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コンテンツマーケティング最前線 2017

先日、某名前を言ったら誰でも知っている大手上場企業に呼ばれて、訪問してきました。
先方の担当者様曰く、

●来年の春までにオウンドメディアを立ち上げたい
●ついては、それまでに450本のウェブコラムを作成したい
●1本1万円で書いてほしい
●キーワードについては、コンサルティング会社から指示が出ているので、その指示に従ってね
●元ネタは、ウェブまたは書籍から探してきてね

・・・だそうです。
ガ・ガーーーーン!! いまだにそんな手法が通用すると信じている企業があるなんて!
てか、信じさせているコンサルティング会社があるなんて!!

「あのね、そんなふうにして作った記事は、誰の役にも立たないゴミ記事だし、Googleにも上位表示されませんよ」

と説教したら、担当のお姉さん、

「そうですよね、私も、なんか変だと感じていました。でも・・・」

と、涙目になっていました。
たしかに、担当のお姉さんに、罪はありません。
昨年は、このような取り組み(?)が大手企業を中心にあちこちで実施されていましたので、そのときにコンサルティング会社が作成した「コンテンツマーケティングに関するご提案書」がいまだに生きているのでしょう。
しかし、コンテンツマーケティングの世界は、昨年末に起こった、いわゆる「WELQ(ウェルク)事件」の前と後では大きく変わっているのです。
ここで少し、経緯を振り返っておきましょう。

■2012年9月 Googleが「良質なサイトを作るためのアドバイス」を発表
https://webmaster-ja.googleblog.com/2012/09/more-guidance-on-building-high-quality.html
5年前のちょうどいまごろ、Googleは「Googleが考える品質の高い記事とは、どんな記事なのか」を明らかにしました。
例)
✔ 専門家またはトピックについて熟知している人物が書いたものである
✔ 独自のコンテンツや情報、レポート、研究、分析などを提供している
✔ あたりまえのことだけでなく、洞察に富んだ分析や興味深い情報を含んでいる

つまり、簡単に言うと「どこよりも検索者に役立つ情報発信をしているところを上位に表示するから、いい記事つくってね」と、Googleは5年前から言っているわけです。

■2017年12月 いわゆる「WELQ(ウェルク)事件」発生
http://dena.com/jp/press/2016/12/05/1/
Googleの「良質なサイトを作るためのアドバイス」を悪用したサイトの代表になってしまったのが、DeNA(ディー・エヌ・エー)社が運営していた医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」です。
Googleのロボットは、残念ながら、「良質な記事であるかどうか」「独自のコンテンツであるかどうか」を、一定の計算式でしか判断することができません。
そこで、「WELQ(ウェルク)」をはじめとするいくつかの情報サイトは、

✔ 8,000文字以上という圧倒的な文字数で、「これだけの情報が提供できるのは、専門家またはトピックについて熟知している人物が書いたものだからだ」とGoogleに誤認させた
✔ 複数のサイトの情報を引用し、元の文章がわからないくらい手を加えることによって「これは独自のコンテンツである」とGoogleに誤認させた

これによって、「WELQ(ウェルク)」をはじめとするいくつかの情報サイトは、様々なキーワードでGoogleの上位を独占することになりました。
しかし、その実態は、専門家でもなんでもないクラウドワーカーによるパクリ記事の量産でした。そして、作成された記事の中に、明らかに誤った内容の医療関連記事が多数発見されたことをきっかけに、DeNA(ディー・エヌ・エー)社は、全キュレーションメディア記事非公開という事態に追い込まれたのです。

■2017年2月 Googleが「日本語検索の品質向上にむけて」を発表
https://webmaster-ja.googleblog.com/2017/02/for-better-japanese-search-quality.html
「WELQ(ウェルク)事件」は、悪質な手法の前にGoogleのロジックが敗れてしまったという意味で、Googleにとっては非常に屈辱的な出来事であったと予想します。
「WELQ(ウェルク)事件」から3か月後、Googleは、
「ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果のより上位に自ページを表示させることに主眼を置く、品質の低いサイトの順位が下がり」
「オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになる」
というアップデートが実施されたことを発表しました。
具体的な内容は公表されていませんが、この発表によりDeNA社がやってきたような悪質な手口は、全く通用しなくなったことが明確になりました。

・・・はずなのですが、「WELQ(ウェルク)事件 以前」のやり方をいまだに妄信し、ゴミ記事だらけのオウンドメディアに莫大な投資をしようとしている企業がまだあるということに、本当に驚いています。

■コンテンツマーケティング最前線 2017 (1)
ウェブや書籍・・・つまり、既出の情報を編集して記事を量産するという時代は終わりました。
社内文書の再編集・ユーザーインタビュー・社内の各技術者へのインタビューなど、「うちにしか出せない情報」「サイト訪問者にとって真に役立つ情報」を発信していこうという方向に変わってきています。
また、時を同じくしてスマートフォンでの読みやすさについても、真剣に考える企業が増えてきています。
スマートフォンで読みやすい文字量(8,000文字なんて、パソコンの画面で読んでもウンザリです!)、読みやすいレイアウトが優先されるようになってきました。

■コンテンツマーケティング最前線 2017 (2)
もうひとつ、急激に変わってきたのが、「キーワード」に関する考え方です。
いままでは、「キーワードツール」などを用いて、月間検索数の多いキーワードを攻めていくという考え方が主流でした。
つまり、顕在化している市場を奪い合うのが、コンテンツマーケティングだったのです。
しかし、「WELQ(ウェルク)事件」をきっかけに、「Googleの1ページ目の奪い合い」に投資することに疑問を感じる企業が増えてきています。
そして、顕在市場ではなく潜在市場の掘り起こしのためにコンテンツマーケティングを活用するという動きが、感度の高い企業の間で拡がってきています。こちらについては、また機会がありましたら、詳しくご紹介したいと思います。

以上、参考になれば幸いです。


客員講師 江島 民子
株式会社グリーゼ代表
コンテンツマーケティングの専門会社株式会社グリーゼの代表、。日本オンラインショッピング大賞審査員、SOHOホームページ大賞審査員などを歴任。日本ネット経済新聞・ECzineなどに連載多数。

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