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「伝える」と「伝わる」のあいだにVol.27 どんどん乗ってけ!ムーブメント

★九龍城砦をご存知か
「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」という香港映画がいま(執筆時3月下旬)大変な人気を博している。日本公開から2ヶ月以上経った今もその勢いは拡大中だ。私もどハマりして現時点ですでに9回観た。
近年の香港映画は日本での認知度が低い。「トワイライト・ウォリアーズ」も、香港映画歴代1位の観客動員数という実績を持ちながら日本公式サイトすらなく(配給会社HP内の紹介のみ)、当初は上映館も少なかった。

私が最初に認識したのはTwitterことX。信頼する映画好きアカウントが口々に絶賛し始めて気になり、すぐ観に行った。血がたぎるような興奮を覚えて、ブルース・リー作品を初めて観た時みたいにテンションが上がった。

★観た人たちの盛り上げ力
細部まで再現された九龍城砦セット、香港映画らしいケレン味溢れるアクション、男たちの絆など作品自体の魅力も満載だが、この盛り上がりを作ったのはひとえに「観た人の熱量」だ。
観終わった後に再度SNSで感想を漁り考察に唸り、「もう一度確認したい」と2度3度映画館に足を運ぶ頃にはすっかり作品の虜。キャラクターが個性豊かなこともあり、ファンアートがどんどんSNSに上がる。昔からの香港映画好きも中の人(俳優)の情報を上げる。気になった人たちがまた新たな観客になる…。

積極的なプロモーションをしていなかった配給会社もこの勢いに気づき、上映期間は延長され上映館は増え、映画館の方でも大きいスクリーンで上映し始める。ついには日本公開から1ヶ月後、監督と俳優たちが来日して舞台挨拶をするに至った。公開前に予定されたプロモーション以外で急に来日するのは大変稀なことだそう。

★波及効果は「メシと本」に
観客の熱量がムーブメントを生む例は他にもあるが、今回特徴的なのが作品の影響で「周縁も盛り上がっている」ことだ。

この映画を観終わったあと誰もが食べたくなるのが劇中に登場する「叉焼飯」。分厚い叉焼をご飯の上にのせたシンプルな料理は家庭の味で、香港料理店でもわざわざ前面に押し出すところは少ない。ところが映画とコラボした銀座のお店にお客が列をなし、人々が「他に食べられるところはないか」と探し出すと、他の香港料理店でも「叉焼飯始めました!」と続々アピールし始めた。そりゃそうだ、この機会に波に乗らなくてどうする!私たちも色々な叉焼飯を楽しめるお店が増えれば嬉しい限りだ。

九龍城砦関連書籍も売れている。「大図解 九龍城」と「九龍城探訪」はどちらも昔からある良書だが大型で価格が高い。しかしこれが大人気!ヴィレッジ・ヴァンガードや紀伊國屋書店などでは特設コーナーを設けている。
面白いのは神保町にある中国関係専門書店「東方書店」さん。こちらも香港関連書籍は本家なので二冊をSNSでアピール。でもそれだけでは終わらない。この映画を愛するお店の方は、九龍城砦の人々の写真を展示し、映画に出てくる格子窓やトタンのひさし(手作り!)を店内に飾ったのだ。

その「分かってる」感と「ご新規Welcome!」な空気は、映画のファンにとって「この書店で買う理由」になる。私も東方書店さんで二冊を購入。偶然居合わせたお客さんとお店の方と共に映画の話で盛り上がった。
こうした工夫やアピールがなければ、専門書店ゆえほとんどの人が敷居をまたぐ機会はなかったかもしれない。だからこういう(愛のこもった)商魂はとても大事だと思った。

★「あのハンカチ」を売る
それで思い出したのが、EC企業に勤めていた頃のこと。
斎藤佑樹投手が「ハンカチ王子」と呼ばれ甲子園で大人気だった夏、「彼のハンカチはどこの?」と世間が気にし始めた。我が社のバイヤーはいち早くブランドを突き止め、数少ない在庫を確保。ハンカチ王子愛用の品として緊急販売した(もちろん本物です)。
旅先にいた私のところに「何が何でも◯時に販売開始したいから商品説明を書いて!惹きつけるやつを!」と連絡が入った。結局その日の観光をキャンセルし、ホテルの部屋で泣く泣くテキストを書くはめに。結果、ハンカチはまたたく間に完売したのであった。
単価は安く、大規模な売上になったわけじゃない。それでも顧客に「いいタイミングで面白いことを仕掛けるサイト」と認識され楽しんでもらえたのは大きい。

★日常や趣味の中に種はある
こういうムーブメントは、目の前の仕事にまい進しているだけではキャッチアップできない。日頃から強い好奇心を持って世間を眺める必要がある。大事なのは、ビジネス目線というより、面白そうなものを見つける眼力、それを活かすための発想力と遊び心、コンテンツに対する愛だ。
もうひとつ大事なのはスピード。こういうのは「今でしょ!」というタイミングが必ずある。社内調整に時間をとられると機を逃してしまうので、やると決めたらすぐやる機動力とノリの良さこそモノを言う。

仕事から離れた日常や趣味の中に、意外と商機は眠っているもの。ミーハーでいること、街を歩くこと、趣味に没頭することも時には大事ですよー。

JECCICA客員講師

コピーライター 近藤あゆみ

Lamp 代表
博報堂コピーライターから(株)ネットプライス・クリエイティブディレクターを経てフリーに。企業のMMVやネーミング、サイトディレクションなど手がける。恋愛コラムやブログも人気を博す。


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