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DEWKSとオーガニック男子

ひと昔前まで、商品開発をする際に誰もが口にしていたターゲットは「首都圏で働く30代~40代の女性、可処分所得の高いシングルまたはDINKS」でだったように思います。では何故この層が注目されてきたのか?というと、それは「情報感度」と大きく関係しています。「消費」という観点から考えたとき、従来の情報感度は「新しさ」に強く振れていたように思います。ところがどうでしょう?ここ数年、多様な価値観が生まれ、新しさより「利便性」や「共感性」に重きを置く層が一定数現れてきました。今回はこの2つの価値軸を中心にトレンドリーダーとなる群を検証していきたいと思います。

■DEWKSと利便性消費
まずはすでに表層化している利便性消費から説明していきましょう。この消費をけん引する代表ユーザーはDEWKS。Double Employed With Kidsの頭文字をとった造語で、従来の共働き子育て世帯という概念を一歩進め、夫婦がともに存在を認め合い、一緒に仕事も生活も育児も充実させ、楽しもうという夫婦のスタイル。妻は仕事も家庭もあきらめることなく両立し、夫は積極的に家事・育児に参加。育児休業・保育所などの制度・施設を上手に利用するなど、ワークライフバランスのとれた生活を目指す層を指します。そんな彼らにとって最も足りないのはお金やモノではなく時間であり、この層の増加と比例するように、時間をお金で買うという消費スタイルが顕著にみられるようになりました。国勢調査によれば、2015年段階で、夫婦と子供からなる世帯は全体の27%となる1428.8万世帯。また野村総合研究所が毎年実施している「生活者1万人アンケート」2015年夫婦の就労形態構成データよると、55%が共働き世帯であることからDEWKS層は785.8万世帯ほどと考えられ、もはやこれはニッチとはいえず、マスマーケットと呼んでも良い数字です。更に共働き世帯の21.5%、実に168.9万世帯が世帯年収1000万円以上であり、この層が消費リーダーとなっていくと言っても過言ではありません。

この層にいち早く目をつけ商品開発やプロモーションの戦略化をしているのがPanasonicです。白物大型家電のターゲットをDEWKSに定め、CMでは俳優の西島秀俊氏が扮するカッコイイパパが、子供と一緒に残業中の妻を待ちながら、ビストロという最新型の電子レンジで料理をしていきます。
ぜひ野村総合研究所の調査結果をじっくり読んでいただきたいのですが、この世代にとって大切なのはブランドや価格よりも「利便性」。つまり時間をお金で買っていることがわかります。通販業界で考えると、オイシックスが火付け役となったミールキットのヒットは、まさにこの層をターゲットとした商品であったことが所以です。今後しばらく「時間」「利便性」をキーワードとした消費スタイルは続いていくことでしょう。またもう少し深いところでデータを読むと「子供との時間にもっとリソースを割きたい」という思いも透けて見えてきます。ここにも大きなチャンスマーケットがあるのではないかと思っています。

■オーガニック男子と共感型消費
長年仕事をしてきても、時々データから思いもかけない新しい傾向を発見して興奮することがあります。今、私が最も関心を持っているマーケットは、その名も「オーガニック男子」。ここ数年、食関連及び地域活性化のテーマでイベントや講演会を開催すると、この層が増えてきたなぁ…という実感があります。20代30代の熱き若い男子たち、みなさんの周囲にもいませんか?
従来この層は、消費のターゲットから最も遠いとされ、多くのマーケティングの対象から外れてきました。しかし今、この層に注目すべき傾向が見られます。2017年オーガニック白書によれば、20代男性のオーガニック食品の購入経験は28.6%と最も少ないですが、週に1回以上のリピート購入となると31.9%と、どの属性よりも高いのです。また、2番目に高いのは30代男性で28.1%、次いで60代女性の22.8%と続きます。一般的にオーガニック比率が高いのではないかと考えられる女性層よりも、20代、30代男性のリピート率は高いのです。流通サイドからみるオーガニック食品は価格や健康安全面ばかりが取り上げられますが、何故それを選ぶのか?消費者に明確な意思があることこそが最も重要な点です。つまり情報接点を増やし、共感を得ることができれば、新しい層を育てることができると、この事実は教えてくれます。

インターネットにより、情報があふれる現代、モノの背景や、ストーリー、作り手の想いを知って、選べる時代は身近になりました。ここでは詳しく述べませんが、クラウドファンディングの認知・利用の意向や、エシカルに関する意識調査でも、共に20代、30代の男性が多世代に比べて高いというデータが出ています。つまり次世代型の「共感型の消費」は、この層の特に男性がリーダーとして価値を創造しけん引していくのではないかという仮説を立てることができます。現在、彼らのライフスタイルを調べるための調査を設計中ですので、また実施できましたら、何かの機会に報告させていただければと思います。

情報インフラの変化は社会インフラの変化をもたらし、私たちのライフスタイルを大きく変えました。

また、そのことによって消費のスタイルも当然ながら変化しているということに気づき、商品構成やプロモーションの在り方を変えていかねばなりません。決してテクニックではなく、マーケットを正しく理解し、自社の戦略化していくことがECショップにとっては重要です。流通業は業態変化業ともいわれます。消費者のこの大きな変化のタイミングをどうか見逃さず、選ばれ続けるショップづくりを推進していただけると幸いです。

<参考>
*野村総合研究所「生活者1万人アンケート」
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/report/cc/mediaforum/2018/forum272.pdf?la=ja-JP&hash=11CCF832BC6EC6481392389F6BBD74B4D12C51A2

*一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン2017年オーガニック白書」
http://ovj.jp/hakusho

*総務省 「FinTechの認知度・利用率・利用意向」
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc131130.html

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 北村 貴(きたむら たか)

株式会社グロッシー 代表取締役


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