VOCから、売り場を見直す
前回は、購入前のVOCを拾うことについて書きました。購入前のお客様が何に迷い、何が分からず、どこで立ち止まっているのか。その声には、アクセス解析だけでは見えにくい情報が含まれています。
今回は、その声を実際の改善にどうつなげるか、もう少し現場に近い話をしたいと思います。
私たちがECサイトの改善を考える際、参考にするものの一つが前回お話ししたVOCです。例えば質問一つをとっても、似た質問が続いているときには、回答内容だけではなく、「サイト側にも何か改善できることがないだろうか」と見直すことがあります。
実際に、VOCをきっかけに、小さな変更を行った事例があります。
機能はあるのに、使われていなかった
ある通販サイトで、登録情報の変更方法など、マイページ内ですでにできることについての問い合わせが何度か発生していました。「説明が足りないのかな」と考えながらサイトを確認してみると、必要な機能自体は用意されています。
そこで気になったのが、スマートフォンのヘッダーでした。
画面上部には、メニュー、マイページ、カートの三つのアイコンが並んでいました。ただし、いずれもアイコンだけで、文字による説明はありませんでした。運営側は毎日のようにサイトを見ているので、三本線を見ればメニュー、人型のアイコンを見ればマイページ、カートの形を見れば買い物かご、と自然に理解します。
ただ、お客様にとっても同じとは限りません。特に問い合わせ内容を見ていると、マイページの中に用意されている機能まで、そもそもたどり着けていない方がいるのではないかと考えました。
そこで、三つのアイコンそれぞれに、「メニュー」「マイページ」「カート」と日本語を加えてみました。変更自体は、それだけです。
その後、クリック率を比較すると、メニューは約5.5%から6.8%、マイページは約1%から3.5%、カートは約1.3%から1.55%へ上昇しました。特にマイページは、約3倍以上まで伸びています。
もちろん、この数字だけですべてを断定することはできません。ただ、アイコンの意味を文字でも伝えたことで、それまで存在に気づいていなかった方が機能を認識し、利用するようになった可能性はありそうです。
今回のきっかけになったのは、「アイコンが分かりません」という声ではありません。「登録情報を変更したい」といった、もっと具体的な問い合わせでした。その問い合わせに回答するだけなら、変更方法を案内して終わりです。
でも、「なぜ自分で変更できなかったんだろう」と少し遡って見てみると、説明不足ではなく、そもそも入口が伝わっていないのではないかという別の課題が見えてきました。
VOCはそのまま答えではない
同じことは、ほかの声でもありそうです。
例えば、「サイズを教えてください」という質問が続いた場合。サイズ情報がなければ追加します。ただ、すでに掲載されているなら、場所が分かりにくいのかもしれません。表は見つかっているけれど、数字だけでは実際の大きさを判断できない可能性もあります。
「いつ届きますか」という質問も、配送情報がないとは限りません。情報の場所が遠いのか、表現が複雑なのか、自分の場合に当てはめられないのかで、改善方法は変わります。
問い合わせを見ながら、最近は次のように分けて考えることがあります。
- 情報がないのか。
- 情報が足りないのか。
- 書いてあるけれど分かりにくいのか。
- そもそも見つけられていないのか。
- 情報は理解できても、自分では判断できないのか。
今回のアイコンの事例は、この中の「見つけられていない」に近いものでした。
まずは最近の声を並べてみる
特別な分析から始めなくても、直近1か月程度の問い合わせを並べてみるだけで、意外と傾向が見えてきます。
商品、サイズ、配送、在庫、返品、会員情報、使い方など、大まかに分類して、似た質問が続いているものを探します。一つ見つかったら、その問い合わせに対する回答を考えるだけでなく、お客様と同じようにスマートフォンからサイトを操作してみます。
「自分だったら、この情報をどこから探すだろう」
「初めて来た人にも、このアイコンの意味は伝わるだろうか」
「目的の情報まで迷わず進めるだろうか」
そんな見方をすると、運営側にとっては当たり前になっていた部分に気づくことがあります。そして、何か変更したら、できる範囲で数字を見ます。
今回であれば、問い合わせをきっかけにヘッダーを変更し、その後にメニュー、マイページ、カートのクリック率を確認しました。「良くなった気がする」で終わらず、実際のお客様の行動が変わったかを見ることで、次の改善も考えやすくなります。
声を拾ったら売り場へ戻す
もちろん、すべてのVOCをサイト改善につなげる必要はありません。一人ひとり事情も違いますし、一件だけで判断すると、かえって分かりにくくなることもあります。
ただ、似た声が何度も続いているときは、一度その背景を見てみてもよさそうです。声を届けてくださった方の後ろには、同じところで迷いながら、問い合わせまではせずに離脱した方もいるかもしれません。
前回は、購入前のVOCを拾う入口についてお話ししました。声を拾ったら、次は「なぜこの声が生まれたのか」を見てみる。そして、できそうなところから売り場に戻してみる。今回の改善は、アイコンの下に日本語を数文字加えただけでした。それでも、とくにマイページの利用は大きく変わりました。
VOCは、集めるだけでも、回答するだけでもなく、次の改善に戻すことで生きてきます。
最近よく聞く声を一つ選んで、そのお客様がどこで迷ったのかを、自分たちでも辿ってみる。そこから、小さくても効く改善のきっかけが見つかることがあります。