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ECは物売りではない?企業ブランディングとしての重要性

さまざまある機能の中で
昨今思うことは、ECは「物売りではない」ということです。ECは企業ブランディングの一環で、それは顧客接点そのものだからです。だから、売上重視でモールを展開しつつも、価格の差別化ではない視点でアプローチが必要。自社ECもあわせて、徹底させるなどしていくことが、20年先を見ると、必要な視点です。

少し話がそれますが、先日、僕はヤプリという会社の「アップデート」というイベントに参加しました。彼らはアプリのプラットフォームを提供していますが、色々な機能が実装され、途方に暮れる感覚もなくはありませんでした。

しかし、様々な需要に応えるべく、プラットフォーム側も提供できる機能を多種多様に応えられる様にしていくのはやむを得ない。逆に、企業側が「何を省いて、何を取り入れるか」の意識が大事になってきているのです。

自分たちの企業価値はどこにあるのか。そこから逆算して、顧客にとって必要なサービスを提供することが今以上に大事になります。

ハーゲンダッツの顧客接点を最大化させる戦略
アプリに話を戻すと「ハーゲンダッツ」のアプリの着眼点が秀逸でした。昨今、ECが台頭して、難しい立場に置かれているのは従来、影響力を持っていたメーカーの存在です。

消費者との距離が遠いからです。商品を生産して問屋を経由し、小売店に渡って、ようやく消費者にたどり着きます。D2Cの動きが活性化する中で、彼らは、ダイレクトにお客様につながれないので、マーケティングでは差をつけられる一方です。

しかし、「ハーゲンダッツ」のアプリはそこに光明をもたらす発想でした。「ハーゲンダッツ」のアプリ上で、スマホのカメラを連動させて、アイスのバーコードを読み取れる様にしたのです。些細なことではありますが、数ある機能の中で、それを選んだことに意味があります。

ハーゲンダッツの特徴は、様々な種類のアイスを楽しめること。コレクションしたくなるという心理を触発するために、アプリにそれを実装しました。バーコードを読み取りさえすれば、その写真がアイコンとなったスタンプが貯まります。

集めたい心理が行動へと駆り立て、販売促進になると同時に、問屋も小売店も邪魔しません。また、それを貯めることで消費者同士に共感が生まれ、つながりが形成されることになります。大きいのは、メーカー起点でコミュニティが形成されることです。

個性を明確にファンを巻き込む
この流れで思い浮かべたのは「よなよなエール」のヤッホーブルーイングの戦略です。彼らは、クラフトビールを作り、売っている企業でありながら、売ること以上に、顧客接点を大事にして、イベントを重視します。

つまり、ECのように顧客接点があるところは、それを活かした自らのブランディングが、これからのデジタル時代では大事です。それは、あらゆる企業に当てはまります。以前この会報誌でも取り上げた「蝶結び」も「ワアク」も「卒塔婆屋さん」もそうでした。

「蝶結び」というお店でいえば、店主がいわゆるデパ地下で働いていて、売っていたのは進物用のくだもの。彼らはECなのにチャネルトークの対話型のチャットを取り入れることで、リアルで培った知見が活かされました。ライトな会話は、百貨店での対話に近い。

例えば、贈る相手に家族がいるかいないかを聞くといいます。高級メロンを一個、贈ったところで喜ばれるのは相手に家族がいない場合。家族がいれば、取り分けしやすいように、複数の果物を混ぜて提案するわけで、ここでお客様からの信頼を得ました。

ECは顧客接点で個性が出やすい
「ワアク」もそうで、家具のカスタマイズ販売という部分で、お客様と一緒に作り上げていくイメージを同じくチャットで作り出しました。そして、そこで得たお客様からの信用をベースに、転勤などにも対応できる様に、その家具でリセールを行えるようにしたのです。これで、長きにわたる関係性を築こうとしています。

「卒塔婆やさん」もそう。彼らの相手はお寺。卒塔婆を元々1000本単位でお寺が発注するのが常識。それゆえ納期は2ヶ月後、当然、請求書でのやり取りで、まとまった金額を用意するなど手間がかかります。

しかし、彼らはそれを20本単位で発注を可能にして、自ら少量で作り、翌日納品。さらには、クレカを使えば、届く時には決済すら済んでいます。彼らの場合、その信用をもとにお寺のメディアを作ったといいます。顧客接点が最大化されています。

極論、一つ一つの施策は目新しくないかもしれません。でも、数ある施策の中で自分たちの個性を踏まえて、何をチョイスし、どこで自社としての強みを発揮したのかで、明暗を分けています。ECは長きにわたる事業運営に繋がるヒントをくれるので、その意味で活かさぬ手はありません。物売りの手段でECを考えるのはあまりに勿体無いのです。

今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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