今、改めて考察するEC業界の属性について
コロナ禍により先行きが不透明な日々が続いておりますが、コロナ禍によりさらに市場規模が拡大傾向にあるEC業界は、様々なスタイルで進化しているようです。
今回はEC業界の中での様々な事業ケースに着目し、現状や課題、そして今後の見通しといった視点にフォーカスしてみたいと思います。
改めて考察してみますと、大きく5つぐらいの属性に分けることが出来そうです。
EC専業の企業
EC黎明期~ITバブル辺りまでは、とにかく多くのEC専業企業、事業主が出現していたように思います。 今となってはEC運営企業、事業主としては先駆者であるため、これまでに培ってきた運営ノウハウを武器に、時代に合わせた柔軟な運営スタイルを実現しているように思います。コロナ禍の中、ここで明暗を分ける項目としては、生の顧客リストをどれだけ持っているか、多チャンネル戦略を採択している場合は、自社ECサイト等での売り上げ構成比を考慮し、出店料や手数料等をどれだけ削減できた形で売り上げ拡大できているかといった答えが出始めているタイミングなのかなとも考えます。 新たな取り組みとして、EC専業の企業、事業主でありながらも、リアルマーケティングにて、実店舗展開や、ポップアップストア、ガイドショップ等のリアルチャネル展開を実現化しているケースを多く見かけるようになってきています。
実店舗連動型EC事業
これからの時代にマッチしていくであろうモデルであり、まさに地方企業や事業主が元気いっぱいに事業拡大を行っていけるチャンスであると言えます。 オムニチャネルからOMOへの進化、DX推進といった動きの中で、実店舗運営をメインとし、売り上げ構成比を十分に計画した上でのEC事業展開を拡大していく企業、事業主が多く存在、潜在しています。 事業を継続していく(拡大していく)為には、いつの時代も「質の高い顧客リスト」です。 まさに、オンラインとオフラインの垣根を超えた形となる、新たな時代のクロスマーケティング戦略の本格的な幕開けがこのコロナ禍によりスタートしたのではないかと思います。
企業のEC事業部
ECマーケティングや現場を知る有能な人材確保に苦戦を強いられている感があります。できる人材ほど定着率は低いように思いますし、リモートワークが日常化した今となってはEC業界を知るディレクター的な存在が不在であると、日々の「裁き」に支障が生じ、EC事業部に携わる人材のマネージメントにも限界が生じていき、風通しの良い組織はおろか、ネガティブ要因が蓄積していくだけの組織になってしまい、売り上げどころの話しではなくなっていく状況を生みかねません。 共通点として多く見受けるのですが、企業本体とEC事業部にある見えない大きな壁を壊すのは、まさにこのコロナ禍の今がチャンスといえます。
EC運営メインに事業転換していく企業
このコロナ禍により国が予算を捻出し実現した、「事業再構築補助金」の影響などにより、新しい事業の再構築としてEC専業化を狙う企業や事業主が増加しているように思います。
EC事業者としては後発組となるので、すでに取り扱う商材においてシェアを持っているECプレーヤーといった競合から、いかにしてシェアを奪っていくかが大きな課題です。 経験豊かな運営ノウハウも持ち、成熟されつつあるスキームを持つ先駆者に対し、あえてレッドオーシャンからのスタートは、仮に「事業再構築補助金」が採択され、スタートアップ資金が確保されたとしても、用意周到な事業運営計画が必要となります。
訳ありECプレーヤー
こちらは運営者側として何らかの訳(理由)があり、EC運営、活用を行っているケースです。実業務として、スポット的な感覚で在庫圧縮化や、現金化を行うことや、副業(または就職活動と並行してなど)として、せどり(転売)やCtoC、オークションサイト活用などで売り上げ獲得を狙う人達です。
単純に海外サイトなどで「売れそうな」「利益が取れそうな」「トレンドになるっぽいもの」「最近国内市場で出現しだした」といった商材を小ロット購入し、俗にいう「転売」を行う人達が身近な環境にいたりするのを耳にすることがあります。
マーケティングの練習や分析材料として考えるのであれば、かなり前向きではありますが、
コロナ禍による有名な失敗事例としては、「マスク」や「消毒液」が挙げられます。
商品への愛はもたず、「売れれば、儲かれば何でも良い」という概念を持っている場合が多く、仕入れの目利きが効かなくなるとすぐさま在庫地獄や、売れる商品があるにも関わらず、仕入れできない状態になると言った状況に陥ります。
逆に今まで趣味として培ってきたノウハウが短期で活かされるケースも見受けます。趣向系の高い趣味や、知識を持つ方、実は強い仕入れ先を持っていたりする方達は、今をしのぐ為の行動が、実はこれから先のビジネスチャンスに繋がる活動であるといった場合も見受けられます。 現在、全国的にこのようなモデルの個人展開で月商数百万といったECプレーヤーが多く存在するようです。
ニッチな市場でニッチ顧客に対して、ウォンツやニーズのある商品を常に提供できるスタイルを確立し始めている方達は、逆にコロナ禍によって増加していると言えます。
最後に、いくつかの属性についてフォーカスしてみましたが、ECは販売、そして事業としての売り上げ拡大の手段の一つであることに変わりはありません。
最新のテクノロジーや、新たな販売手法だけに目をとらわれすぎず、「コロナ禍が収束したとき、その時自分たちはどうなっているか」を一つのテーマに計画することが必要であると考えます。
理事【小林厚士のプロフィール】
地方型Eコマース経営・運営総合的アドバイザー
主な経歴
1996年:建設業にてCADとの出会いによりPCへの可能性に目覚め転職を決意
1997〜99年11月:自作PC制作、販売、環境構築、法人向けトレーナー
サービスを展開
1999〜05年3月:ネット販売会社設立 2箇所の海外支店をハブに、最大7店舗のネットショップ運営展開を行う
2005年4月〜:アイズモーションウェブコンサルティング設立
2007年6月:株式会社アイズモーション設立
2013年:WEB・EC及び経営コンサルティング支援を行い現在に至る
・99年より楽天市場出店を期に、最大7チャネルのECサイトを運営
楽天店舗では02年楽天ショップオブザイヤースーパーオークション賞受賞
・長野県・新潟県・富山県・山梨県登録専門家(IT部門)
長野商工会議所経営革新支援アドバイザーセンター 登録専門家
経済産業省中小企業支援ネットワーク強化事業 認定専門家
物販で培ったマーケティングノウハウを活かし、経営視点かつ現場最優先の実践的なコンサルティングを得意とする。