JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

ネット通販の「ブランディング」を考える

JECCICA特別講師 松橋 正一

matsuhashi

 

信頼や顧客にとっての価値を高めていくマーケティング戦略・手法のひとつに「ブランディング」があります。

 

ネット通販でたくさんの顧客を集め売上げアップにつながる要素として、ブランド名やトレンド商品のキーワードで探してもらう検索があります。

しかし、ブランドとして認知されていない商品は、簡単には探してもらえません。

 

ブランドというと、化粧品やファッションなどヨーロッパの有名ブランド名が思い浮かびあがりますが、全てのネットショップが、有名ブランド商品を扱う訳ではありません。

ブランドとして認知されていないものをブランドへと育て上げ、その品質や価値などブランド構成要素を強化し維持管理していく手法「ブランディング」は、いろいろな事業で求められています。

ブランドは、商品やサービス、それらを提供する企業や生産者、また人物や地域など有形無形を問わずあらゆるものが対象となります。

 

 

地域性の強い内容になりますが、生産量日本一の青森県十和田市のニンニクをネット販売することを例に考えて見ます。(なぜ、十和田市のニンニクを例にするかと言うと十和田市出身で事情をよく理解しているからです。ごかんべんを。)

 

ニンニク生産の背景は次の通りです。

全国のニンニク生産量は約20,600トン、青森県のニンニク生産量は約14,000トンで、全国の約7割を占めています。その中で、十和田市は青森県1位の作付面積329ヘクタール、生産量は約4,000トンで、青森県の約3割、全国の約2割を生産しており、生産量は全国第1位。ニンニクの大産地です。

※植え付け面積は青森県上北地域県民局農業普及振興室(平成23年度)より抜粋

 

FP200

青森県産ニンニクは、栄養分や糖度が高く美味しいことで知られています。

特に田子町産「田子ニンニク」はブランドとして認知されています。

有名なやずやの「にんにく卵黄」は、ミネラルや鉄分などの栄養分が豊富に含まれている土壌で生産される「田子ニンニク」に注目、その栄養分析をもとにテレビCMで「田子ニンニク」のブランドを拡げることに一役かいました。

 

今でも、 田子ニンニク ⇒ 福地ホワイト六片 ⇒ 高級 ⇒ 美味しい というブランドは維持継続されています。

 

一方、十和田市のニンニクはどうでしょう?

 

十和田というと、「十和田湖ですか?」と言われるほど、十和田湖をイメージする方が多いと思います。

「十和田ニンニク」をイメージする人はまずいません。

 

八甲田山のふもとに位置する十和田市では、火山灰土の土質が多く、これはニンニクの肥大や収穫に適した土質で、ニンニク畑は、もともと水田だったところに多いこともあり、鉄分(酸化鉄)が多く、質・量ともに立派なニンニクを育てるのに最適な条件を備えています。

田子産ニンニク同様の最高級品種「福地ホワイト六片」で、品種・生産地土質ともに「田子ニンニク」に劣りません。

 

十和田市産ニンニクが生産量日本一に偶然なった訳ではなく、 青森産ニンニク評価される ⇒ 福地ホワイト六片売れる ⇒ 十和田市作付面積増える ⇒ 日本一の生産量 というサイクルで生産量が増えてきました。

質が高い、美味しいという評価で売れるから生産者はニンニクの作付面積を増やしてきたのです。

「十和田市はニンニク生産量日本一」は揺るぎなない事実です。

 

ですが、どうして「十和田ニンニク」は知られていないのでしょうか?

 

「青森産ニンニク、田子ニンニクは知っている。十和田ニンニク?知らない!聞いたことない!」

こんなやりとり何度も耳にしています。

十和田市の農産物、特産物を東京で販売するイベントでは、決まって「生産量日本一の十和田市産ニンニク」とアピールします。

 

「生産量日本一」はブランドでしょうか?

「生産量日本一」から消費者に伝えるものは何でしょうか?

 

東京などのスーパーでは、「十和田市産ニンニク」より「青森県産ニンニク」とする方がわかりやすいのでポップなどではほとんど「青森県産ニンニク」と表示されています。

 

残念ながらこの「十和田ニンニク」のブランディングはうまくいっていないと言えます。

このようなブランドとして認知されていないものをブランドへと育て上げていくには、生産地(地方自治体)、生産者の努力が必要ですが、ネット販売する場合、それ相当の工夫が必要です。

 

ブランディング・プロデューサーとして活躍の安藤竜二さんの著書「安藤竜二ブランドテキスト」で、「ブランドは消費者との約束・ブレないイメージを伝え続けること」と説いています。

 

ネット販売する場合どのようにしたらいいでしょうか?

コンテンツで商品をアピール ⇒ お試し商品提供 ⇒ 商品評価 ⇒ 商品購入 という流れでブランドが認知されていきます。

商品の強み・弱みを理解し、商品のストーリーを加えてコンテンツで商品を表現します。

そしてお試し商品を手にした消費者が、「書いてある通りの質、味」と納得すれば、商品購入につながっていきます。

「質、味」を維持継続していくことで「消費者との約束」は守られていきます。

 

ブランドはこうして出来ていきます。

 

消費者がニンニクを購入する時、「あの青森県産ニンニクをまた買おう」ではなく、「あの十和田ニンニクを買おう」となれば、ブランディングは成功と言えます。

 

十和田市産ニンニクを販売しているサイトをいくつか目にします。

そのほとんどは「生産量日本一の十和田市」を強調していますが、商品名には、「青森県産ニンニク(十和田市産)」とあります。

 

十和田市産のニンニクをブランディングするのであれば、

商品名:十和田ニンニク(青森県十和田市産)
  • 十和田ニンニク生産量日本一のストーリー
  • 十和田ニンニク栄養分析、旨味分析
  • 立派で美味しいニンニクを生む産地の気候と地理
  • 良質なニンニク生む健康な土壌づくり
  • 最高級品種「福地ホワイト六片」を使用
  • 日本一のニンニク生産の手間ひまと愛情

とコンテンツで泥くさく表現し、「十和田ニンニクは、生産量日本一ばかりでなく、質・味ともに日本一」とイメージ付けることが大切です。

それが、ネット通販のブランディングと思います。

 

リスクを避けようと認知されていないブランドのブランディングをしなければいつまでたっても、そのブランドは認知されません。

今回、個人的な思い入れで地域性の強い内容のコラムになりましたが、自社ブランドを認知されるようネット通販でブランディングするには、

  • 商品のストーリーを明確にする
  • 商品の強み
  • 弱みを理解し明確にする
  • ウソをつかず正しく表現する
  • 自信と誇りをもって販売する
  • 商品とサービスの質を維持し消費者を裏切らない

が大切です。

自信をもって質や価値の高い自社商品を作り、認知されるブランドに育った喜びは何ものにも代えがたいと思います。

 

 

 

JECCICA特別講師 松橋 正一

matsuhashi

楽天、ヤフー、amazon、自社サイトなどECサイトの運営経験を基に、数々のショップを構築サポート。大規模ECサイトの効率的な構築、データ処理システム構築を得意とする。

 - Eコマースの教科書, Eコマース情報, JECCICA記事 , , ,

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2015 All Rights Reserved.s