Temuの日本でのGMVが4千億円超であることを知っていますか?
TikTok Shop「そろりスタート」
ご承知の通り、今年の6月30日にTikTok Shopが日本でもオープンしました。それに向け、5月から6月にかけては、TikTok Shopに関するニュースがEC業界で飛び交っていたことは記憶に新しいでしょう。ようやく成功事例をちらほらと目にするようになってきましたが、全体的には「そろりリスタート」といったところでしょうか。諸外国ではTikTok ShopのGMV(流通総額)が急増しているようです。したがって日本での期待値は高く、「こういう商材がこれだけ売れた!」といった成功事例や、「やってみてわかった販売のポイントは〇〇!」といったノウハウ的な情報が徐々に出てくると思われます。
Temuの2024年の日本でのGMVは4,204億円
ところでTikTok Shopが大きな話題となっている陰で忘れられている感がありますが、TemuのGMVが日本で増えているようです。ECDBのデータ(Statistaによる発表)によれば、2024年の全世界のTemuのGMVは475億USDとのこと。国別シェアを見てみると、米国が32.6%、次いでドイツが6.9%となっています。日本は第3位で5.9%となっていまして、1ドル150円で計算すると、日本での2024年のGMVは4,204億円になります。Temuが日本で事業を開始したのが2023年7月ですので、2024年にいきなり4.204億円というのは、とてつもない規模であるということがわかります。
Temuの存在を正視する必要性があるのでは?
2024年のTemuの全世界のGMVが475億USDと申しましたが、ネット上で調べてみると、708億USDという情報もあるようです。仮にそれが正しいとし、かつ日本のシェアが5.9%だとしたら、2024年の日本でのGMVは6,266億円となります。さすがそれはないのではないかと思っており、私自身は4,204億円が妥当と考えています。いずれにしても、日本でのGMVは相当な規模になっていることには間違いがないようです。TikTok Shopに業界の注目が向いていますが、同じ中国勢であるTemuの日本での動向について、いろんな意味で正視する必要があるのではないかと思っています。
楽天との比較でTemuのGMVの大きさを測る
ニールセン発表によると、2024年5月時点で国内のTemuのユーザー数は3,106万人とのこと。これは楽天の半分弱です。一方でDockpitによれば、2024年のTemuのユーザー数は楽天の3分の1程度でした。私の推計では、楽天の2024年のGMVは約4兆円です。Temuはその10分の1程度というわけですが、イメージ的にユーザー数が楽天の3分の1、購買単価が楽天の3割程度、両者を掛け算することでTemuのGMVは楽天の10分の1程度ということになります。そう考えれば、確かに4,204億円という点も納得できるのではないでしょうか。
Temuは越境ECと国内ECのハイブリッド型モールに
ご承知の通り、米国政府はデミニミスルールを全面的に廃止しました。米国向けのGMVが大きいTemuは相当の危機感があるものと推察します。当然ながら、米国以外へと目が向くでしょう。もちろんそこには日本も含まれているはずです。無論、日本のGMVが大きいことからデミニミスルールとは関係なく積極的に日本市場を開拓したい思いは以前からあったでしょう。ちなみにTemuは、今年1月に日本のセラーに対し招待制で販売の門戸を開放しました。さらに6月には招待制ではなくオープンな形に移行しています。つまり、Temuは越境ECに国内ECを加えたハイブリッド型のECモールであるということです。
Temuの躍進によりモール業界はパイの奪い合いに
国内のEC市場規模において主要モールのGMVが占める比率は8割弱と高い状態です。この比率は年々高まっていましたが、どうやら今の水準が最高地点となりそうな気配が感じられます。私は8割5分や9割に達するとは予想していません。とすれば、そこにTemuのGMVが加わってきますので、8割を超えないと想定するのであれば、必然的に既存のモールがその分はじき出されることになります。「Temuの存在を正視する必要があるのでは?」との私の問いかけは、まさにそういうことであり、激しいパイの奪い合いが生じるのではないでしょうか。TemuのGMVが伸びるのであれば、セラーにとって新たな販路の選択肢が増えますので、既存のモール事業者にとっては脅威となるでしょう。
参考までに
経済産業省が発表したデータでは、2024年の中国からの越境ECが466億円となっています。前述の通りTemuが4,204億円と想定されますので、経済産業省発表の数値は正確ではない可能性があります。ご注意ください。


JECCICA客員講師 本谷 知彦
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役