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透明化法について知る【最終回】

透明化法 は、特定のECモール(amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)を利用して商品を販売する事業者(以下「事業者」といいます。)とECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)との取引関係(出店契約など)を、より透明で公正なものにするために、ECモール提供者に一定の義務を課している法律です。
今回は、本コラムの最終回として、透明化法に基づく初年度の大臣評価に関連するECモール各社の取組状況についてご説明します。
(過去のテーマ…第1回:透明化法について知るメリット・透明化法が規律している対象、第2回・第3回:ECモール提供者による情報開示、第4回:事業者との相互理解を促進するための体制整備、第5回:ECモールの透明性及び公正性についての評価)

Q 前提として、透明化法に基づく大臣評価とは何ですか?

A 経済産業大臣は、透明化法の規制対象となっているECモール(amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)について、毎年度、透明性及び公正性についての評価を行い、その結果を公表することとされています。ECモール提供者は、大臣評価の結果を踏まえ、ECモールの運営を改善する努力義務を負います。透明化法は2021年度から運用が始まり、2022年12月に法施行後初となる大臣評価が公表されましたが 、評価を公表して改善を促すという透明化法のアプローチに実効性があるのかという点に注目が集まっていました。そこで、今回は、初年度の大臣評価に関連する各社の取組 を一部ご紹介します。

Q 事業者からの問い合わせに対するECモール提供者の対応に不満があります。これについて何らかの取組・改善は行われていますか?

A amazon.co.jpについては、アカウントを停止された場面等に問い合わせに対して定型文のような回答が多く問題が解決しないとの事業者の声があり、初年度の大臣評価において、「所定のプランや通知文面を使用した対応について、今後とも継続的に、利用事業者とのコミュニケーションの質の改善に取り組んでいくことを期待する」と指摘されていました。これに関連して、アマゾンは、事業者から苦情を受ける原因となった実例を担当者に共有し、より良いコミュニケーションの方法について研修を実施していること、コミュニケーションに関する問題について担当者をトレーニングする仕組みを実施していること、手順書に記載のないケースについて確実に上席に相談できるよう報告方法やトレーニングプログラムの見直しを実施していることなどを経済産業省に報告しています。
楽天市場については、新たに設置された苦情・紛争窓口が事業者に十分に認知されているかという点に懸念が示されていました。これについて、楽天は、潜在的な苦情及び紛争を汲み上げるために社内関係部署への周知を改めて行うとともに出店事業者へも改めて苦情・紛争窓口の周知を行うことにより当該窓口の認知度の向上を図っていることなどを経済産業省に報告しています。
Yahoo!ショッピングについて、ヤフーは、問い合わせ対応に関する事業者の満足度調査の結果を経済産業省に報告し、さらなる運営改善に努めています。

Q ECモールの利用規約等が膨大で重要な情報が埋もれてしまったり、ルール変更に気づけないことがあります。事業者の自己責任と言われてしまえばそれまでかもしれませんが、ECモール提供者側でも何らかの改善は行われていますか?

A 初年度の大臣評価においては、「提供条件が記載されている利用規約等が膨大な分量となる場合は、その中に利用事業者にとって重要な情報が埋もれてしまうことがないよう、わかりやすく開示する取組・工夫が求められる」、「提供条件の変更等を行うに当たっては、利用事業者の事情を勘案し、十分な準備期間を設けるとともに、変更内容や理由をわかりやすく説明する必要がある。また、その上で、利用事業者との対話プロセスをより実効あるものとすることも必要である」などと指摘されています。この点、amazon.co.jpについては、返品・返金・補償に関する問題の解決に課題がある旨の事業者の声がありましたが、アマゾンは、「事業者の理解増進のため、重要と思われる規約やヘルプページをまとめたページを新たに作成中であり、返品に伴う補填に関するヘルプページも含まれる予定」であると経済産業省に報告しています。
楽天市場について、楽天は、「事業者から提供条件変更に関して、頻度や事案ごとの重要度が分かりにくいという意見が寄せられたため、変更が行われる場合や、変更を行うサイクルについて事業者向けの情報提供メールにて開示を行うことで、出店事業者の予見可能性を担保し、相互理解の促進に努めている。条件変更のアナウンス時には背景・理由を記載したり、変更箇所の新旧対照表を提示することに加え、改定によりどのような対応が必要になるかを明確化している」と経済産業省に報告しています。
Yahoo!ショッピングについて、ヤフーは、経済産業省が設置している事業者向けの相談窓口(公益社団法人日本通信販売協会(JADMA))との連携を深め、相談窓口に対してストアアカウントを発行し、相談窓口が規約・ガイドライン変更を確認できるようにしたことを経済産業省に報告しています。

以上は各社の取組のごく一部です。透明化法に基づく大臣評価の仕組みがあることにより、事業者の不満が全て解消されるわけではありませんが、ECモール提供者に継続的に改善を促す効果はあると思われます。また、大臣評価は、事業者がECモール側の事情や取組を理解する契機にもなります。事業者とECモール提供者が、相互理解を深めながら、ともに健全に発展するために、透明化法が適切に運用されることを願います。

1.特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(2021年2月1日施行)を指します。詳細は経済産業省のWebページをご参照ください。(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digitalplatform/index.html)
2.初年度の大臣評価については経済産業省のニュースリリースをご参照ください。(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221222005/20221222005.html)
3.初年度の大臣評価に関連する各社の取組状況については経済産業省の資料等をご参照ください。(http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_platform_monitoring/pdf/2023_002_01_02.pdf)

JECCICA客員講師

弁護士 角田 美咲

長島・大野・常松法律事務所
2018年弁護士登録。企業のコンプライアンスや不祥事への対応を行っている。
経済産業省で透明化法の運用を担当(2021年4月~2022年12月)。


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