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2026年 年頭所感 小松英樹 変革を超えて、新たな越境EC物流の時代へ

新年明けましておめでとうございます。新春を迎えるにあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。

昨年は、越境EC物流にとって激動の一年でした。特に日本の越境EC市場は、台湾や香港、韓国などアジア近隣諸国への販売が拡大し安定的な成長を遂げた一方で、最大市場の一つであるアメリカにおいては関税政策の大幅な見直しにより市場環境が大きく変動し、越境EC事業者や物流業者にとって厳しい試練の年となりました。

トランプ政権は昨年夏、アメリカの輸入における「デミニミス制度」(少額輸入品の免税措置)を廃止し、越境ビジネスの重要な要素であった免税環境は失われることになりました。これに伴い、小口貨物であっても関税の支払いが義務付けられた結果、越境EC物流の現場では大きな混乱を招きました。日本郵便が米国向けの商用貨物の受託を停止する事態は業界に衝撃を与え、エクスプレス大手業者での通関遅延や誤課税など複雑な問題も依然として残っています。

その一方で、年末のブラックフライデーを迎える頃には、多くの越境EC事業者が新ルール下での徴税体制を急速に整備し、需要は回復、一部ではむしろ前年を上回る動きも見られました。これまでの保護された環境から、一般貿易のルールに適応しながら持続的に成長していく「ニューノーマル」時代の幕開けを感じさせる一年でした。

2026年は、こうした変化を踏まえた上で、越境EC物流における新たな展開が期待されます。まず、関税課税の強化傾向は米国のみならず欧州や東南アジアにも波及し、タイやEUは小口貨物の免税撤廃を進めており、日本も個人輸入品の低税率制度見直しを検討しています。これにより、各国の税制リスクを正確に把握し、効率的な課税対応体制を整えることが越境EC事業者にとって不可欠となるでしょう。

また、物流コストの上昇も避けられない現実です。人件費の上昇や配送人手不足により、主要エクスプレス業者が2026年度の料金値上げを要請するケースが多く、特にラストマイル配送における遅延リスクは高まっています。さらに、日本郵便の低価格で輸送できる小型包装物(書留)サービスが2025年末で廃止されたことも物流戦略の見直しを迫る重大な出来事です。これらを踏まえ、EC事業者はコストとサービス品質のバランスを取るため、物流効率化やルート多様化、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に注力する必要があります。

販売地域の拡大も顕著であり、従来の東アジアや北米中心からカナダ、メキシコ、オーストラリア、さらには欧州・中東市場まで幅広く成長しています。これに伴い、地域の法規制や物流環境に対応するフレキシブルな体制構築が重要です。特に現地在庫を活用したハイブリッド販売モデルが増加し、直接配送との組み合わせにより顧客満足度の向上とコスト抑制の両立が求められます。

さらに2026年は税関手続きのデジタル化が進むことで、越境ECでの海上輸送活用が進むなどの効率的な物流スキームが期待されます。これらの技術革新は、中長期的な成長基盤を支える重要な要素となると考えます。

最後に、我々が直面する環境変化のなかで最も重要なのは、常に柔軟な発想と迅速な対応力を持ち続けることです。変化の激しい市場で成功を収めるには、日本製品の魅力を最大限に活かすと同時に、現地消費者や規制の多様性に対応した戦略を練り、効率的な物流体制を構築することが不可欠です。

以上のように、越境ECビジネスを取り巻く環境は日々変化していきますが、今年もこのマーケットで微力ながら、業界発展の一助になるべく邁進して参りたいと思います。

最後になりましたが、本年がEC業界の皆様にとって、良い年となります様 心よりお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 小松 英樹


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