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日本にもマーケットプレイス化の流れが来ている

米国Walmartのマーケットプレイス比率は既に50%強
2024年の米国Amazonの推定流通総額は3,653億USドルで、そのうちファーストパーティ分は1,528億USドルです。これは全体の42%に相当しますので、残りの58%はサードパーティセラーによる販売、すなわちマーケットプレイスということになります。また米国WalmartのECの推定流通総額は1,599億USドルで、そのうちファーストパーティ分は776億USドルです。これは全体の49%に相当しますので、残りの51%はマーケットプレイスです。米国の大手ディスカウント小売Targetの場合、マーケットプレイスは20億USドルとECの流通総額の9%程度ですが、今後その比率を引き上げると発表しています(※データはいずれも出所Statista)。

世界ではマーケットプレイスはあたり前
Amazonのマーケットプレイス比率が58%と聞いて“まあそんなところだろうな”と思う方は多いでしょう。しかしWalmartのマーケットプレイス比率も50%を超えていることをご存じの方は少ないのではないでしょうか。マーケットプレイスは日本ではAmazon以外になかなか思いつかないと思いますが、米国ではAmazon以外でもあたり前のように存在しています。また米国以外でもECにおけるファーストパーティとマーケットプレイスの併用は普通に事例として存在しています。加えて言えば、BtoB-ECでもマーケットプレイスは広く普及しています。日本のECはAmazonを除けばマーケットプレイス後進国であり、世界の流れに取り残されているのではと感じます。

日本でも徐々にマーケットプレイス化が進行
ところがそのような状況下、日本でもマーケットプレイスの事例が少しずつみられるようになってきました。ニトリは2024年2月にマーケットプレイス化を発表しました。同社は家具のイメージがありますが、日用品もたくさん販売しています。しかしECでは家具の比率が高いようで、それを是正することが目的の様に思われます。アイリスプラザもマーケットプレイス化を行いました。同社には自社商品の開発力がありますが、スピード重視でマーケットプレイス化によるMD拡充を選んだように思われます。またサッポロドラッグもマーケットプレイス化に踏み切りましたが、同社のねらいはドラッグストア商品の販売だけでなく、北海道ならではの独自商品や地域事業者とのコラボレーションを推進するための商材拡充とのことです。アパレルのアダストリアは、バーチャルファッションのマーケットプレイス「スタイモアー」をオープンし、リアルとバーチャルの両方のアパレルを手掛ける企業となりました。

マーケットプレイス化のねらいとは
マーケットプレイス後進国と思われた日本でも、このようにようやく少しずつ事例が見られるようになってきました。そこで、マーケットプレイス化のビジネスについてあらためて要点を整理しておきたいと思います。マーケットプレイス化のねらいについて、私は大きく2点あると考えています。1点目は「規模の追求」です。競合に対し自社のMDを大きく拡充したくても、時間と労力を要しますので、カンタンには実現できません。そこでマーケットプレイス化によりサードパーティセラーからの商材をドロップシップ形式で販売できれば、時間と労力を節約できるでしょう。2点目は「新事業・新分野への領域拡大」です。単なる規模の追求ではなく、例えば全く新しい事業を展開したり、あるいは手薄な商材カテゴリーを一気に補ったりといった際に、マーケットプレイスを活用するという流れです。

気を付けておきたいこと
では気を付けておきたいことは何でしょうか。私なりの考えですが、「規模の追求」を目的とする場合、コスト面でスケールメリットを確保できるレベルまで規模を追求する必要があるように思えます。マーケットプレイス化に向けたシステム対応や、サードパーティセラーの開拓・管理のための体制整備などが必要になりますので、一定規模をクリアするとスケールメリットが生じると想定します。また既存MDとのカニバリゼーションにも気を付ける必要があるでしょう。続いて「新事業・新分野への領域拡大」の場合には、商材領域を短時間で拡大するには好都合であり、新事業で失敗しても切り離しやすいと言ったメリットがあります。他方で売れ筋を自社販売に切り替えづらくなる点が課題となるでしょう。いずれにせよ、マーケットプレイス化の流れが日本にもやってきていますので、引き続きウォッチしたいと思います。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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