買い物を変える!AIショッピングアシスタントの未来
こんにちは。今年もよろしくお願いします。
年末年始には、クリスマスやお歳暮、大掃除といったイベントが多く、ふるさと納税の駆け込み購入も重なり、ECサイトを利用する機会が増えた方も多いのではないでしょうか。今回のテーマは、Amazonが提供するAIショッピングアシスタント「Rufus(ルーファス)」を中心に、AIが買い物をどう変えているかについてお話しします。
ショッピングアシスタント「Rufus」って何?
「Rufus」は、Amazonが2024年11月に日本でベータ版を公開したAIショッピングアシスタントです。このサービスは、ただの検索機能を超えて、特定のシーンや目的に合わせておすすめの商品を提案してくれます。
私も「Rufus」を使ってみました。たとえば、「旅行に便利なポータブルスチーマー」や「低アレルゲンのフレグランス」など、ニッチなリクエストにも対応してくれるので、意外な発見がありました。対話形式なので難しい操作は不要で、質問に答えるだけで理想の商品を提案してもらえます。また、商品を見つけるだけでなく、レビューや比較情報も同時に提供されるため、購入決定をスムーズに進めることができました。
AIがホリデーシーズンの売上に与えた影響
2024年のホリデーシーズンでは、AIショッピングアシスタントがEC市場に大きな影響を与えました。特にブラックフライデーやクリスマスのような繁忙期に、売上増加の一因となったことがデータで示されています。
●オンライン売上:前年同期の2,720億ドルから2,820億ドルに増加(約4%成長)。
●AIチャットボット利用率:42%増加し、検索や購入を効率化。
●スマートフォン注文:全体の79%を占め、モバイルショッピングの利便性向上に寄与。
これらの成果から、AIが消費者体験を改善し、企業の売上増加を後押ししていることがわかります【※】。
【※参照元】https://www.reuters.com/business/retail-consumer/ai-influenced-shopping-boosts-online-holiday-sales-salesforce-data-shows-2025-01-06/
さらに、AIショッピングアシスタントがもたらす効果は、ただ売上を増加させるだけではありません。消費者がストレスを感じずに欲しい商品を見つけられる環境を整え、ECサイトの利用頻度を向上させることにも貢献しています。
AIで買い物体験がどう変わるの?
AIの進化によって、買い物体験は大きく変わりつつあります。かつてECサイトの魅力は、膨大な商品から選べる「選択肢の多さ」にありました。しかし現在では、選択肢が多すぎることで消費者が迷ってしまう「選択肢過多」という問題も浮き彫りになっています。
ここでAIショッピングアシスタントが活躍します。このツールは、膨大な商品から効率的に最適な選択肢を絞り込み、ユーザーが求める商品にたどり着くまでの時間を短縮します。実際、消費者の行動をシーケンス分析してみると、ECサイト内で見つからない商品をGoogle検索で探し直し、再び同じサイトに戻るという行動をとることが少なくありません。このような離脱を防ぐため、AIショッピングアシスタントはサイト内でスムーズに購入まで導く役割を担います。
さらに、AIショッピングアシスタントは、ユーザーの行動パターンを学習することで、より精度の高い提案を行います。たとえば、過去の購入履歴や閲覧履歴を基に、次に必要とされる商品を予測し、先回りして提案する仕組みが搭載されています。
AIショッピングアシスタントが普及する理由
1.商品数の増加と選択の難しさ
EC市場の成長に伴い、商品の種類は膨大になり、消費者が最適な選択をするのが難しくなっています。AIがその解決策として注目されています。
2.技術の進歩
AIや機械学習、自然言語処理(NLP)の進化により、ユーザーとのインタラクションがより自然で効果的になっています。
3.消費者の期待値の向上
スピーディで個別化された買い物体験が求められる中、AIショッピングアシスタントはその期待に応える重要なツールとなっています。
また、こうした理由だけでなく、AIショッピングアシスタントは従来のECサイトでは対応しきれなかった消費者の細かい要望にも応える点が評価されています。特にニッチな商品を探している場合や、自分に最適な選択肢がわからない場合にこそ、その価値が発揮されます。
AIが作る心地よい買い物体験
最近、「カテゴリーエントリーポイント(CPEs)」という言葉が使われるようになりました。これは、消費者が買い物を始めるきっかけとなるポイントのことです。消費者はECサイトにアクセスする目的や背景が多様化しており、それに合わせた体験を提供する必要があります。
また、レビューやランキングを基に商品を選ぶ消費者が増えていますが、それだけでは偶然の出会い(セレンディピティ)が減少し、画一的な体験に陥りがちです。AIショッピングアシスタントは、このような状況を改善し、多様な選択肢を消費者に提供する役割を果たします。たとえば、レビュー件数が少ない商品でも、ユーザーに合ったおすすめとして提案することで、新たな発見を促します。
さらに、AIショッピングアシスタントは、消費者にとって「自分専用のアドバイザー」としての役割を果たします。たとえば、忙しい生活の中で買い物にかける時間を短縮し、効率的に必要なものを揃えることができます。このような体験は、買い物のストレスを軽減し、ECサイトの利用価値をさらに高めます。
AIショッピングアシスタントの役割
●効率的な商品提案
AIは自然言語処理を活用し、条件に合った商品を素早く提案します。
●個別化された提案
消費者の過去の閲覧履歴や購入履歴を分析し、その人に最適な商品を提案します。
●レビュー解析
AIは膨大なレビューを解析し、信頼性の高い商品を選ぶ手助けをします。
これらの役割を果たすことで、AIショッピングアシスタントは単なるツールを超えた「パートナー」としての位置づけを確立しています。
AIが変えるECの未来
AIショッピングアシスタントの普及には、いくつかの課題もあります。
●プライバシーとデータセキュリティ
消費者データを適切に管理し、プライバシーを守ることが求められます。
●アルゴリズムの公平性
提案内容に偏りが出ないよう、AIのアルゴリズムを改善する必要があります。
●返品問題
提案精度を向上させることで返品率を抑えつつ、柔軟な返品ポリシーを整えることも重要です。
AIショッピングアシスタントは、消費者体験の向上と企業の売上増加に欠かせない存在です。これからも技術の進化を活かして課題を克服しながら、より良い買い物体験を提供していくでしょう。

JECCICA客員講師 村石怜菜
株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。
日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。