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“通販”という言葉の終焉──モールとブランドが描く新しい分業

ネット通販って何?
最近、話をしていてハッとしました。何気なく「ネット通販」という言葉を口にしたとき、相手が一瞬、首を傾げたのです。どうやら、“ネット通販”という言葉自体が、もう世代や職業によっては通じないようです。
そして、こう返されました。「ああ、Amazonとか楽天のことですか?」。

おそらくその方にとって「ネット通販=Amazonや楽天」を指し、自社のオンラインストアで商品を購入する行為は、もはや“通販”ではありません。リアルとネットが溶け合った世界で、“買う”という行為は生活の一部に自然に組み込まれています。

つまり、今や「ネット通販」という言葉は過渡期を象徴しています。モールが“通販”を担い、自社ECは“ブランド体験”を担う。同じ購買行為でも、その役割はまったく異なってきているのです。

AIが生み出す“感性の接点”
まずモールの側から見てみましょう。ZOZO取締役の風間昭男氏は、「プラットフォームの本質は、データをどう解釈し、どんな接点を生み出すかにある」と語ります。

ZOZOには購買履歴や計測データなど、膨大な情報資産があります。これらをファッションに特化して活用することで、ブランドを横断した体験を提供しています。AIは単なるレコメンドではなく、さまざまな情報を掛け合わせ、顧客一人ひとりに寄り添う“秘書”のような存在へと進化しています。

顧客が言葉にできない「なんとなくこういう感じ」を理解し、検索ではなく“対話”で導く。ZOZOは、感性を翻訳する装置としての価値を確立しているのです。

関係を資産化するメルカリの経済圏
一方、メルカリはリユースの枠を超え、“関係を資産化する経済圏”へと進化しています。象徴的なのが「フォロー」機能です。「この人のセンスが好き」「またこの店を覗きたい」という共感を起点に、取引が継続的な関係へと変わっています。

価格競争ではなく、関係性の密度が競争力になる。SNS的な“つながりの熱”を経済に変えることで、メルカリは“個人がメディア化する時代”を体現しています。モールは今、単なる販売チャネルから、感情の動線を設計する場へと進化しているのです。

ブランドの進化──“感性”を仕組みに
一方で、自社ECやブランドの側は、それ自体に潜む個性や感性をどう構造化するかが問われています。yutori代表の片石貴展氏が語る「光と色気」という比喩は、その象徴です。ECは“光”のように一瞬で拡散し、リアル店舗は“色気”のようにじっくりと浸透します。片石氏はこの両輪を「仕組み」でつなぎ、瞬発力と継続力の共存を実現しています。

象徴的なのが「Yリーグ」です。
必要なインフラを自社側で整え、月商700万円を1年以内に達成できなければ撤退するという明確なルールを設けています。感情や惰性ではなく、熱量があるうちに結果を出す体制をつくっているのです。

そして、オンラインで生まれた熱をリアルで“色気”として定着させ、ブランド価値をゼロから立ち上げ、熱狂をリアルの現場で発揮する。

こうしてyutoriは、感性を仕組みで育てる“ブランド体”へと進化しているのです。

「文化を売る」時代の象徴──越境の構造
ブランドが磨いた感性を、どう世界に届けるか。その実践を進めているのが、キレイコム代表の上田直之氏です。彼が取り組む越境ECの本質は、単なる販売ではなく、「日本のブランドが現地の文化に自然に溶け込む構造」をつくることにあります。

その中心にあるのがライブコマースの活用です。
日本では“販売手法”として語られがちですが、海外では文化をローカライズするための表現装置として機能しています。現地の人気ライバーやインフルエンサーが、日本の商品を自分の言葉とテンションで紹介することで、商品の背景や価値観が現地の感情で翻訳されます。
上田氏はこれを「日本のブランド価値を現地の感情で語ってもらうこと」と説明します。ライブコマースは、売るためのツールではなく、異文化間で共鳴を起こすための媒介なのです。

文化を売るとは、商品を輸出することではなく、共感が届く形にローカライズすることなのです。

“通販”の再定義──通信ではなく、共鳴で経済を動かす
こうして見ていくと、「通販」という言葉が、もはや現代の購買行動を表現しきれていないことがわかります。かつて“通信販売”とは、遠く離れた顧客に商品を届けるための仕組みでした。

しかし今や、距離はインフラによって解消され、課題は“どう伝わるか”“どう共感を生むか”へと移っています。モールは「経済を支える装置」として、ブランドは「文化を伝える装置」として、それぞれの役割を果たしながら、新しい購買の分業を形づくっています。

“通販”の本質はもはや「通信」ではありません。
人と人、文化と文化が共鳴し合い、経済を動かす時代に変わりました。これから語るべきは、「ネット通販の未来」ではなく、各々の強みを活かした“共鳴経済のデザイン”そのものです。
今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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