「ECを立ち上げたい」から始まる相談
補助金で、ECサイトを作りたいという相談が増えています。「ECを作り、集客のための広告とSNSもやりたい。」でも、どんなターゲットに売るのか、どういう戦略で展開していくのか曖昧なまま相談が始まるケースが多いのです。
なぜ、まず「作る」ところから入ってしまうのでしょうか。
施策は買うのに、戦略は買わない
ターゲティングなどの戦略が大事とは皆さんはわかっていると思いますが、EC構築や広告運用といった「施策」にはお金を払うのに、なぜ「戦略」を買うという発想にはならないのでしょうか。
EC施策を氷山にたとえてみます。水面の上に見えているのは、EC構築・広告運用・SNS運用 SEO・モール出店といった「施策」です。誰でも発注できますし、成果物も目に見えます。だから話が早い。

水面の下にあって見えないのは、そもそも誰が困っているのか、誰に売るのか、なぜウチから買うのか、いくらで売れば儲かるのか、誰がそれを回し続けるのか──という「土台」です。この土台の形が、水面上の施策のあり方を決めます。逆はありません。
多くの企業は、売上が伸びない原因を「SEOが弱い」「広告費が足りない」「もっと発信しないと」と、水面上の施策の不足に求めます。土台が欠けていることは結果からは直接見えないため、「これは戦略の問題だ」と気づく機会そのものが生まれにくいのではないでしょうか。
戦略を買っている企業もある
もちろん、戦略をきちんと買っている企業もあります。
たとえばうまくいってる大手企業では、外部のコンサルタントが入り、市場やターゲットの分析をしっかり行ったうえで事業戦略を設計します。そして、施策の実行はそれぞれの得意分野を持つ企業に任せて回していく。戦略と施策が分離しており、それぞれにプロが入る体制ができています。
また、他にも営業現場で培った顧客理解を持つ企業や、ECでの失敗から『土台固め』の重要性を学んだ企業があります。たとえ戦略が形式化されていなくても、商売の根幹となる戦略基盤をしっかりと備えています。
では、なぜ多くの企業ではそうならないのでしょうか。
なぜ「戦略」が買われないのか
「戦略を買う」という発想が浸透しない背景には、5つの構造的な理由があると思います。
- プロダクトアウトの視点:「良いものを作れば売れる」という製品へのこだわりが強く、顧客起点での戦略設計よりも手段の構築が先行しがち。結果として、市場の課題と施策が噛み合わないまま進んでしまう。
- 成果の不可視化:EC構築などは「形」として残りますが、戦略はレポートや仮説に留まるため、投資対効果の実感が持ちにくい。
- 責任の所在:施策の失敗は発注先の責任にできますが、戦略の失敗は経営判断そのものの誤りを意味してしまうため、リスク回避が働く。
- 適切な選択肢の不足:大手向けのコンサルは高額すぎ、小規模な戦略設計の提供者は少ないため、そもそも比較検討の対象に入らない。
- 即効性への期待:補助金や季節要因で時間的余裕がないなか、今すぐ数字が動きそうな施策のほうが「進んでいる感」を得やすいため、優先されがち。
戦略を買えないなら、まず「商売の基本5マス」を埋めてみる
戦略を買うことは大事です。しかしそれが難しいのであれば、もっとシンプルに考えてみてはどうでしょうか。「戦略」というと難しく感じますが、実際に問われているのは商売の基本にすぎません。
| 戦略用語 | 商売の言葉 | 何をしたらいいか |
|---|---|---|
| 市場調査 | そもそも誰が困っているのか | 今のお客さん(法人・個人)に「なぜウチで買ったか」を10件聞く。買わなかった見込み顧客の声も拾う |
| ターゲティング | 誰に売るのか | 一番儲かる・一番リピートする顧客層を1つ決め、他は一旦捨てる |
| ポジショニング | なぜウチから買うのか(よそじゃダメな理由) | 競合3社と並べて、値段以外で勝てる理由を1行で書き出す |
| 事業計画 | いくらで売れば儲かるのか | 手段(EC・広告・SEO)にかけている費用を洗い出し、損益分岐の売上・件数を逆算する |
| 組織体制 | 誰がそれを回し続けるのか | 施策の実行だけでなく、上記4つを定期的に見直す担当・タイミングを決める |
この5マスが埋まっていれば、取るべき施策の方向性がクリアになるでしょう。
まとめ
この5マスを埋める前にECの構築や広告運用を発注してしまうのは、順番が逆です。
実際に、ECサイトを立ち上げたものの、構築費と運用費がかさみ、売上がまったく追いつかない企業は少なくありません。手段そのものが悪いのではなく、土台が無いまま手段だけが先行してしまうとうまくいきません。
これからECを立ち上げようとしている方、あるいはすでに立ち上げたけれどうまくいっていないという方は、まずこの5マスを埋められるかどうか、試してみてはいかがでしょうか。