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楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.78 【50歳以上過半数社会と「新たな大人市場」の到来①】

今年から日本は50歳以上人口が過半数に!
私は5年前から「シニアマーケティング」の仕事がメインになっています。特に、昭和30年から43年頃までに生まれた世代を「ABS世代(アクティブ・バブル・シニア)」と名付け、新しいシニア世代の特徴とビジネスチャンスの発信、企業のコンサルティングを行っています。

ABS世代は、高度経済成長期に幼少期を過ごし、1970年代後半からの若者カルチャーの影響、そして社会人になりバブル景気を体験した「戦後日本社会と経済が一番輝いていた時代」を駆け抜けた世代です。※図①参照、以前のコラムVol.⑯⑰⑱参照

現在この世代は「50代半ばから60代」になりますが、今年から日本の人口は50歳以上が過半数を占め、これまでの社会構造と大きく変化を余儀なくされています。
※図②参照

60代は普通に働く時代
政府は2020年4月から、70歳までの雇用延長の努力義務化を事業主に通達しました。ご存じのように、退職金減額や年金支給先送りなど、昔のように60歳以降は退職金と年金で「老後・余生」を暮らすライフスタイルとは大きく変化しました。今の60代は、一昔前の50代と言っても過言ではないでしょう。それだけ平均寿命も延伸しています。

また、働き方も様々な選択肢がある時代が到来しました。今までの会社の雇用延長に加えて副業解禁に伴い、自分の得意な事や趣味の延長で対価を得る人、これまでのスキルや人脈を生かして、転職や起業、フリーランスに転身する人も増えています。

個人金融資産や消費も活発な世代
日本国内のビジネスやマーケティングを見ていると、やはり若い世代をターゲットに行うケースが多く見られます。当然のことながら、若い顧客を獲得して育成することは「顧客生涯価値」が高いため必要な事です。

一方では、60歳や下手をすると50歳以上を「シニア」と一括りにして語られるケースが多く見られますし、人口が多い戦後生まれの団塊世代がリタイヤし始めた2010年代初頭は「これからはシニアマーケティング」と話題になりましたが、フタを開けるとなかなか消費をしないため「シニアは難しい」と言われ、半ば消費対象から外された感があります。

しかし、日本人の個人金融資産「約2,000兆円」の81%は50歳以上、更に約30%は65歳以上が持つ「現金・預金」です。※図③

一方で、毎月の世帯当たりの支出金額を表す「家計調査年報」でも、中高年世帯の支出は多く、Z世代と言われる20代はここ3年で減少傾向にあります。※図④

こうして俯瞰的に日本のマーケットを見ると、50歳以上世代に大きなビジネスチャンスがあることが一目瞭然で分かります。

固定観念からくる「シニア」という言葉のネガ
このような魅力的な市場ですが、先ほどもお話ししたように「シニアはモノを買わない、難しい」と思うのは、従来の「固定観念」からターゲットを捉えているからです。

シニアと言えば「良き父・良き母・おじいちゃん・おばあちゃん」で、「デジタルは苦手、まさか恋愛なんて・・」と思い込み、ビジネスでは「健康と旅行が趣味で、孫にお金を使い、あとは終活と介護でしょ!」とう捉え方が多分にありました。

「高齢者」はWHO(世界保健機関)が65歳以上と定義がありますが、「シニア」は極めて曖昧な表現で「何歳から」という捉え方は様々です。特に当事者世代は、自分の年齢より上に感じている、つまりは「シニア=ネガイメージ」を持つ人が多いのです。

シニアは、あくまでビジネス用語で、ネーミングやコピーに「シニア割」なんて使うのはNGと言って来ましたが、最近では「シニアマーケティング」という呼び方すらも、事業主にとって魅力的に映らないようです。

主観年齢が若い「大人たち」が動き出す!
人間の年齢には「実年齢と主観年齢(気持ち年齢)」があり、以前ABS世代に実施した調査では、男性は「−5.9歳」女性は「−6.6歳」と実年齢よりも若いと感じ、また「実年齢と同じか上」に感じるグループと「−5歳から−20歳」くらいに感じるグループに二極化していました。※図⑤参照

つまり、後者のグループには「新たなビジネスチャンス」がある訳です。60歳でも40代くらいに感じている人は多数いる訳ですから。

昨年、博報堂生活総合研究所が「消齢化社会」という考え方を提唱し、書籍を上梓しました。消齢化社会とは「生活者の意識や好み、価値観などについて、年齢による違いが小さくなる現象」と解説しています。つまり年齢に関係なく、同じニーズを満たすモノやサービスに対して、年齢関係なく購買行動を起こす訳です。

20代Z世代の「昭和ブーム」や、60代になっても華やかな洋服を着て「遊びに出かける」など、年齢に関係の無い価値観や消費行動が多く見られます。

冒頭にお話ししたABS世代の若い頃、モノが普及した1980年代に消費のトレンドは「モノからコト(体験)」と言われ、モノを買ってどんなワクワクする体験をするか?が大きなニーズでした。こうしたニーズを持つ「新しい時代の大人世代」は、仕掛け方次第で大きなビジネスが見込まれます。

普通にスマホを使い、SNSを見たり投稿・発信したり、そしてECサイトで買い物をする。そんな「新しい大人世代」のビジネスのポイントを次回はお伝えします。

JECCICA客員講師 鈴木 準

株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント


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