ECの今 〜サブスクリプションサービス
JECCICA特別講師 中谷 昌弘(通称:トントン先生)
「O2O」(Online to Offline)はネット(オンライン)などで特売情報やクーポンなどを配信することで、ネット外(オフライン)の実際の店舗やイベント会場などへの来訪を促すマーケティング手法として現在、薬局やCD店など多くの実店舗で運用がされています。
「O2O」は実店舗をネットでアシスト、ネットを実店舗でアシストするという考えが原点で特売情報やクーポンなどを配信するだけのことではないのです。
実店舗で普段行っている消費者の行動をネットの中で実現できれば、実店舗に出向く時間も節約でき、そんなすばらしいことはありません。
古本・古書の検索・販売・買取サイト「スーパー源氏」さんでは「棚!見れるジャン本!買えるジャン」というサービスを展開しています。
東京・神保町にある古書店の書棚や陳列ケースの写真を見ながら、書籍を探したり注文できるようになっています。
実店舗で行う行動は、書棚にある背表紙を見てその本を手にとってレジに向かう。
「棚!見れるジャン本!買えるジャン」のサービスでは、ネットで背表紙ごとに購入ボタンが直に表示されています。
神保町にある店舗の書棚を撮影。
顧客は、その写真をネットで見ながらネットで背表紙ごとに購入ボタンが直に表示されていて注文ができ、陳列書籍の色あせなどを把握できるため、中古書店巡りの感覚が味わえるというわけで、まさにネットと実店舗を融合したすばらしいサービスだと思います。
そういった「O2O」が進化していく中で、ウエブショップ独自のサービスそのものも、ブラッシュアップしていく必要があります。
特に最近感じるところは、画一化されたネットショップの定期配送は、さらにブラッシュアップしていかなければならないと感じます。
海外の進化する定期配送 「サブスクリプションサービス」
サンフランシスコで毎週、焼きたてのパンを玄関まで届けてくれるサービスを展開している BreadBoxと言うパン屋さんがあります。
届ける仕組みは、毎週「こういうパンがあるけどどれがいい?」という写真がスマホに届き、その中で届けてもらいたいものがあれば選べばいいし、スルーすれば配達されない。
定期配送といえば、商品を消費していてもしていなくとも定期的に届いてしまうものですが、このようにスマホから簡単にスルーできることは、いわば、消費者寄りのすばらしい仕組みで他の商品にもあってほしいものです。
これをサブスクリプションサービスと言いますが、そもそもサブスクリプションサービスとは提供する商品やサービスの数ではなく、利用期間に対して対価を支払う方式のことで、多くの場合「定額制」と同じ意味で用いられています。
もともとサブスクリプションサービスは、音楽などのコンテンツ配信サービスにおいて用いられてきていて、音楽配信サービスにおけるサブスクリプションサービスは1曲ごとに販売・課金する方式ではなく、月額で定額料金を支払えばその期間内は音楽をいくらでも自由に聴けるといった利用形態で、レストランのバイキングと同一の考え方なわけです。
サブスクリプション・コマースは、最近米国を中心に人気となっている新しいタイプの定期購入型の販売モデルです。
ありとあらゆる商品を漫然と並べる従来のインターネットショップにかわって上質で付加価値の高い製品だけを厳選してお客さんのもとに届けるサブスクリプション・サービスは、アメリカを中心に人気を博しています。
実際に現在欧米で人気を集めているサブスクリプションサイトをご紹介しますので、自社でできるサブスクリプションサービスのヒントにしてみてください。
海外における サブスクリプションサービス実例にみるヒント
海外におけるサブスクリプションサービス実例をご紹介しますが、総じて言うと日本の定期配送のように同じ商品が毎月届くというイメージではなく、自分のためにカスタマイズされた商品が、本人が選ぶのではなく、店側が選んだ上で届けられる。
つまり、届くまで何がくるのかわからない自分へのプレゼント感覚的なサービスであるといってもいいようです。
例えば、「Trunk Club」。
このサイトでは多くの男性にとってわざわざ町にあるお店に足を運んで、洋服を買うのはわずらわしさを解決するために、1人1人に最適のコーディネートの洋服を店側が選んで配達してくれるサービスを展開しています。
そのほか、「Just the right book」では、自分の読書プロフィールを作成すると、それに基づいて専門家が自分に最もおすすめの本を厳選して自宅に配送してくれるサービスを展開したり、「Graze」では、ナッツやドライフルーツ、クラッカーやパン、ケーキといった商品について「大好き」「好き」「チャレンジしてみたい」という3種類の評価をつけることで、それに基づいて自分だけにチョイスされた自然食品が毎月送られてくる仕組みを展開したりしています。
さらに飲料、食品系では「Pressed Juicery」のように自分だけのためにブレンドされ、自分に必要な栄養素たっぷりのフレッシュジュースが好きな頻度で自宅に配達されるサービスを展開していたり、「Able & Cole」では、毎週9ポンドで新鮮なオーガニック野菜ボックスが季節のレシピを記したカードとともに自宅へ配達されるサービスを展開していたりしています。
是非、自社の商品で展開できる独自のサブスクリプションサービスを考えてみてください。
JECCICA特別講師 中谷 昌弘(通称:トントン先生)
ハム・ソーセージのウェブショップ通販:北海道トンデンファームウェブショップの開設者。著書には「笑う豚の生活」がある。現在、茨城県および茨城県水戸商工会議所はじめ全国の商工会議所において地域IT戦略の講演を年間200本以上を行い抜群の講座リピート率と満足度を誇っている。全国のネットショップの個別コンサルタントとして20社を超えるサイトプロデュースに活躍中。