2021年 年頭所感 天井秀和
年頭所感
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、当協会への格別のお引き立てを賜わり誠にありがとうございました。
皆様のご支援、ご協力のもと、無事に新春を迎えることができ心から感謝申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年はコロナウイルスによって世界中の国々で様々な混乱が起こった年となりました。
社会の変化についても色々な報道がありましたが、小売とEコマースに関してはどうだったでしょうか。
2020年に起きた社会や消費の変化をデータで振り返りながら、2021年やアフターコロナの、世界のネット通販を予想してみたいと思います。
昨年春先から世界中で始まったコロナ禍。
当初は世界が丸ごと先の見えない暗闇に包まれたかのようでしたが、夏を過ぎた頃から、各国の政府や企業などが、産業統計や消費傾向の調査などを通して公式にデータをリリースし始め、これによりコロナの前後で何がかわったのかがはっきりと見えるようになってきました。
まずアメリカですが、アマゾンの7~9月期決算では、純利益が前年同期比3倍の63億3100万ドル(約6591億円)に到達、四半期として過去最高益を更新しました。
これにあわせ、従業員の採用も異例の規模で行われていて、2020年の1年間で、期間従業員と正社員をあわせると数十万人の人員増強を行っています。
さらに10月には、年末商戦の繁忙期に向けて10万人の期間従業員の採用を発表。乗りに乗っています。
またウォルマートでも第2四半期のEコマース売上が97%増、生鮮品や生活関連、ヘルスケア関連のほか、テレビやコンピューティングデバイス、コネクテッドホームなどの、「巣ごもり関連アイテム」の売り上げが大きく伸びたそうです。こちらも春先から20万人の人員増強を行っています。
アメリカではコロナウイルスの蔓延がなかなか収まらないためか、消費のオンライン化はますます加速しており、昨年のホリデーショッピングシーズンの最初の10日間の売上は前年比で21%増加し217億ドルに達しました。同時期の別の調査によると、消費者の63%が店舗を避け、オンラインでの購入を増やしているそうです。
次に国や地域の統計を見てみましょう。
OECDの発表によると、2020年の第2四半期には、US/UK/EU27か国のすべてで、Eコマースの売上が急激に伸び、小売店舗の売り上げが下がっていることがわかりました。
具体的には、米商務省国勢調査局のデータでは、EC化率が2020/1Qの11.8%が2Qには16.1%と急激に上がっています。
イギリスの国家統計局のデータでも同様に、1Qの20.5%が2Qは31.4%と急激な伸びを読み取ることができました。
Eurostat(欧州連合統計局)によるEU27カ国のデータでは、3月から小売市場全体の売上が減少。4月は前年比-18%となっています。一方で、通信販売会社またはインターネット経由の売上は4月以降、大幅に増加しました。
ちょっと変わった切り口では、Googleによると昨年、”delivery”というキーワードの検索数は、突然3月14日を境に世界中で急上昇し、それまでの約2.5倍となっています。
ではEコマース市場の成長著しい東南アジアではどうだったでしょうか。
東南アジアでは7月のECトランザクション数とコンバージョン率は、昨年の初めと比較して約20%増加したそうです。
また、ベイン・アンド・カンパニーとfacebookは合同で行った調査で、東南アジア6カ国のEコマースの利用者数が、2020年末までに3億1000万人に到達する見通しだと発表しましたが、これは2019年の調査では2025年に達すると見込んでいた水準で、コロナの影響により5年前倒しして達成したことになります。
いっぽうでEコマースで売れている商品カテゴリの傾向はどうなっているでしょうか。コロナの前後で、商品の売れ行きにはどんな変化があったのか、各国の現状を見ていくと、
たとえば米国では、個人の防護に関連するアイテム(使い捨て手袋やマスク、消毒液など)、家庭用品、食料品、ICT機器の需要が急増しましたが、一方で旅行関連用品(スーツケースなど)、スポーツ(フィットネス用品など)、フォーマルな衣類に関連するアイテムブライダルウェア、の需要が減少しました。
アジアでは、農家による野菜や果物の直送や、コロナの影響でサービスを料理の宅配に切り替えたレストランなどを含む、食品関連に関連して多くの国で増加がみられます。
ドイツでは、EC化が歴史的に遅れてきたセクターである医薬品と食料品のオンライン販売が大幅に増加しましたが、オンライン販売全体は前年と比較して約18%縮小しました。
韓国では、2020年7月までの1年間にEコマースの取引全体が15.8%増加したなか、食品サービス(66.3%)、家庭用品(48%)、および飲食物(46.7)で大幅な増加が見られました。一方、文化およびレジャーサービス、旅行手配や輸送サービスなどのオンライン取引は、大幅に減少しました。
中国では、食品関連の事業者が最も大きく業績を伸ばしていて、昨年1月から4月までの累積売上高は前年比で36%増加しました。対照的に、昨年1月から4月までのオンライン総売上高は、2018-19年(17.8%)に大幅に増加した後、2019年の同時期(+ 1.7%)と比較してほぼ一定のままでした。衣料品の累積売上高は、2018-19年(23.7%)から大幅に増加した後、2019年と比較して16%縮小しました。
このように、コロナウイルスの蔓延によって、消費のオンラインシフトは世界中で加速しており、これまでデジタルネイティブ世代(gen-Z)が成長し消費の中心になっていくことによる、ゆるやかな消費のオンライン化が予想されてきましたが、ここへ来てその傾向が一気に早まった様相を呈しています。
コロナ後のEコマースに言えることは、以下のようにまとめられると思われます。
・今後も全世界的にデジタルシフトの拡大と同時にEコマース消費の拡大が予想される。
・コロナの影響によって売れるようになった商材、そうでない商材の明暗が分かれているため、テストマーケティングの重要性が増している。
・物流コストは今後もなかなか下がらないことが予想されるため、重要。送料、関税を含めた消費者が負担する価格の合計が現地の需給に見合うかどうか、検討する。
・元々単価が安い商品はレッドオーシャン化しやすく(中国の現況、Lazadaが無法地帯化)、参入の余地は少ない。
・パンデミックの再来の際は物流、通関が止まり商品が流通経路上に滞留されるため、出荷の際は出荷先の同行に注意する。
・マスク、消毒関連など日本製のヘルスケア、プロテクション関連は日本のコロナ対策がうまくいけばいくほど、今後海外では評価されるかもしれない。
今年2021年も、どんな驚きが待っているのでしょうか。皆さまと一緒に時代やニーズの変化に対応し、社会に貢献していきたいと思います。
皆さま方の益々のご隆盛とご健勝を心からお祈り申し上げます。
理事 天井秀和
1973年 東京都生まれ。
大規模Eコマースサイトのマーケティング支援、システム構築を行うインフォマークス株式会社を2002年に設立し代表取締役に就任。
スタートアップから年商100億円を超えるメジャーサイトまで、数多くのネット通販ビジネスのの事業戦略コンサルティング、業務改善を実施。
海外各国の通販マーケットにも精通しており、特に北米、ASEAN地域に注目、事業進出を準備している。
自他ともに認める「通販マニア」である。