2021年年頭所感鈴木準

新年あけましておめでとうございます

昨年はＴＯＫＹＯ２０２０の年であり、そして昭和３０年生まれが前期高齢者になり、シニアマーケティングも次世代にシフトして、大きな変化がある一年と考えていました。しかし、よもやのコロナ禍で、私たちの暮らしは別の意味で大きく変化せざるを得ない状況に追い詰められ、私も４月の緊急事態宣言発令時は戸惑いを隠せませんでした。

しかし、シンプルに考えると、ライフシフトもコロナも共通しているのは、人類未体験の現実に、経験値がないことからくる「先が読めない不安」です。
「ニーズは不の字に隠されている」とお伝えして来ましたが、ピンチをチャンスに変えるには、固定観念を外した大胆な発想で、人間の「不の字」を解決し、「ワクワクさせる」ビジネスを提案することにあると感じています。

私は1981年に広告会社で社会人デビューし、「昭和、平成、令和」と41年にわたりマーケティングに携わってきました。そして昨年還暦を迎え、自分の仕事を振り返ってみて、平成の約30年「あまりに左脳寄りになった」と感じています。

新人の頃、上司や先輩から「広告会社は、世の中の空気を読んで、人がワクワクする企画を考えろ！」といわれ、人間観察をしろといわれました。当時はインターネットもない時代。「情報は自分で体験して得る」ことが殆どでした。そうしてクライアントに企画を提案し、クライアント側にも広告のプロの方が居て、理屈抜きで面白い企画にお金を出してくれました。

しかし時代は昭和から平成に変わり、バブルが弾け、日本企業はビジネスの成功する確率を少しでも高めるため、マーケティング・マネジメントやロジカルシンキングを学びました。そしてインターネットが普及して様々な情報も得られるようになり、マーケティングも「マス（大衆）から個」へとシフトしていきました。

こうしたビジネス環境が長年続いた平成の約30年、メリットも多数ありますが、デメリットとして大きいことは、「個人のアイデアが潰される時代」になったことです。

つまり「根拠（特に数字）」が明確でない発言が認められないため、プライベートは右脳で日常生活して、自身の考えやアイデアが湧くのに、ビジネスとなると、いきなり自分の右脳を封印するのです。
しかし昨年のコロナ禍で、私たちは「待ったなし！」で対応策を迫られ、多くの人間の知恵とアイデアでスピーディーにコロナ対策を行い、その結果として新たなビジネスが普及しました。
つまり、ライフシフトもコロナも、経験値がないことはデータから読みにくいため、人間の感性（右脳）を生かして物事を考え実行することが、いかに重要であるかが論証されたと思います。

今、ＤＸ（デジタルトランスフォーメーション）がビジネスのキーワードですが、ＤＸを一言でいうならば「人間の夢をテクノロジーで可能にする」ことであり、それは「ドラえもんのポケット」のように思えます。
「ＤＸによるイノベーション」で一番重要なポイントは、人間という「主人」が、優秀な「家来」であるＤＸを使いこなすことです。
つまり「マーケティング・マネジメント、ビッグデータ、IT（情報技術）、AI（人工知能）」など全ては、人間という「主人」が使いこなす優秀なツール、つまり「家来」です。この主従関係が逆転すると型にはまってしまい、そして人間が振り回される、本末転倒なつまらない世の中になると思います。

これは、人間が考えて作った物「機械・商品・貨幣・制度など」が、人間自身から離れ、逆に人間を支配するような疎遠な力として現れて、更には人間があるべき自己の本質を失う状態「疎外」であり、思想家マルクスの提唱は有名です。
ツールである「家来」を有効活用するには、人間自らが「世の中をこうしたい！こんなモノ・コトを社会に提案したい！」という熱い想い「哲学」から始まり、「面白い・楽しい・ワクワクする」と人を感動させる、「センスの良いアイデア」を出すことがますます重要な気がしています。

スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのように。日本人で言えば、昭和の手塚治虫が鉄腕アトムで描いた未来や、円谷英二がゴジラやウルトラマンで空想した特撮映画の世界のように、人間自らが「理想の姿」を考えて、優秀な「家来」を従え、誰でも「夢を形にしてワクワクする時代」がやって来たのです。
それを可能にするため、人間に求められる大きな課題は、「哲学」と向き合い、「センス」を磨くことだと思います。

今年一年が、皆様にとって「ワクワクする」良き一年となりますよう心からお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。