ペット業界とEコマース
ASPCA (アメリカ動物虐待防止協会)によりますと、COVID-19によるパンデミックが始まって以来、アメリカの5世帯に1世帯が犬または猫を飼い始めたとのことです。また、APPA (アメリカペットプロダクト協会)による調査レポートによりますと、現在は6,900万世帯が犬を、4,530万世帯が猫を飼っているという統計がでています。
年間のペットフードおよびおやつの総支出額は2020年420億ドルで、今年は441億ドルまで上昇すると予測されています。一般的なEコマース同様、ペットオーナーも、場所や時間を選ばない利便性、容易な価格比較、商品の選択肢の広さなどを求めており、当然ペット用品市場でもEコマースが相当の活躍をしていることが予想されます。
余談ですが、パンデミック初期の2020年3月、アメリカでのペットフードのオンライン販売が前月に比べてなんと51パーセントも増加したそうです。
ところで、ペット用品市場でもオンラインの直接販売 (DTC)を手がけるブランドがでてきています。そのDTC分野のリーダーの1つとして、Chewy.comがあります。2018年と少々古いデータですが、ペット用品市場におけるオンライン年間売上で、Chewyが35億ドル、2番目のPetcoが4億9,780万ドルであったということから、いかにChewyが突出しているかがわかります。Chewyは、Eコマースでの売上が最も急成長している小売業者として、Etsy、Walmartに次ぐ第3番目になっており、また、オンラインでペット用品を購入したと報告しているペットオーナーによる購入先では、59パーセントのAmazonの59パーセント次ぎ、Chewyが41パーセントで第2番目になっています。
このChewyは最近、技術スタックとアーキテクチャーをアップグレードするための一連のイニシアチブの一環として、Chewy.comホームページ等をリニューアルし、強化されたパーソナライズレコメンデーションなど、よりターゲットを絞ったカスタマイズされたショッピング体験を提供できるようにアップグレードを行いました。
Chewyによりますと、ペットに費やす支出は1世帯平均年間1,128ドルで、その内訳はヘルス&メディカルが約50パーセント、次いでフードおよびおやつの27パーセントとなっています。この支出比率の高いヘルス&メディカル面でのサービス強化も行っており、テキストおよびビデオチャット機能を備えたChewy Healthサービスによる独自の遠隔医療ソリューション”Connectwith a Vet”、およびペット病院向けのEコマースプラットフォームである”Practice Hub”の提供も行っています。Practice Hubは、オンライン上での薬の処方箋作成と承認、およびオンライン薬局のマーケットプレイスという2つの機能を持ち、顧客がかかりつけのペット病院から処方箋を入手し、マーケットプレイスを通してその病院から薬の購入ができる仕組みとなっております。Chewyは、在庫管理、保管管理、フルフィルメント、出荷処理等を行い、このプラットフォームの利用によりペット病院は個々にEコマースサイトを構築する必要がなくなり、かつ収益向上も期待できます。ペット業界におけるEコマースソリューションはまだまだ拡大していきそうです。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。