ネットショップにおける事業計画の必要性
JECCICA客員講師 渡辺 太志
ネットショップは、一般的事業と比べて比較的参入のハードルが低いので、新規開店する店舗が毎年増え続けております。
しかし、今やネットショップのあらゆる商材・サービスでも、競合他社の存在しない分野はないといっても過言ではありません。
今からインターネットのビジネスに参入するということは、そういった競争の激しい世界に飛び込むことを意味します。
日本のEC黎明期はこうだった
日本のECの歴史ですが、20年ちょっとしか時代がないのです。
いかに急激に成長した分野かがよく分かります。
日本でのECの起源を調べると、1993年に広島の家電量販店のデオデオ(現在のエディオングループ)が、インターネットで洋書の販売を開始したのが最初ではないかと言われています。
書籍の販売は御存知の通り、Amazon.comなどを代表にECの成功事例のひとつでもあるので、インターネットにおける購入おいて適しています。
つまりそういう分野に、デオデオは先見の眼を持って、かなり早い段階から参入していたということになります。
翌年の1994年に、Amazonがサービスを開始し、1997年に楽天がサービスを始めます。
大手のモールは、非常に早い時期から市場の可能性を感じ、サービスを立ち上げてきていることが分かります。
例えば楽天のオープン当初の出店店舗数がわずか13店舗、初月の流通総額が32万円でした。
そんなものだったのです。
現在は、楽天のEC国内流通額は、年間約2兆円ともいわれております。
BtoC-ECは、もはや10兆円産業
平成24年度に経済産業省が公開した、電子商取引に関する市場調査の結果によると、平成 24年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模については、
広義※1 BtoB-ECは262兆円(前年比101.7%)に拡大し、
狭義※1 BtoB-ECは178兆円(前年比104.1%)に拡大している。
また、平成24年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、9.5兆円(前年比 112.5%)まで拡大している。
EC化率※2は、広義BtoB-EC:25.7%(前年差+1.4%)、狭義BtoB-EC:17.5%(前年差+1.4%)、BtoC-EC:3.1%(前年差+0.3%)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展している。
※本調査における日本国内の電子商取引の定義は次のとおり。
- 広義電子商取引(広義 EC) コンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつその成約金額が捕捉されるもの。広義ECには、狭義ECに加え、VAN・専用回線、TCP/IPプロトコルを利用していない従来型EDI(例:全銀手順、EIAJ 手順等を用いたもの)が含まれる。
- 狭義電子商取引(狭義 EC) インターネット技術を用いたコンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつその成約金額が捕捉されるもの。「インターネット技術」とは、TCP/IP プロトコルを利用した技術を指しており、公衆回線上のインターネットの他、エクストラネット、インターネットVPN、IP-VPN等が含まれる。 ※2 本調査における EC 化率とは、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合とする。
いわゆるBtoC取引だけで、ほぼ10兆円市場ということです。 分かりやすく言えば、パチンコ産業が現在衰退して約19兆円市場。
日本国内のロケットや人工衛星を活用した宇宙産業が15兆円市場と言われています。 わずか20年余りでここまでの市場規模に発展し、今後も市場は拡大の一途と思われます。
では、いつ参入するのか?
前述のとおり、ECのBtoC取引市場拡大の一途なのは間違いありません。
しかしながら、ネットショップを取り巻く環境は年々厳しくなっています。
理由の1つは、市場自体は年々が大きくなっているのですが、新規参入者の数がそのスピードを超えているため、大きな市場も、商品やサービスの市場に細分化すれば、小さな市場を多くの競合他社が市場のシェアを取り合っている状況なのです。
今から参入するとすれば、既にある競合他社と、どのような差別化をするのか考えてから参入する必要があるのです。
結論としては、参入は早ければ早いほうがいいのです。 しかし、「差別化」の無いネットショップは市場参入がうまく行かず、衰退してしまいます。
売れているECサイトの 真似をすればいいのか?
さて、そんな状況で貴方が新規参入でECサイトを運営することになりました。
実は、昔のECサイト運営者の概念には、「TTP」といった概念があったかと思います。
「TTP」とは?
ずばり、「徹底的にパクる」ということです。(笑)
同じ商材を売っているのであれば、その中での有名店舗サイトデザインや構造を、そのままコピーする店舗が後をたたなかった時代もあったかと思います。
確かに、うまくいっている競合他社のマネをすれば、それなりにうまくいくように思うかもしれません。
しかし、その競合他社は何年もEC市場でビジネスをしています。
その時間分の知識と経験は、新規参入者とは雲泥の差があります。
ECサイトには、ホームページの見栄えだけではなく、お客様とのコミュニケーションの取り方、顧客の維持の仕方など、見えない部分もたくさんあるわけです。
そこまでは見ぬくことが出来ないのです。
結論は「TTP」を繰り返しても「基本の部分」がしっかりしていないと、市場参入してもシェアの獲得までには至らないのです。
そのために、「事業計画書」作成が必要なのです。
基本的な考え方として 「なぜ、この事業を行いたいのか?」 「どのようにこの事業を行うのか?」 「そのために、どう資金を活用するのか?」 をそれぞれ組み立て、明確な方針や数値を出すことが重要なのです。
また、何度か書き直しを繰り返すと、「自分の本当にやりたいこと」や「考えている事業の成功率」に対して明確になっていくのです。
また、その事業の「勝算」も見えてきます。
「勝算」無き事業に投資してはいけません。
拡大をし続けるEC市場において、生き残るにはそれなりの根拠が必要なのです。
これは、絶対忘れないで欲しいと思います。
JECCICA客員講師 渡辺 太志
コンサルタントとして企業の経営戦略から組織開発までトータル支援が可能。SNSを活用した集客・販促により宣伝広告費の圧縮を行い、経営改善に繋げるシステム作りのコーディネートを得意とする。