楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.54 BtoBマーケティング①
BtoBとBtoC
今回は「BtoBマーケティング」についてお話しします。一般的に広く語られるマーケティングは「BtoCマーケティング」です。BtoCとは「Business to Customer」の略で、企業(売り手)が一般消費者(顧客=買い手)に向けてモノやサービスを提供するビジネスモデルです。ECサイトの多くはBtoCです。
これに対してBtoBとは「Business to Business」の略で、企業(売り手)が企業(買い手)に向けてモノやサービスを提供するビジネスモデルを指します。例えば「工業用製品・部品・ITシステム・法人向け融資・人材サービス」など、様々な範囲のモノやサービスが存在します。
従来BtoBのビジネスを行う企業は、営業マンが顧客企業を訪問して、まさに「営業は足で稼ぐ」という考えが中心でした。しかし昨今「BtoBマーケティング」に注目が集まるようになった背景には、BtoBビジネスをとりまく環境の変化と、顧客である企業側の意識の変化があります。
BtoBマーケティングが注目される理由
従来のBtoBビジネスは「人的販売」による、次のような顧客へのアプローチが一般的でした。
1.飛び込み営業やテレアポなどでアプローチする
2.ルート営業で定期的な接点を作る
3.紹介や人脈ルートを介して信頼関係を構築する
しかし市場が成熟するにつれて、こうした売り込み型のアプローチでは顧客獲得が難しくなりました。「自社の強みは何で?、どのような顧客企業のニーズを満たすことが出来るのか?」といった、BtoCと同じような「プロダクトアウト」ではなく、「マーケットイン」の考え方を介した提案型の営業スタイルでないと、顧客が獲得出来ない時代になっています。
またインターネットやスマートフォンの普及で、BtoC顧客と同じようにBtoBの担当者も様々な情報収集が可能となりました。こうしたビジネス環境のIT化により、従来のような営業マンが一方的に持参する情報に接するだけでなく、自分が各社の情報を調べて比較検討し、興味関心ある企業のモノやサービスの情報を更に収集するため、能動的に営業マンと商談するという、自社にとってより良いモノやサービスを選択出来ることが可能となったビジネス環境の変化です。
しかしこのビジネス環境の変化は、売り手である企業にとっても人的販売の効率化を図ることに繋がります。つまりインターネット上で見込み客を探し、クロージングで営業が出向くことで、はるかに効率的な営業活動が可能になることです。このようなITの進化がもたらしたビジネス環境の変化により、「BtoBマーケティング」が注目されています。
BtoCマーケティングとBtoBマーケティングの違い
BtoCの場合は、自分自身の意志によって購入が決められます。特に住宅や自動車などを除いて、単価の低い最寄り品が多いため、日々の暮らしの中で習慣化されているケースが多いことが特徴です。
一方のBtoBの場合は、購入するモノやサービスが、自社の収益や生産性の向上、そして経費削減の効果など、企業利益を目的に購入されるため、その購入は合理的且つ計画的に判断されます。
BtoBとBtoCでは、「買うかどうかを決定する」意思決定者も、大きく異なります。BtoCの場合は、購買の意思決定プロセスはシンプルで、多くの場合は顧客本人が購入の意思決定者であり利用者です。そのためターゲットや訴求ポイント、そして購買に至るプロセスは、シンプルに顧客本人に限定することが可能です。一方でBtoBの場合、購買の意思決定までには様々な部署の様々の人々が介在し、複雑な意思決定プロセスをたどります。BtoBの商材は単価も高いため、窓口の担当者が認知して関心を持っても、その場で購入はまずありません。そのため、BtoBマーケティングを成功させるために、先ずはターゲットをどう捉えるかが重要なポイントとなります。
DMUという考え方
モノやサービスの購入意思決定に関与する人々(ターゲット)のことを、DMU(Decision Making Unit)と言います。このDMUに対して、いかに的確なアプローチができるかが「BtoBマーケティング」成功のポイントとなります。
DMUはBtoCでも高単価の商材には存在します。例えば住宅を購入する際、家主である主人が購入に乗り気でも、財布を握っている奥様がその気にならなければ契約には至らない事はよくあります。
BtoBの顧客は複数の部署や、担当者・部長・役員などの役職も関与するため、意思決定に至る構造は複雑です。如何にして広い視野でDMUを見極めるかがポイントになります。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント