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がんばれECカート事業者!

EC市場を席巻するECモール
私の推計では、2023年におけるEC市場全体に占めるECモールの流通総額の比率は約78%です。ここで言うECモールとはAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、auPAYマーケット、Qoo10、ZOZOTOWNの6つを指します。特にAmazonと楽天市場に限ればEC市場全体に占める流通総額の比率は推定で64.3%(2023年)であり、その比率は年々上昇しています。つまりECモールが市場を席巻しているということです。EC業界の関係者であればこのような数字に普段から高い関心を寄せていると思いますが、具体的な数字で語られることは少ないので参考にしていただければと思います。

EC市場全体に占めるAmazon&楽天市場の流通総額の比率


出所:当社推計

自社ECに関わるEC支援事業者にとっては大きな問題
EC市場を席巻するECモールの存在、裏を返すと、データ上自社ECによる売上高があまり伸びていないことを示しています。ECモールを利用する小売事業者やメーカーは、自社ECも同時に運営していることがほとんどでしょう。つまりECモールも自社ECも両方掛け持ち運営しているということです。販売する側の視点で考えると、ECモールであろうと自社ECであろうと自社の商品が売れればどちらでもよいと考えるかもしれません。

しかしながら自社ECを支援する事業者にとっては、自社ECの市場規模が伸びていないことは、自社のサービスやシステムの利用が伸びづらくなりますので、大きな問題になります。

Shopifyの存在
そのような状況は、特に私はECカートを提供する事業者にとって悩ましい状況だと認識しています。ECカート事業者にとって悩ましいもうひとつの事情は、Shopifyの存在ではないでしょうか。カナダ生まれのShopifyが日本で本格的に事業をスタートしたのは2017年です。以降Shopifyを採用したECサイトが日本でも多く誕生しています。もちろん日本だけではなく世界的にもShopifyの採用事例は多いと聞きます。Shopifyの成功要因はいくつかあると思いますが、ひとつは対応アプリケーションの豊富さが挙げられるでしょう。私の調べたところ、1万以上のアプリケーションが提供されており、その内訳を見てみてもバリエーションが広く、アプリケーションの開発事業者が競うようにShopify対応のアプリを開発していることが伝わってきます。

もうひとつはShopifyの導入を支援する事業者が増加している点です。私の調べでは、Shopifyパートナーは100社を超えているようです。もちろん他のECカート事業者もそれぞれパートナー事業者は多く存在していますが、Shopifyパートナーは近年増えてきている印象があります。経済学で例えるなら、アプリケーションの多さや導入支援事業者の増加によって、Shopifyには「ネットワーク外部性」が作用しており、他のカートとの差別化が行われていると言えます。

ECカート事業者の打ち手は?
ECカート事業者は、ターゲットユーザーの違いや(大手企業向け/中小零細企業向け)、総合小売が得意かそれとも単品通販向けか、SaaS型かオンプレミスかなどを基に細分化できます。しかしShopifyの隆盛によってこのバランスが少し変化してきているように私には見えています。Shopify以外のECカート事業者は今後どのように対処すべきかについては、各々の特性毎に異なってくると思いますが、私なりに独断と偏見で対処方法を列挙すると以下の通りです。

①カート事業者同士の経営統合
②他業種との資本提携(経営統合やグループ傘下入りも含む)
③他業種との業務提携(大手Sierなど開発力が強くソリューションが充実している事業者)
④他システムとの密結合(OMS、WMSはもとより、業務系システムとのブリッジなども)
⑤他システムや他のサービスのラインナップの拡大、強化
⑥導入支援事業者(パートナー企業)の新規開拓、強化
⑦新規ユーザーの地道な獲得

EC業界の発展に向けて
ECモールであろうが自社ECであろうが関係なく、EC業界が盛り上がることを願っています。しかし現状ECモールが強く、全体的なバランスが私は気になっています。自社ECの市場規模拡大については様々な論点がありますので、別の機会に触れることが出来ればと思いますが、ECカートはその中でも重要な論点のひとつです。本コラムではShopify以外のECカート事業者を意識して執筆しましたが、Shopifyも含めECカート事業者にはEC業界発展向けて頑張って欲しいと思っています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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