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小売企業の「新たな収益の柱」=リテールメディアとは

リテールメディアとは?いま注目されるワケ
昨年ごろから注目度が高まっている「リテールメディア」。
リテールメディアとは、「小売企業が運営するWeb・ECサイト上のオンライン広告や、店頭に設置されたデジタルサイネージ広告などの広告媒体。保有する顧客データと組み合わせて提供する場合もある」ものとされています。

どういった理由でここまで注目されているのかというと、
1. Amazon社の広告売上高の規模が非常に大きくなり、Google、Metaに続く第3位の広告企業となった点
2. 米大手小売のWalmart社のリテールメディア事業(コネクト事業)が生み出す利益の大きさ=売上でみると全体の0.5%ではあるが、利益ベースでは12%ほどのインパクトとなっている点
などが挙げられるでしょう。

リテールメディアは、小売企業にとっての「新たな収益の柱」として期待されているわけです。

2021年、Walmartは「リテールメディア事業が四半期で300%成長し、5年間分の成長を5週間で成し遂げた」と発表、大きな話題を呼びました。

個人情報保護を目的とした”3rdパーティークッキーの規制強化の流れ”により、小売企業が保有する”ユーザー許諾済の1stパーティーデータ”に注目が集まっていますし、なによりメーカー・ブランド企業の立場として、「効果測定が難しい従来の広告より、お客様の購入のタイミングにより近い場所(Web・ECサイトや店頭)に広告を直に露出でき、かつ効果測定が可能なリテールメディアを重視するようになる」のは自然な流れといえるでしょう。

アメリカにおけるリテールメディアの市場規模は、2023年に7兆円弱、2027年には約16兆円に達すると予想され、デジタル広告の25%以上を占めるであろうとされています。日本においてもリテールメディア市場は急拡大しており、電通グループのCARTA HOLDINGSが発表した調査では、2021年に約2,300億円(うち、店舗事業者:90億円)だった日本のリテールメディア広告は、2026年には約7,570億円(うち、店舗事業者:1,070億円)まで拡大するであろうと予測されています。

日米リテールメディアの取り組み事例
日本におけるリテールメディアの取り組み事例としては、
●Amazonや楽天市場をはじめとした「ECサイト」(検索や商品に連携)
●セブンイレブンやファミリーマートなどの「コンビニエンスストア」(アプリや店内サイネージ)
●「スーパー」「ドラッグストア」や「家電・ホームセンター」 (アプリや店内サイネージ)
などが挙げられます。

タブレット端末付きの”ショッピングカート”に来店者属性に連動してクーポンを発行したり、店内デジタルサイネージに広告を配信したりする「トライアル(スーパー/福岡)」の取り組みも注目されていますね。

アメリカにおける事例は、日本とはケタがちがっているわけですが、
Walmartでは、Walmartコネクト(広告配信)/Walmart店舗+EC(小売)/NBCユニバーサル(コンテンツ配信)、この三つが連携・循環したビジネスモデルを作り上げています(「広告配信」が、「店舗・EC」と連動している(=リテールメディア)のは想像しやすいと思います)。

米国の小売業界では、動画やテレビ番組などのコンテンツを視聴しながら商品を購入できる「ショッパブルTV(やショッパブルCM)」に着手する動きが相次いでおり、番組内で取り上げられた商品を、表示されるQRコードやBUYボタンからEC購入できるといったシームレスな買物体験が設計されています。この「コンテンツ配信」で得られた顧客データを広告配信に活用することで、「広告配信」「店舗・EC」「コンテンツ配信」の循環を実現しています。

リテールメディア=小売企業の「新たな収益の柱」
今後日本でリテールメディアが発達していくうえで、課題も少なくありません。

●ハードの課題(店頭に配信可能なサイネージやタブレットなどが十分にあるか)
●ソフトの課題(広告在庫が十分にあるのか、制作原資やリソースが十分あるのか)
●事業者側の理解の課題(小売企業側とメーカー・ブランド企業側の、担当者同士の立ち位置や優先順位が大きく異なるであろう点)
●生活者側の理解の課題(どれだけ効果が生じるか、生活者の反応)
挙げればまだまだあると思います。

こうした課題も踏まえると、日本においてWalmartのような超大規模かつ先進的な循環システムまで構築する企業が出てくるかは分かりません。が、小売企業がリテールメディアという「新たな収益の柱」を持つことが重要であることは、間違いないでしょう。

日本の労働人口は急激に減少を続けており、内閣府「令和4年版高齢社会白書(2022)」によると、1995年に約8,700万人いた労働人口は、2024年現在で約7,200万人(18%減)、2060年には約4,500万人(約50%減)になるとされ、消費活動・購買活動の大幅な目減りは避けられません。

足元では、昨年2023年10月に訪日外国人数が単月で新型コロナ前を上回り、2023年のインバウンド需要は約6兆円と、2019年の5兆円を大きく上回るという見通しとなっています。

2024年はインバウンドがさらに増えると予測され、特に人気エリアに立地する商業施設では業績も大きく回復している状況ではあるものの、中長期で見た場合、少子高齢化やEC化によるリアル商業売上の縮小傾向が今後も強まると予想され、ニッセイ基礎研究所の調査・試算によると、消費支出の(新型コロナ以前の水準への)回復を織り込んでも、リアル商業の売上高は、2019年を100とすると、2030年に9掛け、2040年に8掛けとなると発表されています。

そうした中、小売企業はいま、自身の持つ「店舗・店頭」「Web・ECサイト」「アプリ」といったアセットを”メディア化”し、適切な広告主・広告在庫を誘致、お客様が喜んでくれるコンテンツや広告が適確に、パーソナライズされる状態で配信され、結果顧客満足や収益の向上に繋がる。そうした”生活者/小売業/広告主、皆がハッピーになる仕組み”を模索していく必要に迫られているのです。

JECCICA特別講師

JECCICA特別講師 唐笠 亮

株式会社パルコデジタルマーケティングのコンサルタント。数々の専門店・ショッピングセンター等を背景とした大規模ECの構築やシステム連携のプロジェクトマネージャーを務める。


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