楽しく誰にも分かるマーケティング：Vol.66 「間違いだらけ」のシニアマーケティング⑤ 【「コミュニティ」をテーマにしたシニア向けサイト】

インターネット回線事業会社のユニークな取り組み
前回の当コラムで、「コミュニティ」の重要性と、それを生かしたこれからのマーケティングに関してお話ししましたが、今回はその事例をご紹介しましょう。
「コミュファ」のブランドで、中部５県（愛知・岐阜・三重・静岡・長野）においてインターネット回線事業を行う「中部テレコミュニケーション株式会社」は、50～60代に向けてインターネットを介して、有意義なセカンドライフを応援するＷｅｂサイト「ＣｌｕｂＪｉＶＥ（クラブジャイブ）」を2021年5月から展開しています。

https://join.commufa.jp/clubJive

その目的は、Ｗｅｂサイトを介して「コミュニティ」を形成し、既存契約者に対する維持及び客単価拡大、そして新規の契約者獲得です。

従来のシニアサイトにはないコンセプトの「Ｃｌｕｂ　ＪｉＶＥ」
ＪｉＶＥ（ジャイブ）とは、Ｊｕｓｔ「ちょうど」、Ｉｄｅａｌ「理想的で」、Ｖａｒｉｏｕｓ「多様な」、Ｅｄｕｃａｔｉｏｎ「学園」を意味し、コンセプトは「ワクワクがとまらない大人のサークル活動」です。
人生100年時代と言われ、50～60代はセカンドライフをスタートさせる時期ですが、そんな大人達（シニア達）が、学生時代のクラブ活動のように童心に帰り、同じ興味関心あるテーマのもと、インターネット及びリアルで意見交換や情報交換を通じて、社会と関わり自分らしさを発見する、そんな「コミュニティ」の場をＣｌｕｂ　ＪｉＶＥは提供しています。

プロジェクトリーダーである、中部テレコミュニケーションの加藤智久氏によると「今の50～60代は、若いころのカルチャーやバブル期の影響もあり、好奇心旺盛で活力ある若々しい人は多く、従来のシニアとは違い、インターネットやスマホを普通に使い、ＳＮＳの発信力がある人も居ます。そのような人たちが、自主的に学生時代の部活のように、仲間があつまりワクワクする時間と環境をお届けすることで、弊社のインターネット事業に付加価値を提供したかった。」とお話しされています。

顧客自らが集い創る「ワクワク」時間を体験するサイト
サイトの中では、この世代に興味関心の高い「ＩＴ、体操、農業、資産管理」４テーマに、遊びの要素と人生100年時代のヒントを得る「エンタメ・いきがい」の２テーマを加えて、全６テーマで動画配信とオンライン・オフライン（リアル）セミナーやイベントを実施しています。

これらの企画に参加するためには、無料のＣｌｕｂ　ＪｉＶＥ会員の登録が必要となります。会員対象はコミュファのインターネット回線契約者は勿論、非契約者の方も登録が可能です。そしてこの先の展開では、回線契約者にプラスαの特典をつけて契約者サービスを図り、非契約者はコミュファのファンに育成することで、新規回線契約の見込み客醸成を図っていきます。

Ｃｌｕｂ　ＪｉＶＥでは、サイト内に「コミュニティ機能」を追加して、コンセプトである「サークル活動」を展開。コミュファ契約者自らが、自分自身のコミュニティ、例えば「鉄道模型が好きで仲間が居る」「ディスコが好きで仲間が集っている」など、大人のサークル活動支援のため、インターネットというプラットフォームを提供することで、「コミュファは、人がワクワクする面白い活動を行っている！」というイメージ育成から、独自性あるブランド醸成を図って行きます。

シニアマーケティングも本格的にデジタルの時代へ！
スマートフォン普及率は２０２３年３月時点で、「60代92％（２０１８年は52％）」、「70代76％（２０１８年は26％）」（モバイル社会研究所調べ）と急速に普及。今後はシニア層に対するコミュニケーションも、アナログからデジタルへの流れが加速することで、その手法は今回のＣｌｕｂ　ＪｉＶＥのように大きく変化すると思われます。

ＣｌｕｂＪｉＶＥの大人のサークル活動から、顧客自らが先ほどの鉄道模型やディスコのような、自分自身の興味関心あるテーマのユニークな情報を、その人の感性で情報発信し、そこから口コミやコミュニティが形成され、メディアがその情報を更に拡散させることから、人類未体験の人生１００年時代のライフスタイルやワークスタイルが提案されそうです。

従来インターネット回線の事業会社は、スペックや価格訴求で契約者獲得を図って来ましたが、インターネットというコミュニケーションツールで、「顧客のどんなニーズが満たせるのか？どんなライフスタイルが提案出来るのか？」その一つの回答が、今回のご紹介事例です。
Ｃｌｕｂ　ＪｉＶＥは、60歳を真の大人、「真成人（しんせいじん）」と名付けていますが、今回ＣｌｕｂＪｉＶＥを通じて、顧客や市場にマーケティング施策の新たな一石を投じた「コミュファ」の今後が楽しみです。