2024年 年頭所感 小松英樹
新年明けましておめでとうございます。新春を迎えるにあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
昨年、私が身を置く国際物流業界は、世界的な景気の先行き不安や長引く円安により、日本発着の輸出入取扱い物量が低迷した1年でした。自動車、電機、半導体といったこれまで物量の多くを占めていた分野が苦戦する中、唯一と言っても過言でないほどに好調だった分野が越境EC関連でした。私は、この越境EC関連ビジネスの伸長は今年も間違いなく継続すると考えています。そこで、越境EC x物流という観点で、今年越境EC事業者の皆様に期待すること、また、押さえておくべきポイントを私の年頭所感として述べさせて頂きたいと思います。
まずは、期待することです。これは、今年、皆様に更に積極的に海外へ打って(売って)出て頂きたいということです。国内の少子化による人口減少が叫ばれる中、海外に販路を求めていくことは自明の理ですし、越境ECビジネスを取り巻く支援サービスは年々充実しています。集客・決済など様々な分野で実力のある支援企業が独自のサービスを展開し、一部の業務は補助金の対象となる等、手軽に越境販売できるような環境が整備されてきています。物流分野においては、直送できる仕向地が拡大したり、従来に比較し大幅に低価格で海外へ輸送できる手段も出てきたりしています。是非、多くの事業者に越境ECによる販売を伸ばして頂きたいと思います。
一方で、国内のEC市場においては、海外EC事業者の存在感が急速に高まりつつあります。つまり、海外から日本に輸入されるEC販売(私は逆越境ECと呼んでいます)が増加しているという意味です。輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター)の資料によると、一昨年、海外から日本の個人消費者宛に直送された逆越境EC直送出荷は1年間で1億件を超えたそうです。私の周りでも、若年層を中心に中国系や韓国系ECサイトで廉価なアパレル等を購入する人が増えています。一昨年の日本における宅配便取扱個数は約50億個でしたので、仮にその全てがEC関連荷物とすると、海外EC事業者が日本のEC市場シェアを少なくとも2%は持っていると言えます。実際には、宅配便の全てがEC関連ではありませんし、直送だけでなく日本国内に在庫を置いている海外EC事業者も多いので、そのシェアは10倍の20%以上あると考えられます。是非、日本のEC事業者の皆様が、日本国内は元より、海外におけるシェアも高めることを期待しています。
次に押さえておくべきポイントを2つご紹介したいと思います。
まず1つ目は物流コストの上昇です。日本国内の物流コストは2024年問題により更なる増加傾向が見込まれ、海外における人件費も増加傾向にあります。原油価格、環境問題による上昇要因もあります。一方で前述の通り、越境ECに特化した安価な輸送サービスも開発されています。そのため、今後、EC事業者は消費者ニーズを見極め、そのニーズに沿って、物流戦略の見直しをすることが重要になってきます。2つ目は、各国の越境EC制度の動向を注視することです。越境ECの輸送は各国の個人輸入制度や税制に大きく左右されるのですが、ここ数年、EUのVATやシンガポールのGST等の少額免税特例が廃止され、事前の納税事業者番号の登録や、確実な納税が求められています。この動きは、今年もマレーシア等が導入する予定ですし、米国の少額免税特例制度も見直しに向けた討議が進んでいます。この様な制度変更はビジネスに大きな影響を与える可能性がありますので、今後の動向に注視して頂いた方が良いと思います。
以上のように、越境ECビジネスを取り巻く環境は日々変化していきますが、今年もこのマーケットで微力ながら、業界発展の一助になるべく邁進して参りたいと思います。
最後になりましたが、今年がEC業界の皆様にとって、良い年となります様 心よりお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。