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やってみよう!ボイス・ファースト体験

■発売から2年半、Amazon Echo の今

2014年11月に米アマゾンが音声アシスタント付きスピーカー「Amazon Echo」を発売してから、約2年半が経ちました。アマゾンはその販売台数を公表していませんが、アメリカの著名な調査会社 Strategy Analytics は、Amazonの音声アシスタント付きスピーカー(Echo,Tap,Dot ) が2016年末までに約600万台、販売されたと伝えています。
実際に、米国の知人の家には、リビングに Amazon Echoが置かれていて、音声アシスタントの名前である「アレクサ!」と一声かければ、すぐに反応して「いつものピザを今すぐ届けて」「タクシー呼んで」などと声で命令するだけで、PCやスマホを操作すること無くオーダーを完了できます。他にも「部屋の照明を落として」「2階の息子を起こして」「カーテン締めて」などの近未来的な機能なども搭載していることから、日本のメディアでは「未来が来た!」などと少々あおりぎみな記事タイトルも目立ちます。

図:Amazon Echo

■意外に使われる「商品やサービスの購入」

一方で、この2年半の間には、実際にユーザ達が、どんな用途でAmazonEchoを使っているのかが徐々に判ってきました。最新の調査結果(2017年5月29日 Statista.com 公開分)によると、Amazon Echo などの音声アシスタント付きスピーカー(スマートスピーカー)が使われている用途の上位は以下の通りです。

図:「どんな用途にスマートスピーカーを使っていますか?」:2017/05/29 Statista - comScore

1位:一般的な検索
2位:天気予報チェック
3位:音楽を聞く
4位:タイマーやアラート
5位:リマインダーとTODOチェック

割と「地味」な使い方が多いですね。
一方で、アマゾンの売りであるショッピング等については、商品購入で11%、ピザやタクシーの注文で8%と比較的下位に位置しますが、合計すると約20%の利用となっています。

この約20%という数字をどう見るかは、各個々ご意見をお持ちかと思いますが、私個人は「スピーカー経由でも、スマホやパソコン経由なみに、気にせずお金使うんだな」という印象を受けています。

■EC業界へのインパクト

例えば、先日公表されたばかりの総務省「通信利用動向調査」H28版では、インターネットの利用目的のうち、「ニュースサイトの利用(図中:A)」と「金融取引やデジタルコンテンツを除く商品やサービスの購入・取引(図中:B)」はほぼ同率で
した。

図:「年齢階層別インターネット利用の目的・用途」総務省「通信利用動向調査」H28版

これは、さきほどのスマートスピーカー利用調査の、「ニュースの再生(図中:C)」と「商品と食品・サービスの購入の合計(図中:D)」とほぼ合致します。

図:「どんな用途にスマートスピーカーを使っていますか?」:2017/05/29 Statista - comScore 2

つまり、スマートスピーカー経由でも、ユーザはPCスマホ経由と同じくらいの頻度で消費活動する可能性がある、という事になりますが、絶対数となるとそこまでの期待は持てないかもしれません。
というのは、今後、音声アシスタント付きスピーカーは、2022年には世界で約1億5千万台以上の普及が見込まれていますが、

図: Global Intelligent Home Speaker Installed Base by OS(Strategy Analytics )

下図はスマホが発売されてから3年め当時の2011年のスマホ普及予想(Ericsson)です。この図と比較するとスマートスピーカーの普及数予想は、スマホの約1割弱程度であることがわかります。想定以上の伸びを見せるかどうかはわかりませんが、現状ではデバイスとしての期待値はスマホの10分の1程度、と一旦位置付けても良さそうです。

図:Ericsson: Mobile broadband subscriptions are on track to surpass 1 billion in 2011

では実際に、どんなユーザ層に使われているのでしょうか。
1981~2000年に生まれた「ミレニアル世代」
1965〜1980年に生まれた「ジェネレーションX世代」
1945~1964年に生まれた「ベビーブーマー世代」
と分類して、eMarketer.com が、以下のような利用率の推移を予測しています。

図:世代別音声アシスタント付きスピーカーの利用者数推移予想(eMarketer調べ)

つまり、ウェブやPCに若い頃から慣れ親しんでいる「ミレニアル世代」を中心に、ボイスアシスタント付きスピーカーは今後利用されてゆくと予測しているわけです。年齢にすると、25才〜34才を想定しているようです。彼らは、2020年には30〜40代を迎えることになり、5年後、彼らが今後の消費層の中心を担ってゆくことからも、音声アシスタントとWEBのあり方は、スマホやPCに取って代わるようなことには当面はなさそうだけれど、ECにおいても注目トピックのひとつとして気には留めておく程度の影響はありそうだ、と考えています。

■日本のボイスアシスタント事情と障壁
日本に目を向けて見ると、Amazon Echo に追いつき追い越せと、Google、Apple、マイクロソフト、日本からは、LINE、その他の家電メーカーなどが音声アシスタント機能を備えたスピーカー型商品を発表しており、発売開始時期も、この夏のGoogle Home日本発売を筆頭に、秋口以降から、LINE、Apple、Amazonの順となることが、各社の公表内容から予想されます。(LINEは、音楽だけに特化した先行版を夏中に発売するらしいですが、フル機能の正式版は秋以降と、6月15日のカンファレンスで発表。)
要は、2018年にはひととおりのメーカーから、日本版の「スマートスピーカー」が販売されていると考えて良さそうで、EC事業者としても各社の特徴をおさらいしておく必要があります。
・Amazon:Amazon Echo:なんといってもAmazonとの連携。Amazonに関係ない会社でもスキルと呼ばれる機能を追加しやすい特徴もある。
・Google:Home:Googleがカンファレンスがあるごとに強調しているのは、人工知能と検索結果との連動。当然、広告が実装されてくると思われます。
・Apple:Home Pod:音楽再生品質に拘っているらしいですが、Siri で培った日本語音声データ群は頭一つ抜きん出ているはず。実用性の範囲で期待。
・LINE:Wave:完全にダークホース。しかし、国内利用率No.1のSNSプラットホームを持つ強みは、お金の香りが漂います。

