃止になったとしましょう。

そうした場合、これまで有名な牛肉だの海産物だのを目当てにせっせとふるさと納税を行っていた方々は、それに代わってECを通じてそれらを購入するでしょうか?私はそうは思いません。

地方産品の良さをECにつなげる流れをどう作るか?
返礼品競争により制度そのものを問う見解があるなか、この制度はこの先どのように変化するか見通しが分かりません。制度そのものを否定するつもりは全くないのですが、私には何だか制度ありきに地方産品が購入されている様がどうもしっくりきません。制度云々ではなく、地方産品の良さに能動的に消費者が気付き、それをECで購入するという流れを作り出せないものかと個人的に思っています。

Amazonの新規参入が本当であれば、返礼品競争に拍車がかかることは間違いありません。ECの観点からふるさと納税制度を捉えると、このような見方ができることから、思い切って本コラムを書いてみました。様々な見解を頂ければ幸いです。

ふるさと納税受入額および返礼品の調達費用の推移(単位:億円)


出所:「ふるさと納税に関する現況調査等」(総務省)を基に作成

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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