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EC通販競争を勝ち抜くためのデータ活用戦略

EC通販の市場が急速に拡大する一方で、多くの企業が参入して競争は激化しています。数あるオンラインショップやサービスの中からどう選ばれるかは、もはや偶然ではありません。私は、顧客一人ひとりの状況を正確に把握する「One to Oneマーケティング」が鍵を握ると考えています。深い費用対効果の最適化を目指すためには、ただデータを集めるだけでなく、それをすぐに施策へ反映できる仕組みが不可欠です。

市場の拡大と競合激化への対応
EC通販の利便性は、時間や場所を問わず買い物ができる点にあります。スマートフォンやタブレットの普及によって、消費者は通勤中や休憩時間など、ちょっとした合間でもネットで商品を探せるようになりました。その結果、膨大な数のECサイトやブランドが乱立し、どのジャンルでも競合は激しさを増しています。新規参入のハードルが下がった一方で、マーケティング手法は多岐にわたり、企業側は限られた広告費をどう効率よく使うかに頭を悩ませるようになりました。

昔ながらのマスメディア広告では、不特定多数に向けて広く周知することはできますが、費用対効果の面では無駄が多くなりがちです。さらに顧客のニーズが多様化した今、年齢や性別だけで大まかにターゲットを設定しても、実際に購入につながりにくいケースが目立っています。そこで注目を集めているのが、一人ひとりの行動履歴や趣味趣向を分析し、より「自分事」と感じてもらう仕組みを用意することです。私は、「今後のEC通販市場で勝ち残るためには、顧客を深く理解した精密なアプローチが不可欠」だと述べています。

ターゲットセグメントとデータ活用の重要性
顧客がオンラインショッピングで残していくデータは膨大です。商品の閲覧履歴や購買履歴、メルマガの開封率、SNSでの反応など、あらゆる情報が集積されていきます。これらを有効に使う最初のステップがターゲットセグメントの細分化です。たとえば、毎月一定額以上の買い物をする「ヘビーユーザー」、数カ月に一度しか購入しない「ライトユーザー」などに分けるだけでも、アプローチ方法が変わります。クーポンを配るタイミングや、どのような商品をレコメンドするかも、それぞれの顧客層によって最適解が異なるからです。

私は、「データ分析をないがしろにする企業は、実は多くの機会損失を見逃している」と指摘します。どれだけ魅力的な商品をそろえていても、それが必要とされるタイミングで正しく提案できなければ、ビジネスチャンスを逃す可能性が高まります。顧客との接点はECサイトだけでなく、SNSや実店舗、メールマガジンなど多岐にわたるため、そこから得られる情報を一元管理し、ターゲットセグメントを柔軟に見直すことが、継続的な売上向上には欠かせません。

One to Oneマーケティングを支えるシステムの役割
One to Oneマーケティングを実行するには、大量のデータを蓄積するだけでは不十分です。顧客の行動をリアルタイムで捕捉し、それをすぐに施策へ落とし込める運用体制とシステムが必要になります。私は、「こうした仕組みを活用しないままでは、より深い費用対効果の最適化は難しい」とのことです。具体例としては、レコメンドエンジンや自動メール配信ツールなどが挙げられます。過去の購買履歴や閲覧行動を解析し、顧客の興味に合った情報をベストなタイミングで提示できれば、開封率やクリック率を大きく伸ばすことも期待できます。

このように個別化を進めることで、既存顧客からのリピート率を高めたり、新規顧客にもスムーズにクロスセルを促す道が開けます。また、顧客満足度が向上すれば、SNSなどを通じた好意的な口コミにつながりやすい点も見逃せません。反対に、データをただ集めるだけで施策に活かせない企業は、余計な広告費を垂れ流す結果になりかねません。市場の競争が一段と激しくなるにつれ、こうしたシステムの導入・活用スピードが成否を左右する場面は今後さらに増えるでしょう。

オムニチャネル連携と継続的なPDCA
EC通販が普及したとはいえ、実店舗を併用する企業やブランドが多数を占める現状もあります。顧客はオンラインとオフラインを行き来しながら情報収集や購買を行うため、店舗での会員登録や購入履歴をECサイトと連動させるオムニチャネル戦略が重要です。たとえば、実店舗で試着した商品の情報をオンラインに反映し、後日自宅から購入できる仕組みを整えておけば、商品検討中の顧客をスムーズにフォローできます。こうした取り組みを効率よく実行するうえでも、データの統合管理と運用の自動化は欠かせません。

しかし、システムの導入やデータ分析の精度向上は、一朝一夕で完成するものではありません。日々蓄積される顧客の反応をウォッチし、より良い施策を試行錯誤しては検証するPDCAサイクルを回すことで、少しずつ精度を高めるのが現実的なアプローチです。私は、「最初から完璧を目指すより、早期に導入・運用を開始して改善を続ける企業が勝ちやすい」と強調しています。実際に、短期間でも目に見える成果を上げた事例は数多く報告されており、市場が伸びている今こそ導入のチャンスといえます。

最後に、これまで述べてきたOne to Oneマーケティングやターゲットセグメントの細分化は、1st party cookieを活用することでさらに高い成果を狙いやすくなります。自社サイトで取得できる信頼性の高いデータをもとに、顧客の行動パターンを正確に把握し、その情報をいち早く施策に落とし込めるからです。限られた時間とリソースで日々変化するEC通販市場に対応するためには、やはりシステムとAIのテクノロジーを駆使した戦略を取り入れることが重要だと感じています。こうした取り組みを継続しながら精度を高めていくことこそが、長期的に勝ち続けるための鍵になるでしょう。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 和田 聖翔

株式会社FID 代表取締役
1984年富山県生まれ。2011年株式会社FIDを設立。2013年ショッピングカートASPサービス「侍カート」の提供開始。2016年フルフィルメントサービスを開始。EC事業者の総合支援企業として活動中。


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