図:Google Home

現在、日本版リリースで私が懸念しているのは、日本語特有の、音声認識や文字の読み上げ精度のハードルの高さです。例えば、AppleのSiriですら、日本で最初にiPhoneを販売したSOFTBANKの「孫 正義」さんのことを未だに「まごせいぎ」と読むし、「今日は(金)です」 を、「きょうはきんです」と言い放ったり、はたまた、Siriに命令した時によく遭遇する「すみません、なんとおっしゃったかわかりませんでした」の連発では、使い物にすらなりません。各社がどの程度の「使えるアシスタント」に仕上げてくるかは見ものだと思います。

■「ハンズフリー」と「目視確認なし」の便利さを体験
話が長くなってしまいましたが、スマートスピーカーの話題で盛り上がると、よく出る意見が「そんなの、スマホでいいじゃん」です。でも、ハンズフリーで、結果を音声読み上げしてくれる便利さは、一度体験すると手放せません。というわけで早速、今できる範囲でのボイスアシスタント体験をしてみましょう。

・安価にオフィスで試してみたいならヘッドセットを
ご想像の通り、オフィスはスマートスピーカーには向かないのですが、海外のYoutubeなどでSOHOの人達がPCで仕事をこなしながら、AmazonEchoを便利に活用しているのを見ると憧れます。
そこで、オフィスで試行錯誤した末、音声アシスタントを便利に活用できる方法が、bluetoothヘッドセットです。色々買って試しましたが、通話品質まで考えると6,000円前後の製品が良さそうです。今のところでオススメは以下の3つです。

会話は不要、音声だけ聞きたい場合:Eonfine ミニBluetoothイヤホン
Siriはあまり使わないが、会話品質は重要:PLANTRONICS Voyager Legend
Siriも使えて会話品質も重視:JABRA Storm

図:Eonfine ミニBluetoothイヤホン

図:PLANTRONICS Voyager Legend

図:JABRA Storm

JABRAのイヤパッドは耳との間に隙間が出るなど気になる点もあるので、
別売りの、Aliph Jawbone ERA専用 交換用イヤーパッドセット がオススメです。

・自宅でスマートスピーカーを擬似体験してみる
Bluetoothスピーカーにはマイクを内蔵しているタイプがあります。中でもJBLのFlip4は防水機能もありアウトドアにも持ち出せ、SiriやGoogleNow にも対応しているので、スマートスピーカー体験の実験が可能です。

図:JBL Flip4

■AppleのSiri でできること。
こうしたヘッドセットやスピーカーで今試していることは、Siriに
「5時半にアラーム」
「今日のメールを読み上げて」
「今日のスケジュール」
「今日の佐藤さんとの打ち合わせは14時」
「NHKラジオニュースをかけて」(Podcastを登録している場合)
「Lisgoをたちあげて」(フィード読み上げアプリLisgoをインストールしている
場合)
「8600の26パーセント」
「今日は傘はいりますか」
などを音声で命令しています。ぜひ皆さんも、ハンズフリーで目視確認なしの世界を日常的に体験されて見て、自社の音声アシスタントとの付き合い方に想いを馳せ巡らせていただければと思います。

これは意外と知られていない裏ワザですが、iPhoneのウェブ閲覧中に気になる情報を見かけたら
「設定アプリ → 一般 → アクセシビリティ」>「スピーチ」から「画面の読み上げ」を”オン” にしておけば、いつでも二本指で画面を上下にスワイプするだけで、音声
で画面上の文字を読み上げてくれます。

他にも、アプリをいれておけば、支払いや購入も可能な場合がありますが、色々と試しながら、ここが不便、こうなると良いのに、というアイデアと解決策をため込んでいる状態です。
ただ、今の所、一番ありがたいのは、老眼世代の私がモニターを見なくても必要な情報が得られる点なのですが、天気予報やニュースを調べるノリで、なにかを積極的に音声で購入したいな、とまでは思えていません。ニュースやメールの合間に5秒程度なら音声広告があってもいいかな、とは思いますが、「今の広告について調べておいて」と、お手伝いさんや秘書のレベルで使えるようになってくれると、大変ありがたいですね。

とはいえ、今日もSiriからの「なんとおっしゃったのか、よくわかりません」との冷たい反応と格闘しつつ、何度も繰り返し言い聞かせ、聞き取り精度を上げてやる毎日です。オートメーション化って手間がかかりますね。

宮松利博プロフィール写真

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

営業時代に開発した顧客管理システムで営業業績を伸ばし1997年にシステムを売却。2000年、EC立上げ初年度で月商1億円に急成長するも数年後に上場失敗。新たなECを3年で年商20億円に成長させ、2006年株式上場。同年に保有株を売却し海外視察の後、2011年「小よく”巨”を制す」を掲げ株式会社ISSUNを立上げ、WEB/ECの運営・制作・コンサルティングで、業界No.1に成長するクライアントを多数抱える。


 

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