ECモールの活用度をデータで可視化してみた
日本ネット経済新聞((株)日本流通産業新聞)は毎年「ネット通販売上高ランキング」を発表しています。分析を生業とする筆者にとって、このランキングデータは分析ネタとして有用性が高く、毎年発表を楽しみにしています。今回のコラムでは、6月に発表された2025年版のランキングをもとに、ECモールの活用度を考察してみたいと思います。
3大ECモールへの依存度が高いという現実
2025年版のランキングは売上高TOP545のセラーを対象としています。それぞれのセラーがどのECモールを活用しているのかがランキングデータには記載されており、それをもとに以下の通りタイプ分けしてみました。
ECモールの活用タイプ分類
| タイプ | 内容 |
|---|---|
| 3大モール網羅型 | Amazo、楽天、Yahoo!ショッピングすべて活用 |
| 3大モール特定型 | Amazo、楽天、Yahoo!ショッピングいずれか1つ、または2つ活用 |
| 自社サイト特化型 | 自社サイトのみ(3大モールを含むモールは一切活用なし) |
| その他 | 3大モール以外(au PAY M、ZOZO等)を活用 |
このタイプ分類に基づき、TOP545のセラーを集計してみると、以下の円グラフの通りとなりました。最も多いタイプは「3大モール網羅型」で37.2%。次いで「3大モール特定型」が33.2%です。両方を合わせると70.4%、つまり、TOP545のセラーに限った話ではありますが、7割のセラーがAmazon、楽天、Yahoo!ショッピングを利用しているということになります。一方で、自社サイト特化型は26.4%に過ぎません。このことから、良し悪しは別として、日本では3大ECモールへの依存度が高いという現実が理解できます。

出所:日本ネット経済新聞「2025年版ネット通販売上高ランキングTOP545」を基に作成
売上上位のセラーは楽天の利用率が高い
続いて主要ECモールの利用度について計算してみたところ、以下の通りとなりました。楽天は63.1%とAmazonの54.5%よりも高いことがわかりました。Yahoo!ショッピングはやや落ちますが。それでも48.1%と半数近い利用率です。楽天の店舗数は5万店舗台と思われますが、Amazonは過去に中小セラー数が16万と発表しています。とすればAmazonの利用度は楽天より高くなってもよいはずですが、実際にはそうではありません。グラフの利用度はあくまでもTOP545のセラーに限ったものであることがその理由であり、売上上位企業は楽天をよく使っていることがわかります。

出所:日本ネット経済新聞「2025年版ネット通販売上高ランキングTOP545」を基に作成
巻き返しを期待したい自社EC
主要ECモールの利用率は以上の通りですが、いずれにせよ日本のセラーはECモールに依存しているということです。ここで気になるのが自社ECでしょうか。自社サイト特化型が26.4%と3割にも届いておらず、前年の調査から1.6ポイント下落しています。自社ECは自社ECなりのメリットがありますので、なんとか巻き返して欲しいと思っています。

JECCICA客員講師 本谷 知彦
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役